オーストラリアにおける財務報告レビュー

税務&会計Review

 

税務&会計 REVIEW

アーンスト・アンド・ヤング
シニア・マネジャー/ジャパン・ビジネス・サービス 
荒川尚子

★著者プロフィル=豪州勅許公認会計士・米国公認会計士。
日本・米国・豪州の上場企業への監査業務を専門とし、会計基準比較アドバイスと監査業務を専門とする。JBSでも資源・電力業界のEYグローバル・ネットワークを屈指し、さまざまな包括的サービス提供に従事。
オーストラリアにおける財務報告レビュー

オーストラリア証券投資委員会(ASIC)は、オーストラリアの企業登記と証券規則を監督する責務を負う政府機関です。ASICは、定期的に財務諸表レビューと監視プログラムにおいて注目している点、レビューやその他監視プログラムから得た結果、またそれに対して講じている対策の内容を公表しています。今月号では、2015年の財務報告においてASICが重点的に監視しているポイントを紹介します。

取締役と経営陣が2015年会計年度の財務報告を作成する際に考慮すべき重点ポイントの一部を以下の一覧にまとめました。一覧に掲載されている項目は14年12月31日期末で既に指摘したポイントも含まれ、ASICが14年6月30日期末の財務報告レビューと監視プログラムを実施した際に注目した問題点に基づいています。

会計上の見積り:(Accounting estimate)減損テストと資産価値

のれんや有形・無形固定資産の帳簿価額の回収可能性については、当局が重点的に監視を継続しています。そのため取締役と経営陣は以下に焦点を置いて内部書類をレビュー・承認することが重要です。

a)キャッシュフローと前提条件の妥当性
 過去のキャッシュフローや資金調達方法、経済や市場条件と照らし合わせて、合理的な見通しを確認できていること。前期のキャッシュフローが予測通りでなかった場合、今期の前提条件が合理的に維持できるかどうか、慎重に検討する必要があります。

b)使用価値の適用
 売却費用控除後の公正価値(Fair valueless costs to sell、FVLCS)を、使用価値モデル(Value in use、VIU)が使うことができない場合の代替手段と考えてはいけません。実質的に入手可能な情報に限りがあり、FVLCSの測定が困難な場合、VIUを適用すべきでしょう。
 VIUでは、その時点での最善の見積り(Best Estimate)が必要であり、例えば、将来キャッシュフローの見積りにおける5年後以降のキャッシュフローの増加、または事業再編と資産のパフォーマンス改善によるキャッシュフローの向上は考慮に入れません。

c)回収可能価額と簿価の一貫性
 キャッシュフローは、当該キャッシュフローを生み出すすべての資産の価値と整合しており、資産の中には、棚卸資産、売掛金、税金残高などが含まれます。

d)資金生成単位(CGU)
 CGU(Cash Generating Unit)は、事業体の営業セグメントより大きい単位であってはなりません。個々の資産のキャッシュインフローがおおむね独立していない場合も、CGUをあまり大きい単位に設定することはできません。

取締役と経営陣は金融商品の簿価の評価に焦点を当てる必要があり、特にその評価が外部で見積もられた価格または観察可能な市場データに基づいてない場合は、さらに注意を払う必要があります。来月号では、資産の簿価を評価する際の、取締役の役割について詳しく述べます。

会計方針の選択

①収益の認識(Revenue Recognition)
 取締役と経営陣は、会社の基礎となる取引の実態に従い確実に収益を認識する会計方針を検討しなければなりません。以下が重要な検討事項となります。

(a)収益を認識するために、いつサービス提供を完了したか記録していますか

(b)いつ当該商品のリスクと便益が買い手に譲渡されたかを記録していますか

(c)収益が商品の販売と関連するサービスの提供の両方に関する場合、収益は適切に構成要素に割り当て、それに応じて認識していますか

(d)金融商品に関しては、金融商品の種類に従った適切な基準で収益を認識していますか

②費用の繰り延べ(資産化)
 費用を繰り延べする際には、会社の会計方針と整合性がとれた適切な説明とその文書化が大切です。一般的に以下の場合以外は費用の繰り延べをすることはできません。

(a)該当する会計基準の定義に該当する資産がある
(b)その資産の関連上、将来的経済効果が認識される可能性が高い
(c)無形固定資産に関する会計基準にて資産計上が要求されている
   ・開業費、研修費、移転費用と研究費は費用化している
   ・繰り延べる金額はいずれも、適切に測定されている
   ・開発費は、繰り延べの6つの厳しい基準を満たしている

財務報告書の利用者が事業体の財務結果を理解しやすくするため、会計基準上特に認められている場合に限り、収入と支出の項目を損益計算書ではなく、そのほかの包括利益への計上が可能となります。

③税務会計
 税効果会計は複雑な場合があり、財務報告作成時に以下を考慮する必要があります。

(a)税務上の扱いと会計上の扱い両方を理解し、この2つの違いが繰延税金資産、繰延税金負債と税金費用にどのような影響を及ぼすのかを適切に理解すること

(b)最近のいかなる法律の変更の影響も検討すること

(c)繰延税金資産の回収可能性につき、適切に検討し文書化すること

主な開示:見積りと会計方針の判断

見積りの不確実性の要因と会計方針の適用における重要な判断に関する開示は、財務報告書の利用者が、事業体が報告した財務状態と業績を評価する上で重要なポイントとなります。例えば、主要な前提条件と感応度分析の開示は重要です。財務報告書の利用者はこの2つを用いて事業体の資産の簿価と減損のリスクについて、多くの資産評価に関わる見積りの不確実性を前提に、投資家自身の評価を行うことができるからです。

私たちの見解

取締役と経営陣がASICの重点エリアを理解し、確実にそれらについて適切な対応を取ることは重要なことです。これらの問題が適切に対処されていないとASICが判断した場合、企業と取締役個人に対して対応する措置を取ることがあります。

終わりに

私たちは、日系企業の取締役や幹部がオーストラリアで企業活動を行うにあたり、また財務報告を作成する際に知っておくべき問題のいくつかに対して、わずかですが洞察を共有しました。

オーストラリアの企業環境で経営を行う上で多くの責任が伴います。オーストラリアの法人で管理職や取締役の地位についている方々は、絶えず監視される大きな責任があります。そして、この役割を引き受けるにあたり、それに伴う責任や義務だけでなく潜在的な責務や負担を理解することは重要です。

ジャパン・ビジネス・サービス・ウェブサイト
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※この記事は出版時の時点で適用される一般的な情報を掲載しており、アドバイスを目的としたものではありません。この情報を基に行動をされる際には、専門家のアドバイスを受けることをお勧めいたします。

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