フリンジ・ベネフィット税(FBT)申告を控えて

税務&会計Review

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アーンスト・アンド・ヤング ジャパン・ビジネス・サービス
雇用関連税務 シニア・コンサルタント 
歐陽慶(Kei Ouyang)

著者プロフィル◎豪州公認会計士。NSW大学大学院卒業後、大手税理士法人に入所。その後豊富な駐在員税務と法人会計管理業務経験を経て昨年8月よりEYシドニー事務所に入所。日本語が堪能。

フリンジ・ベネフィット税(FBT)申告を控えて

4月は、オーストラリアのフリンジ・ベネフィット税(FBT)新年度の開始月であると共に、7万近くの雇用者が2カ月弱で前年度のFBT申告書を作成する時期でもあります。各雇用主は前年度に支給したFBT対象となる全ベネフィットを正確に申告し、また今後12カ月間におけるFBTの節税対策を練る必要があります。今月号では、FBTの概要と最新情報を提供します。

FBTとは?

FBTとは本質的に、雇用主が従業員に直接または間接的に支給する現金給付以外のベネフィットに対して支払う税金のことです。課税対象の判断は複雑になることがあり、情報が適切に管理されていない場合は煩雑な作業となり、結果的に高い税金を負担することになりかねません。

日本を含む他国における当該支給に対する税務上の取り扱いと異なり、FBTは従業員ではなく雇用主に課せられるものであり、従業員に支払われる給与額に応じて控除される源泉徴収税とも明確に異なります。フリンジ・ベネフィットは、2種類のグロスアップ率(右表参照)のどちらかを乗じた後、個人所得税の最高限界税率(右表参照)で課税されます。すなわち、場合によっては支払うべきFBTが支給したベネフィットの費用を上回る可能性があります。

FBT課税対象のベネフィットは多岐にわたっており、代表的なものとしては次のようなものがあります。

●食事・その他の交際
●車両と駐車場
●「LAFH(遠隔地勤務)」を対象に支給されるベネフィットと手当

雇用主は多くの場合、申告書類作成のために、給与台帳や買掛金勘定のデータなど、多種多様なソースから情報を入手する必要があります。

また、FBTの免除や優遇措置に関する法制度には表面からは目に見えてこない問題点もあります。これらを理解することは、事業のFBT義務の管理にとって必須と言えます。

変更点は?

過去12カ月間にフリンジ・ベネフィット税制に関する大幅な改正はありませんでした。2018FBT課税年度(2017年4月1日から2018年3月31日)に関しては、適用されるFBT税率が変更されます。時限的な予算均衡化税の終了予定に伴い、FBT税率と関連するグロスアップ率は、下表に示す通り2015 FBT課税年度時点の税率に戻されます。

2017年 FBT課税年度 2018年 FBT課税年度
タイプ1グロスアップ率 (GST仕入税額控除が可の場合) 2.1463 2.0802
タイプ2グロスアップ率(GST仕入税額控除が不可の場合) 1.9608 1.8868
FBT税率 49% 47%

グローバル企業に影響を及ぼす主要事項

FBTはオーストラリア所得税の課税対象となる給与や賃金を受給する従業員に関連して適用されることに留意が必要です。言い換えれば、海外の関係会社からフリンジ・ベネフィットを受け取っている従業員も考慮に入れる必要があります(例えば、オーストラリアに赴任している駐在員が日本に帰省するための航空チケット代を日本の親会社に立替精算してもらった場合)。従って、従業員に支給される現金以外のベネフィットに関しては、支給地が海外の場合や海外の関係会社から支給されるものも含めて、FBTの課税対象になるか確認することが非常に大切です。

グローバルに雇用を進めている会社は、「Living Away from Home(遠隔地勤務、LAFH)」の従業員に対して支払う現金と現金給付以外に支給するベネフィットについて検討することが重要です。かつてオーストラリアに赴任した駐在員に適用されていたFBT上の寛大な優遇措置が失効したため、住宅や食費など、駐在員の生活費を補助するために支給する金銭やベネフィットはFBT申告書に含まれます。ただし、赴任に係る交通費・引っ越し費用/荷物保管料に関する所定の項目についてはまだ課税免除の適用が可能かもしれません。これらの免除の適格性については、多くの場合、ベネフィットが従業員に支給される方法(現金支給か費用の立替精算か)とそれを取り巻く状況(一時的な転勤か永住か)によって異なるため、常に海外勤務を計画する前に考えておくべきです。

もう1つ考慮すべき重要な点は、会食交際やゴルフ費用を含む、従業員に提供するエンターテインメントに関わるベネフィットの支給とそれに対するFBT上の措置です。エンターテインメント・娯楽の概念はとても幅が広く、従業員に対する飲食やレクリエーションの提供も対象になります。エンターテインメントに関わるベネフィットの支給がFBT課税対象となるかどうかの判断は必ずしも容易ではありません。とりわけ日常の業務活動の一環として発生した交際費など、例えば顧客の接待やビジネス・ランチもFBTの課税対象となり得ます。また、エンターテインメント・ベネフィットとして提供した会食交際費と娯楽施設使用費に関しては、雇用主が選択できる評価方法が複数あり免除と減税の適用も可能です。従って、課税対象のエンターテインメント・ベネフィットを漏れなく申告し、なおかつFBT負担額を最小限に抑えるためには、全てのエンターテインメント費用をFBT申告書作成の過程において適切に取り扱うことが不可欠となります。

最後に、駐在員の海外勤務についてグローバル企業が考慮しておくべきもう1つの重要課題は、駐在員がLAFHに該当するのか、または単なる出張なのかという点です。LAFHベネフィットの支給や金銭の給付とは異なり、宿泊費や食事手当など出張中の従業員に支給されるベネフィットは、一般的にFBTの課税対象とはなりません。オーストラリア国税庁(ATO)が承認したスキームでは最長120日までを出張とみなすことができます。従業員が出張者なのかLAFH規定に該当するかの判定基準は、主観的で個別の状況により異なります。通常の21日規定を超える期間については外部の助言を求めることをお勧めします。

FBTの節約

多少の下準備をすることで、雇用主のFBT納税負担額を削減することが可能です。

●電子版走行日誌:最近、ATOは、車両用の走行日誌や駐車登録を作成するための電子デバイスを承認するクラス税務通達を発表しました。これらのデバイスの主な特徴は、簡単かつ電子的に記録を保管する方法とフレンジ・ベネフィットの評価方法の選択肢(例えば、車両のオペレーティング・コスト法、駐車場のための実額法)を雇用主に与え、大きな節約の可能性を与えています。

●所有台数の多い雇用主の社用車フリンジ・ベネフィットについて:ATOは最近、20台超の車両を保有している企業のFBT義務管理を支援するため、「Practical Compliance Guideline (PCG) 2016/10」を公表しました。PCGを適用することで、オペレーティング・コスト法を使用して一定の基準(最低75%の全車両から有効な走行日誌を回収していることを含めるなど)を満たす雇用主は、回収した走行日誌の平均レートに基づき、全車両に対して単一の業務目的使用率を適用できる可能性があります。PCGによる主な節税点は、雇用主が全車両に対してオペレーティング・コスト法を適用できることです。この場合、従業員が有効な走行日誌を提出できない車両も含みます。

●FBTリモデリング:FBTのリモデリングは、社用車や民間医療保険など一定のフリンジ・ベネフィット支給で会社が負担するFBT費用全体を削減する(FBT税率から従業員の所得税限界税率までに引き下げる)ことです。見えざる給与計算に基づき、従業員に不利を与えず通常雇用主に大幅節税をもたらします。この節税対策の成功には、正確な計算と従業員との意思疎通が必須であり、事前の計画が求められます。

●会食交際費の評価:会食交際費を評価できる3つの方法のうち、計算が簡単である50/50分割法が最も好まれています。しかし、実額法の場合、特定の会食交際費用に対して、少額ベネフィット免除や敷地内免除など50/50分割法では利用できない主要FBT免除規定が適用可能になり、通常大幅な節約をもたらします。ただし、実額法で免除規定を利用するためには、雇用主が給与台帳/買掛金勘定にいくつか重要な情報を記入する必要があるため、下準備が必要です。

※この記事は出版時の時点で適用される一般的な情報を掲載しており、アドバイスを目的としたものではありません。この情報を基に行動をされる際には、専門家のアドバイスを受けることをお勧めいたします。

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コンタクト:

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Tel: (02)9248-5739
Email: junya.shinozaki@au.ey.com

 

歐陽慶(シドニー)
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