オーストラリア・ニュージーランドM&A調査結果【後編】

税務&会計Review

税務&会計 REVIEW

EY パートナー/ジャパン・ビジネス・サービス
オセアニア/アジア太平洋地域統括 
菊井隆正

プロフィル◎アジア・パシフィックおよびオセアニア地域日系企業担当部門代表。常に監査、会計、税務から投資まで広範囲にわたる最新情報を提供することで、オセアニアで活躍する日系企業に貢献できるよう努めている。

オーストラリア・ニュージーランドM&A調査結果【後編】

EYが世界中の有力企業の経営陣に対して半年ごとに実施している「キャピタル・コンフィデンス調査」の最新結果(72カ国約20業種の経営陣1,700人以上が対象)が発表されました。ここでは、2016年8月から9月にかけてオーストラリアとニュージーランドの135人の経営陣に対して行った調査の結果をまとめたレポートの概要を前編・後編の2回にわたってご紹介します。

規制環境を整えるために企業はもっと行動すべきか?

現地回答者の28%は、今後12カ月間、業界規制がコア事業の主要な破壊要因になると考えています。この調査結果は、規制当局と業界が協力し続けていくことの重要性を強調しています。より大きなコラボレーションは、より堅固なエビデンス・ベースを作り、規制当局と業界とのより良い対話を可能にします。これは、破壊力のプラス面とマイナス面を最適に管理し規制の負担をより公平に配分するため目的にかなった規制を策定するための一助となります。

無機的成長が議題に

低成長環境の中、現地の経営幹部は、企業成長の54%は今後12カ月間にわたって無機的経路に由来すると予想しており、ディール・メイキングの良好な見通しを支えています。更に、企業幹部はジョイント・ベンチャーや提携について健全な見通しを持っています。通常、このような方策は企業が最初に求めるものです。これらの代替的なM&A構造は、セクターにおける急速な変革を活用する、あるいは革新的なビジネス・モデルや新しい作業方法にアクセスするための最速の方法です。

プロセスが自動化されても生産性の向上につながらない


この調査によれば、企業は従業員を再訓練し、また、より技術主導型の環境で働く才能のある労働者を雇う必要があることを認識しています。しかし、現地の回答者の3分の1(37%)は、自動化による生産性の向上をまだ実感していません。大半の企業は、投資の失敗または自動化されたプロセスと自動化されていないプロセスの重複のいずれかを経験しています。これは、現地回答者の4分の1(26%)のみが技術の進歩が労働力の削減につながると考えている理由とも思われます。しかし、大半のセクターにおいては、労働力は賃金だけでなく、規模の大小にかかわらず労働力を維持するための付随的コストも含めると最大の運営コストの1つです。いかに困難であっても、自動化を正しく行うことは、多くの業界にとって重要な差別化要因になります。

M&Aの見通し

低成長かつ破壊的で変動しやすい環境であるため、M&Aを行うことは選択肢ではなく、不可欠であることを意味しており、これに呼応してM&Aのパイプラインが拡大しています。しかし、買収完了の難易度がいかに高いかを考えると、現地企業は、より小さく革新的な目標を掲げ、より良くM&Aを行う方法を学ぶ必要があります。アナリティクスとビッグ・データは、より良い意思決定と統合を支援するのに不可欠です。

株主が高い売上高や収益成長を求め続ける中、大半の企業は低い有機的成長率しか得られないことから、企業幹部は取引に対する意欲を取り戻さずに許容範囲内の収益性の高い成長を実現する方法を見いだすのは難しくなっています。おそらくこれが、回答者の96%が地元のM&A市場が同じままであるか、または来年にわたって改善すると考えている理由です。

パイプラインは、数は増えるも小規模なM&A

より大きなパイプラインは、M&A活動の将来の拡大を支援します。企業幹部は、調査対象となる潜在的なターゲットの数が大幅に増加したと報告しています。65%は取得パイプラインで5件以上のM&Aを、30%は今後12カ月でパイプラインが増加すると予測しています。

しかし、パイプラインのM&Aはより小さく、スマートになっています。より小さなM&Aへの移行は、M&Aの世界的なトレンドに従うもので、中規模のM&Aにシフトしています。取締役会のある程度の保守主義もあり、企業はよりリスクの高い変換を実行するのではなく、特定のポートフォリオや能力のギャップを埋めるために、緊密に連携したビジネスの戦略的ボルト・オンを求めることで、買収的成長戦略のリスクを取り除いています。

資本の利用可能性や買収対象会社の規模がより小さいことから、回答者は今後12カ月でM&A完了が加速すると予想しています。定期的にボルト・オン買収を実施する企業は、統合による価値を探し当て実行し、引き出すための企業能力とキャパシティーを構築しています。

成長をより容易にしながらリスクを低減する可能性のある買収目標には、直接的な競合企業、サプライヤー、ディストリビューター、現在自社が事業を行っていない地域の同業者、及び類似産業に属する企業が含まれます。

期待にそぐわない買収

調査によると、期待した買収によるシナジーを得ることに成功していません。シナジーを定量化することや、以下を過小評価することなどが困難な点として挙げられます。

・シニア・マネジメントに時間がかかる
・商品や利益を伸ばすための投資
・IT統合のチャレンジ
・企業文化の違い

M&Aが完了しても、価値創造のプログラムの第1歩としか見なされるべきではありません。現地回答者の89%は、過去1年間計画された買収を完了できなかった、または取りやめたとしています。回答者の60%は利用できる買収機会の数を肯定的にとらえていますが、5分の1(21%)の回答者のみしか買収を完了する可能性について自信を持っていません。

M&Aの分析

同時に、資産を求める競争が激化する中、大きく深いパイプラインが必要になってきており、潜在的なターゲットを特定するのに役立つビッグ・データとアナリティクスをもっと活用するように経営幹部を促しています。テクノロジーの進歩、利用可能なデータ、そしてもっと知識の豊富なM&Aの関係者は、データ抽出やデータ分析のツールの積極的な活用を促し、M&Aの評価を行っている関係者に、M&Aに関するより価値のある洞察を迅速にもたらします。

ブレグジット関連の懸念:英国はもはや投資先の最有力候補ではない……
米国もこれに続くのか?

米大統領選の前は、世界及び現地回答者は、主要先進国及び最大の新興国における買収を追求していましたが、ブレグジット後の英国は注目すべき例外となりました。英国の代わりに、アウトバウンド投資を求める現地回答者の55%は、米国、中国、ドイツを選択していることが分かりました。

6カ月前、英国は4番目に人気のある投資先で、ドイツはトップ5にも入っていませんでした。世界的にも国内的にも、経営幹部は開発途上国に多額の投資を行う意欲を失いつつあります。これらの国々に内在するリスクが現実のものであることが証明されたからです。ドナルド・トランプを大統領に迎えた後、少なくとも新政権の政策方向が明確になるまで、米国の投資に対する執行欲求が衰退するかどうかを見ることは興味深いと言えます。

※本稿の内容は執筆者の個人的見解であり、EYを代表するものではありません。本稿は一般情報の提供を目的としており、アドバイスではなく、そのように理解されるべきものではありません。本稿が提供した情報を基に行動する前に、専門的なアドバイスを受けることをお勧めします。

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コンタクト:

菊井隆正(ナショナル/ニュージーランド)
Tel: (02)9248-5986
Email: takamasa.kikui@au.ey.com

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