職場にまつわる法律の話 正当な解雇と不当解雇の境界線

労働・雇用法弁護士 勝田順子の
職場にまつわる法律の話
第7回 正当な解雇と不当解雇の境界線

昨年末、バスの職務運転中の携帯電話使用を理由に即日解雇されたバス運転手のティモスズク(Tymoszuk)氏(以下:T運転手)が、コンフォート・デルグロ・キャブチャージ(Comfort Delgro Cabcharge)バス会社(以下:CDCバス会社)を不当解雇で訴えた事案がありました。

過去にも、同じCDCバス会社で職務運転中に携帯電話使用したナシュリン(Nasrieh)氏(以下:N運転手)を解雇した類似ケースがあり、当時はN運転手が不当解雇判決を勝ち取り注目を集めました。しかし、今回のT運転手の事案では、審判の結果は“正当な解雇”。明暗を分けた2つの事案の違いはどこにあるのでしょうか。

フェアワーク・コミッションの審判では、解雇に至る経緯を不当解雇の基準に照らし合わせ、「厳しく、不当、不合理」な解雇ではなかったか否かを検証します。T運転手の場合は、次の理由で正当な解雇だと判決が出されました。

 

●解雇理由が妥当である

CDCバス会社は就業規則において職務運転中の携帯電話使用を禁止しており、規則違反は即日解雇の理由になると明言している。また、審判官はT運転手の行為は、乗客とほかの道路利用者の安全を守る就業規則の目的を軽視しており、一般常識的に見ても解雇に値する重大な不正行為だとした。乗客からT運転手の行為に対して苦情も出ており、会社の信用をも傷つけ営業利益にも影響を与えたとした

●公平な社内内部手続きをとった

CDCバス会社は、T運転手に話し合いの場において解雇理由を口頭と書面でも通知を出し、その場で考えを述べる機会を与えた。

 また話し合いには労働組合の代表者を同席させ、T運転手のサポート役とした。さらに、会社内部で上訴できるシステムを採用していた

一方で、N運転手が類似ケースで過去に不当解雇判決を得たことに触れ、審判は以下のように違いを説明しました。「N運転手の事案では、当時、携帯電話の職務運転中の使用を禁止する新しい就業規則がN運転手を含め従業員に周知されていなかった。

従業員に認識されていない就業規則違反に基づく解雇は不当であり、不当解雇判決とされた。

その後CDCバス会社は新しい通知システムを導入しており、従業員が出勤してタイムカードを押す時には、改定された就業規則の通知が表示され、内容を理解したことを認めないとタイムカードを押すためにサイン・オンできないシステムになっている。また、T運転手自身も携帯使用禁止の就業規則について知っていたと話し合いの場で認めた」

雇用主へのアドバイス

就業規則違反の従業員を解雇するには、就業規則を定めているだけでは足りません。規則が必要な時に効力を持つよう、従業員に周知されるように通知や指導を徹底することも大切です。


PROFILE

2004年に来豪。シドニー法科大学院卒(Graduate Diploma in International Law)。09年にNSW州弁護士登録。専門分野は労働・雇用法。Katsuda Synergy Lawyers(カツダ・シナジー・ロイヤーズ/www.katsuda.com.au)の代表弁護士。 複数の弁護士事務所と協業体制をとり、企業法務全般、訴訟、家族法や移民法(ビザ)をはじめとする幅広い分野において専門性の高いリーガル・アドバイスを提供している。連絡先: contact@katsuda.com.au

 

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