カジュアル従業員の勤務形態の特徴と留意点


労働・雇用法弁護士 勝田順子の
職場にまつわる法律の話

第16回 カジュアル従業員の勤務形態の特徴と留意点

カジュアル従業員は、雇用主が従業員に対して時間にフレキシブルな勤務を要求できること、解雇するのに通知期間は必要ないこと、有給休暇を付与する必要がないことなどから、コスト削減になり不当解雇のリスクを負わない雇用形態として豪州の労働市場でも重宝されています。5人に1人の被雇用者はカジュアル労働者との統計もあります。一方で、カジュアル従業員にも付与される権利や、一定の条件を満たすカジュアル従業員にだけ付与される権利についてはあまり知られていません。今回は、カジュアル従業員の雇用の特徴をおさらいし、留意点についてご説明します。

カジュアル従業員とは、その勤務時間数や雇用の継続に関して雇用主側のコミットメントが必要ない雇用と言えます。フルタイム・パートタイム(以下、“正規雇用”)の雇用契約では、勤務時間数とそれに伴う年俸の支払いが決められていますが、カジュアル従業員の勤務時間数はいつでも変更できるようになっており、給与も時給で提示され、実働時間数から算出された給与が支払われます。また、各種有給休暇も付与されず、解雇の際でも最低通知期間や整理解雇手当の適用もありません。そのように勤務時間数や雇用が守られていない代償として、カジュアル従業員には正規雇用の最低労働賃金に加えて、25%のカジュアル割増賃金を支払う必要があります。

■留意点①見落とされがちな権利

正規雇用で認められている多くの諸権利を持たないカジュアル従業員ですが、以下の権利は与えられています。

・2日間の看護休暇や忌引きを無給で取得できる

・ほとんどの州で長期勤続有給休暇が取得できる。NSW州では、10年勤続で2カ月分(過去12カ月か5年の平均勤務時間数で支払い金額を算出)、5年勤続後に雇用主が解雇した場合は2カ月に比例する部分の有給休暇の付与

・スーパーアニュエーション(年金積立金)の支払い

■留意点②長期勤務カジュアル従業員

フェアワーク法第12条で「安定的に規則正しい勤務時間で12カ月以上勤務した従業員、もしくはそのような勤務形態での勤務を従業員に期待させる状況がある場合」は、長期勤続カジュアル従業員であると定められています。長期勤続カジュアル従業員には、通常は正規雇用にしか付与されない以下のような権利が与えられます。

・1年間の無休育児休暇を取得する権利

・フレキシブルな勤務形態を要求する権利

・不当解雇の対象となり、申し立てを行う権利(注)

・アワードの適用を受ける従業員の場合、アワードの中には、カジュアルから正規雇用になることを要求する権利(ホスピタリティー業界アワードなど)

(注)解雇の際には解雇事由を通知する必要があり、パフォーマンスを理由に解雇する場合にはパフォーマンスを改善する機会を与えるなど所定の手順を踏むことが求められます。

カジュアル従業員を上手に活用すれば、雇用主のニーズに合わせて余計なコストやリスクを負わずに労働力をフレキシブルに調整することが可能です。カジュアル従業員、もしくは長期勤務カジュアル従業員に限りませんが、各雇用形態の持つ特徴や権利を把握することは、組織マネジメントにおいてベストな人事の構築につながるでしょう。



PROFILE

2004年に来豪。シドニー法科大学院卒(Graduate Diplomain International Law)。09年にNSW州弁護士登録。専門分野は労働・雇用法。Katsuda Synergy Lawyers(カツダ・シナジー・ロイヤーズ/www.katsuda.com.au)の代表弁護士。McCabes Lawyers(www.mccabes.com.au)をはじめとする複数の弁護士事務所と協働体制をとり、幅広い分野において専門性の高いリーガル・アドバイスを提供している。連絡先: contact@katsuda.com.au

新着記事

新着記事をもっと見る

NICHIGO CHANNEL

新着イベント情報

新着イベントをもっと見る