IFRS第16号『リース』の概要

税務&会計Review

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アーンスト・アンド・ヤング
ジャパン・ビジネス・サービス/監査 
清水規史

プロフィル◎日本公認会計士。IFRS、USGAAP及び日本基準に基づく監査を専門とし、豪州をはじめ世界各国へ展開するグローバル企業に対する監査業務経験が豊富。日豪通算で約10年にわたる実務経験を有する。

IFRS第16号『リース』の概要

国際会計基準審議会(IASB)は、2016年1月にIFRS第16号「リース」を公表しました。それを受け、翌2月豪州会計基準委員会(AASB)はIFRS第16号に準拠したAASB第16号「リース」を発行しました。IFRS第16号は、09年1月にリースの討議資料が公表されて以来、長期間にわたる議論を経て公表されたものであり、借手に対してほとんど全てのリース取引を貸借対照表上で資産及び負債として認識することを要求しています。今月号では、多くの企業にとって重要な影響があると考えられるIFRS第16号について、現行基準であるIAS第17号「リース」との比較を念頭に置きながら解説します。

IFRS第16号の概要とIAS第17号からの変更点

現行基準であるIAS第17号「リース」では、リース取引を原資産から得られる経済価値とリスクとの関連で捉えていた一方(「リスク・経済価値モデル」)、IFRS第16号「リース」では、リース対象物を使用する権利を支配しているかどうかで捉えており(「支配モデル」)、リースの基本的な考え方の転換がみられます。これにより、リースの定義が変更され、貸手の会計処理に実質的な変更がない一方、借手の会計処理においてはファイナンス・リースとオペレーティング・リースの区別がなくなり、貸借対照表上に「使用権資産」及び「リース負債」を認識する単一のオンバランス・モデルを採用するという大きな変更がなされています。

これは、現行のIAS第17号におけるオペレーティング・リースの借手はリース料を費用として処理するのみであり、リースに関する資産や負債を認識しないため、貸借対照表が取引の実態を表していないという批判に応えるものです。IASBは、IFRS第16号は財務諸表利用者にとってリース取引の実態を理解するためのより有用な情報を提供できると考えています。IAS第17号及びIFRS第16号の主要ポイントごとの比較は下表1の通りであり、各ポイントについて次章以降で解説します。

(表1) IAS第17号 IFRS第16号
基本的考え方 リスク・経済価値モデル 支配モデル
リースの定義 貸手が一括払いまたは数次の支払いを得て、契約期間において、資産の使用権を借手に移転する契約 資産を使用する権利を一定期間にわたり、対価と交換に移転する契約
借手の会計処理 ファイナンス・リースまたはオペレーティング・リース 単一のオンバランス・モデル(「使用権資産」及び「リース負債」を認識)
貸手の会計処理 同上 ファイナンス・リースまたはオペレーティング・リース(実質的な変更なし)

リースの定義-契約にリースが含まれているか否かの判断

IFRS第16号では、リースは「資産を使用する権利を一定期間にわたり、対価と交換に移転する契約」と定義され、以下の2つの要件を満たす必要があります。

1.資産の特定

• 契約が特定された資産に関係している

• 契約に明記されているか否かを問わず、物理的に区分可能な資産が特定されている(例:オフィス・ビルの1フロア)

2.支配

• 顧客が以下の両方の権利を有する

◯ 資産の使用から生じる「経済的便益のほとんど全て」を得る権利

◯ 資産の使用を「指図」する権利(顧客が資産の使用用途、時期、場所などを自由に決定できる)

IFRS第16号に基づく判断結果は、現行基準であるIFRIC第4号「契約にリースが含まれているか否かの判断」に基づく判断結果と異なるケースもあるため、各契約について再検討することが必要です。

借手の会計処理

1.認識及び測定

借手は、全てのリース契約について、リース期間にわたり原資産を使用する権利である「使用権資産」、リース料の支払義務である「リース負債」をそれぞれ貸借対照表上で認識することが要求されます。ただし、リース期間が12カ月以内の短期リース契約、原資産が小額な小額リース契約(OA機器など)に限り、現行のオペレーティング・リースに準じた処理が許容されます。

リース契約の開始時において、リース負債はリース料総額の割引現在価値、使用権資産はリース負債に前払リース料、リース・インセンティブ、初期直接コスト及び原状回復の見積コストを調整した金額でそれぞれ測定されます。

リース契約開始後は、リース負債は時の経過に伴う利息費用により増加し、リース料の支払いに伴い減少します。リース負債残高の大きいリース期間前半に相対的に多額の利息費用が発生することから、毎期一定額の費用を計上する現行のオペレーティング・リースと比較すると、費用が前倒しで計上されることになります。使用権資産は、IAS第16号「有形固定資産」に従い減価償却を行います。IAS第16号における再評価モデル、IAS第40号「投資不動産」における公正価値モデルを適用することも可能であり、またIAS第36号「資産の減損」に従い減損テストの実施が必要です。

当初認識及び測定 使用権資産及びリース負債を割引現在価値で認識
事後測定:リース負債 • 利息費用の計上に伴う増加
• リース料の支払いに伴う減少
事後測定:使用権資産 • IAS第16号に従い減価償却
• IAS第16号の再評価モデル、IAS第40号の公正価値モデルの適用可
• IAS第36号に従い減損テストの実施
損益への影響 費用が前倒しで計上される(リース負債残高の大きいリース期間前半において比較的多額の利息費用が発生するため)

2.表示

使用権資産及びリース負債は、貸借対照表上、他の資産または負債と区分して表示するか、注記において個別に開示します。

リース負債から発生した利息費用、使用権資産から発生した減価償却費は、損益計算書上でまとめることはできず、別個に表示します。

キャッシュ・フロー計算書においては、リース負債の元本返済は財務活動に表示し、支払利息はIAS第7号「キャッシュ・フロー計算書」に従い企業が選択した会計方針に基づき、営業活動または財務活動に表示します。

貸手の会計処理

貸手の会計処理については、現行IAS第17号から実質的な変更はなく、各リース契約をファイナンス・リースまたはオペレーティング・リースに分類し、会計処理を行います。

借手は全てのリースをオンバランスするため、貸手がオペレーティング・リースとして処理した場合、両者の貸借対照表に使用権資産又は原資産が計上され、対称性がなくなります。そのため、例えばグループ会社間でリース取引を行っている場合には、連結相殺消去が適切になされているかに留意が必要です。

適用時期

IFRS第16号は、19年1月1日以降開始する事業年度から適用されます。早期適用も認められますが、その場合にはIFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」を既に適用しているか、IFRS第16号と同時に適用することが必要です。

今後の展望

IFRS第16号は、とりわけIAS第17号に基づきオペレーティング・リースに分類されるリース取引を多く活用している借手に重要な影響を及ぼします。IASBがIFRSまたはUSGAAPを適用している上場企業約14千社を対象に行った影響分析によると、現状オフバランスされているリース取引の将来の最低リース料の現在価値は2.86兆米ドルに上ると見積もられており、特に航空、小売り、旅行及びレジャー、運送業種における影響が大きいと考えられています。また、一部の例外を除き全てのリース取引がオンバランスされることから、負債比率、流動比率、ROAといった主要財務指標へも重要な影響があり得ると分析されています。

当該影響分析は、IFRS第16号の導入による影響がいかに重要であるかを示しており、各企業は自社への影響を精査し、新基準導入への準備を早急に開始することが必要です。

※この記事は出版時の時点で適用される一般的な情報を掲載しており、アドバイスを目的としたものではありません。この情報を基に行動をされる際には、専門家のアドバイスを受けることをお勧めいたします。

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