457ビザ廃止による日系企業への影響

税務&会計Review

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アーンスト・アンド・ヤング
ジャパン・ビジネス・サービス・ディレクター
篠崎純也

著者プロフィル◎オーストラリア勅許会計士。2002年EYシドニー事務所入所。日系企業や現地の企業の豊富な監査・税務経験を経て、現在NSW州ジャパン・ビジネス・サービス代表として日系企業へのサービスを全般的にサポート。

457ビザ廃止による日系企業への影響

オーストラリア政府は2017年4月に一時居住ビザを抜本的に改正すると発表しました。これまで多くの日系企業の駐在員が利用してきた457ビザは廃止され、替わりに新しい就労ビザ(Temporary Skill Shortage Visa、以下「TSSビザ」)が18年3月から導入されます。今月号では段階的に導入される今回の改正を時系列にまとめ、日系企業への影響に焦点を当てて解説します。

457ビザ廃止の発表

ターンブル首相は17年4月18日、現行の457ビザを廃止し、替わりに新しいTSSビザを導入することを発表しました。段階的に457ビザは改正され、TSSビザに移行します。これにより、457ビザを悪用し低賃金の外国人労働者を利用している雇用者の取り締まりを強化すると共に、よりオーストラリア人の雇用を優先させる方針を明らかにしました。

この457ビザの改正は現地で活動する多くの日系企業に大きな影響を与えることになりました。適用日は改正発表翌日の4月19日からとなり、457ビザが取得できた約260の職種が対象リストから外された他、ビザの有効期限が最長2年と4年の2つのビザに分類され、CEOなどの経営幹部が取得できるビザの有効期限が原則2年に短縮されました。また、ビザを取得するための要件が厳格化され、7月1日から全ての申請者に対し英語テストが必須となり、無犯罪証明書の提出も義務化されるという内容でした。加えて職種によって「Caveats」と呼ばれる特定の発給条件が付き、小規模会社などは457ビザそのものの取得が不可能となりました。

457ビザをめぐる影響は、現地のメディアでも大きく取り上げられ、日系企業のみならず、海外から専門的なスキルや経験を持った人材を起用しているオーストラリアの大手企業やさまざまな団体、更に政府機関でも「今後、事業に必要な海外の人材の確保が難しくなる」との懸念が高まり、全豪日本商工会議所連合会を含む企業団体などは政府に対して457ビザ制度の見直しを強く訴えました。

2度目の改正発表

移民大臣は6月30日に翌日から有効となる457ビザに関する2度目の改正を発表しました。その中で日系企業にとって最も重要な変更点は、日豪EPA(経済連携協定)が優先されることにより、グループ会社間の派遣の場合、職種によってはビザの有効期限が原則2年でも4年間有効のビザが取得可能となり、また前回の改正で懸念されていたCaveatsがおおむね緩和されたことです。更に、これまで通りある一定の給与条件を満たせば英語テストの免除を引き続き受けられることになりました。今回の変更により、無犯罪証明書は引き続き必要とされるものの、多くの日系企業にとって結果的には4月の改正前の制度へ揺り戻しになるという朗報となりました。

現時点での最新ステータス

それでは、ここからは現時点における457ビザの最新ステータスの主なポイントを簡単に要約します。(17年9月時点)

457ビザは17年4月18日から有効期限が原則として最長2年の短期間の職業リスト(STSOL)と、最長4年の中期間の職業リスト(MLTSSL)の2つのカテゴリーに分かれました。更に18年3月からは457ビザがTSSビザに置き替わります。

・短期間の職業リスト(STSOL)
 この短期間の職業リストに含まれる職種は原則的に最長2年のビザとなります。オーストラリア国内における更新は1回のみに制限され、将来的に永住ビザを申請することは不可となります。

・中期間の職業リスト(MLTSSL)
 この中期間の職業リストに含まれる職種は4年のビザとなり、更新に当たって特に制限はなく、将来的に永住ビザを申請することが可能となります。

主な職種の滞在期間

職種 滞在期間
・Chief Executive Officer (CEO)
・Managing Director (MD)
・Corporate General Manager
4年。但し、基本給与が$180,001 以上という条件付き。国際協定※が該当するグループ会社間の派遣の場合は特に条件はない。
・Sales and Marketing Manager
・Corporate Service Manager
・Finance Manager
・Production Manager
原則的には2年。但し、国際協定※が該当するグループ会社間の派遣の場合は4年のビザを申請することが可能。

※国際協定とは、例えば日豪EPA(経済連携協定)を指します。同協定を利用した特例措置の対象者は経営幹部(Executive or Senior Manager)に限定される場合があります。

その他の要件

英語テストの免除

グループ会社間の派遣でなおかつ、基本給が9万6,400豪ドル以上の申請者は英語テストの免除を引き続き受けられます。

無犯罪証明書の提出

17年7月1日以降の申請より、全ての申請者に対して無犯罪証明書の提出が求められるようになりました。同証明書は申請者本人に加え16歳以上の扶養家族も対象となり、申請日からさかのぼり、過去10年間において12カ月以上滞在した全ての国から入手する必要があります。

今後の移民局の動き

17年12月:ATOと移民局とのデーター照合

移民局は17年12月1日からビザ保有者のタックス・ファイル・ナンバーを入手し、豪州国税局(以下、ATO)が保有する給与などのデーターとの照合を開始します。これによりATOに税務申告された金額とビザの申請手続きで申請した給与額との間に乖離(かいり)がないか、取り締まりを強化します。

17年12月:違反したスポンサー企業の公表

移民局は17年12月1日からスポンサー企業に求められるさまざまな義務を怠った企業を公表する予定です。

18年3月:457ビザが廃止され、新TSSビザに置き替わる

457ビザは来年3月に廃止され、TSSビザに置き換わります。TSSビザへの移行後も制度的には改正された457ビザと同様の規定がそのまま適用されると予想されます。

18年3月:スポンサー企業に対するレビーの導入

18年3月より、スポンサー企業に対して新しいレビーの負担が求められます。このレビーは、オーストラリアの現地社員の職場訓練を支援する「Skilling Australians Fund」という基金に当てられ、給与総額の1パーセントまたは2パーセントを社員研修費として支出する現行のトレーニング・ベンチマークに置き替わります。

今後の雇用者の対応

•日豪EPA特例によるビザ有効期限の延長
 ビザの有効期間が2年の職種のうち、日豪EPAによる特例を活用して4年のビザを取得できるものがあります。その特例を活用して4年間有効のビザを希望する場合は、申請時にその旨を移民局にリクエストする必要があります。(リクエストがないと通常通り2年のビザが発給される可能性があります)

•既に2年ビザが発給された場合
 17年4月18日~6月30日の間に発給された有効期間が2年のビザは、職種によっては7月1日の改正により再申請すると4年のビザが取得可能となっており、ビザの有効期限をすぐに延長したい場合は、日豪EPAによる特例などが該当するか確認し4年のビザをリクエストできます。

•無犯罪証明書の取得
 外国から無犯罪証明書を取得するのに数カ月掛かる場合がありますので、ビザの申請を控えている場合は前倒しで同手続きを行うことが賢明です。なお、ビザの申請時点では無犯罪証明書の提出は必ずしも必要なく、同証明書が取得できた時点で後日提出することが可能です。

移民局は今後、半年ごとに労働市場のニーズに合わせて職業リストやその他要件を見直すと公表しており、今後の動向が引き続き注目されます。

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コンタクト:

篠崎純也(財務諸表コンプライアンス・サービス)
Tel: (02)9248-5739
Email: junya.shinozaki@au.ey.com

 

トニー・ミン(シドニー)
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