解雇につながるパフォーマンス・レビューとは?


労働・雇用法弁護士 勝田順子の
職場にまつわる法律の話

第13回 解雇につながるパフォーマンス・レビューとは

4月に入り新年度が始まり、多くの日系企業ではパフォーマンス・レビューを実施します。これを行う目的には、悪いパフォーマンスについて指摘をする、改善策を考える、または後に解雇する時の議事録の役割も含まれており、悪いパフォーマンスを理由に解雇するためのファースト・ステップとも考えられます。法律上は、パフォーマンス・レビューの制度に関して、評価方法や実施頻度について特別に定められた法令はありません。しかしながら、パフォーマンスの悪さを理由にした解雇では、不当解雇の一般条項の適用を受けるため、後に不当解雇の要素になると判断されないパフォーマンス・レビューを実施することが大切で、それにはいくつかのポイントがあるのでご紹介します。

まず、フェアワーク法第385条では不当解雇とは、その解雇が過酷(harsh)、不条理(unjust)または不当(unreasonable)であるものと定めています。この「harsh、unjust、またはunreasonable」の基準をパフォーマンス・レビューに当てはめると、主に次のような要素が裁判において検証されます。

■解雇された従業員の能力や言動に関して解雇をする正当な理由があるか

パフォーマンスを理由に解雇する場合、解雇する従業員のパフォーマンスが雇用主の定める妥当な水準に達していないことを示す必要があります。正当な理由として認められない例には、売上目標を達成しなかった理由が達成し得ない不当な売上目標設定にあった、人間関係の不和などが挙げられます。

■解雇された従業員に対してパフォーマンス(能力や行動)の評価に対応する機会を与えたか

評価に対応する機会とは、パフォーマンスが基準を満たしていないという評価に対して、従業員が意見を述べたり釈明したりする機会(話し合いの場)や、パフォーマンスを向上させる機会(期間の設定・トレーニングの実施)などがあります。

解雇が従業員のパフォーマンスに関わるものである場合、従業員の能力が要求されるレベルに達していないことを、パフォーマンスが向上しなければ解雇になるという事態の深刻さとともに解雇前に伝えていたか、という点も重要な要素となります。

以上の観点から、目標設定やパフォーマンス・レビューを行う上での注意点をまとめます。

• 職務規定書やその他の文書(Emailを含む)で職務や責任を明確にすること。

• KPIや売上目標など達成すべき数値(または目標)を明確にし、かつ妥当な数値で設定すること。

• 会社が従業員に求めるパフォーマンスの基準や行動規範、業界のルールなどがあればそれらを明確にすること。例えば、人間関係の不和なども“協調性”という評価基準を設けることで査定・評価することが可能になります。

• パフォーマンス・レビューの社内規定がある場合は、規定通りに手続きをすること。

• パフォーマンス・レビューの結果について従業員が釈明、または意見を述べる機会を設けること。

• 指摘されたパフォーマンスが改善されたかどうかフォローアップを行うこと。

• 基準に達していないパフォーマンスを放置しないこと。



PROFILE

2004年に来豪。シドニー法科大学院卒(Graduate Diploma in International Law)。09年にNSW州弁護士登録。専門分野は労働・雇用法。Katsuda Synergy Lawyers(カツダ・シナジー・ロイヤーズ/www.katsuda.com.au)の代表弁護士。 複数の弁護士事務所と協業体制をとり、企業法務全般、訴訟、家族法や移民法(ビザ)をはじめとする幅広い分野において専門性の高いリーガル・アドバイスを提供している。連絡先: contact@katsuda.com.au

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