オーストラリア・ニュージーランドM&A調査結果【前編】

税務&会計Review

税務&会計 REVIEW

EY パートナー/ジャパン・ビジネス・サービス
オセアニア/アジア太平洋地域統括 
菊井隆正

プロフィル◎アジア・パシフィックおよびオセアニア地域日系企業担当部門代表。常に監査、会計、税務から投資まで広範囲にわたる最新情報を提供することで、オセアニアで活躍する日系企業に貢献できるよう努めている。

オーストラリア・ニュージーランドM&A調査結果【前編】

EYが世界中の有力企業の経営陣に対して半年ごとに実施している「キャピタル・コンフィデンス調査」の最新結果(72カ国約20業種の経営陣1,700人以上が対象)が発表されました。ここでは、2016年8月から9月にかけてオーストラリアとニュージーランドの135人の経営陣に対して行った調査の結果をまとめたレポートの概要を前編・後編の2回にわたってご紹介します。

世界情勢が最近著しく変化しているにも関わらず、企業は地政学的不透明感、景気の減速やデジタル・ディスラプションを背景として、収益成長を求める上で依然M&Aに注目しています。第15回Global Capital Confidence Barometer調査によれば、オーストラリア・ニュージーランドの経営幹部たちのM&Aに対する信頼感は、他のグローバル企業経営幹部に比べて低迷気味となりましたが、ボラティリティが「ニュー・ノーマル」となってきたこともあり、M&Aに対する今後の見通しは改善しつつあります。

グローバル企業の経営幹部のスタンスとは対照的に、一般的にポジティブな国内経済情勢にも関わらず、国内のM&A計画が米大統領選に至るまで横ばいとなっていたことが分かりました。これらオーストラリア・ニュージーランドの調査結果は、世界的なボラティリティや地政学的不安定性に関する懸念、そして国内株式のバリュエーションの不透明感を反映した結果となりました。


ここ数カ月の間、企業マインドが冷え込んだにも関わらず、選挙前の同調査結果では、国内M&Aのパイプラインが小ぶりでよりスマートな案件で溢れており、経営幹部の国内M&A市場への期待感は実際改善していることを示しました。

米大統領選が終了し、今後企業環境が大きく変化すると予想される中、投資家や企業の利害関係者による成長と収益への期待は引き続き高いといえます。そのため、経営幹部たちにとって何もしないという選択肢はなくなりました。選挙結果の影響が理解されてくるにつれ、買収を一時的に保留したり、ブレグジット(Brexit)後にみられたように短期的な株式のボラティリティが、数週間にわたりM&Aを低下させる可能性があります。しかし、政治的不安定性に対する懸念は世界的なM&Aに対するセンチメントを損なうものではなく、逆にそれに打ち勝つための手段であるとみなされ、中長期的にはM&Aが堅調で持続可能であると考えられます。

経営幹部は、M&Aが収益性の高い成長を実現するのに不可欠な要素であるという事実を受け入れる必要があります。オーストラリア・ニュージーランドの経営者は資本アジェンダの一環としてM&Aによる成長戦略をうまく取り入れていかないと、競合他社がそうした脆弱性を布石として成長することは必至です。これまでにないほど急速に進む世界の変化や統合に多くの企業が対応を迫られ、かつてないほどの混乱の時代を迎えています。企業は成長、もしくは衰退のいずれかの選択肢を迫られています。

マクロ経済環境

ブレグジット、(当時結果が出ていなかった)米国選挙および資本市場のボラティリティの懸念があったにも関わらず、調査対象である経営幹部の大半は依然、世界経済が安定している、または上向きであると見ていました。彼らは国内経済は安定化すると見ていますが、株式のバリュエーションに関する見通しについては懸念を示しています。

米国での選挙前でさえ、オーストラリア・ニュージーランドの経営幹部は特にブレグジット、中国の景気減速、米国市場を取り巻く不透明性や選挙の見通しを踏まえ、市場のボラティリティや成長の減速に不安を抱いていました。現地回答者の71パーセントがグローバル市場は安定している、または穏やかに改善しているとみており、その数値は1年前の94パーセントより下がりました。

具体的には、現地回答者は現在、世界の資本市場におけるボラティリティと世界の貿易フローの減速を、将来の成長戦略の主要リスクとみなしています。

オーストラリア・ニュージーランドの経営幹部は、6カ月前と比較し、国内経済について若干ポジティブになっています。コモディティ価格の多少の回復、低金利環境下での建設及びその他セクターの強さは、安定した国内経済への期待を加速させています。

70パーセントの回答者が国内経済はこのまま安定しているか、緩やかに改善すると考えています。そう言いながらも、48パーセントの回答者は株式のバリュエーションの見通しについて否定的であり、36パーセントが与信状況に懸念を抱いています。後者の問題は、バーゼル3の資本要件と企業部門の信用度に関する懸念が原因である可能性があります。これは、銀行が過去12カ月間に企業向けローンから小売住宅ローンにポートフォリオを再調整していることにみられます。

企業戦略

イノベーション、新しいテクノロジー、変化する顧客需要によって企業は製品や事業を再構築するよう求められています。同時に、規制上の不透明性が企業戦略をより複雑にしています。現地企業は、将来の成功を支えるため、買収とパートナーシップの組み合わせで対応しています。

現地企業の幹部たちはデジタル・ディスラプションの重要性を過小評価しているのでしょうか? デジタル技術は、世界中の企業の取締役会が取り上げる第1の議題となっていますが、現地回答者は、物言う株主の対応や成長の機会特定より下位の4番目に挙げています。

現地の課題は、取締役会における戦略的な幅広いディスカッションの段階から、M&Aの実施の段階に移行した可能性があります。確かに、新しいテクノロジーの獲得は、地場企業が自社の分野においてM&Aを推進してきた主なけん引力でした。オーストラリアの企業幹部の約3分の2は、今後12カ月間でテクノロジーとデジタル化の進歩が主要事業に対するディスラプター(現状破壊をもたらす起爆剤)となると考えています。

しかし、この調査結果は、現地企業が、世界のビジネス・モデルを破壊するイノベーション、セクター融合の加速、顧客行動の変化を起こさせるパーフェクト・ストームを過小評価している可能性も示唆しています。主にデジタル・チャンネルの利用や人材の革新的な活用による新しいビジネス・アプローチの急速な増加は、これまでの事業のやり方を変化させています。グローバル企業はデジタルの世界で競争力を高めるため、価値提案を再定義し、組織を再編することにより対応しています。

この破壊的で急速に変化する環境において、無機的成長は、有機的成長よりイノベーションへの近道となり得ます。

M&Aは、消費者行動の変化やセクター融合を加速させている市場において、複雑さとデジタル・ディスラプションを上手くナビゲートするための有効な手段といえます。

※本稿の内容は執筆者の個人的見解であり、EYを代表するものではありません。本稿は一般情報の提供を目的としており、アドバイスではなく、そのように理解されるべきものではありません。本稿が提供した情報を基に行動する前に、専門的なアドバイスを受けることをお勧めします。

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