フリンジ・ベネフィット税(FBT)申告を控えて

税務&会計 REVIEW

EYジャパン・ビジネス・サービス
雇用関連税務マネージャー
歐陽慶(Kei Ouyang)

プロフィル◎豪州公認会計士。NSW大学大学院卒業後、大手税理士法人に入社。その後豊富な駐在員税務と法人会計管理業務経験を経てEYシドニー事務所に入社。英語、中国語、日本語の3カ国語が堪能。

フリンジ・ベネフィット税(FBT)申告を控えて

雇用者の税務申告義務に関する企業の管理体制は、テクノロジーの進化によって転換しています。政府機関と税務当局もまた、テクノロジーを取り込む姿勢です。今年の7月よりオーストラリア国税庁(ATO)は、給与支払申告制度における世紀に一度の変革とも言える「Single Touch Payroll(*)」を導入、雇用主の給与支払データをかつてないほどリアル・タイムで捉えることができるようになりました。これにより、ATOはFBTを含む税務監査活動で実行するデータ・マッチング・プログラムから、格段に多くの情報を収集することが可能です。今月号では、「データ」をキーワードに、FBTの概要と役立つ情報をご提供します。
(*)Single Touch Payroll とは、2018年7月1日から従業員を20人以上を抱える雇用主が導入しなければならない新しい給与情報の電子申告制度を指します。

FBTとは?

FBTとは、現金以外のベネフィットや所定の現金手当を従業員またはその関係者に支給した場合に、雇用主に課せられる税金のことです。オーストラリアで採用されるFBTは、世界で最も骨太なFBT政策の1つであり、とても幅広いベネフィットの種類を網羅し、かつ間接的にベネフィットが支給された場合にも適用されます。代表的なものとしては次のようなものがあります。

  • ●車両と駐車場
  • ●特定の費用や現物ベネフィット(例:経費の立替精算や現物・サービスの支給)
  • ●貸付や返済免除(特に給料が誤って過払いされた場合に発生)
  • ●エンターテイメント(ゴルフや会食交際費を含む)
  • ●出向や駐在員手当(例:遠隔地勤務に関する各種諸手当)

FBTは、給与や賃金を支給する際に控除する源泉徴収税とは全く別であると留意することが重要です。

FBTの計算について

FBTが一見懲罰的な税金と思われるのは、しばしば実際支給したベネフィットの費用とほとんど同じ金額が課せられることからです。FBTの金額を算出する前に課税対象のベネフィット額に対してグロス・アップ率を掛けなければなりません。2018年FBT課税年度から適用されるFBT税率は下記の表の通りです。

数値 対象額
タイプ1グロス・アップ率
GST仕入税額控除が可の場合
2.0802 課税対象ベネフィット額(GST込)
タイプ2グロス・アップ率
GST仕入税額控除が不可の場合
1.8868 課税対象ベネフィット額
FBT税率 47% グロス・アップした課税対象額

数多くあるフリンジ・ベネフィットの種類の中には、FBT免除規定、優遇措置や評価法が数多く存在していることも事実です。FBT規定を深く理解していないと、税法の不遵守やFBTを過払いする結果になる可能性があることに十分注意する必要があります。

FBT申告における課題

前項で述べたようにFBT規定には数多くの免除規定、優遇措置や評価法があり、またフリンジ・ベネフィットの種類も多いため、全てを把握するのに一苦労します。また規定の内容は複雑で、多くの判断が求められます。代表的な3つの課題を以下に説明します。

少額ベネフィット免除の適用に当たって

少額ベネフィット免除はベネフィットの金額が1回当たり300ドル未満のもの、かつ支給がまれで不規則な場合に適用されますが、適切な判断をするのが難しい場合があります。例を挙げると、従業員が外でクライアントと1人当たり300ドル未満の昼会食に参加したとします。同従業員の食事代は少額であることから免除されるかもしれませんが、適用条件に「まれで不規則」があるため、同FBT年度においてこれ以外の昼会食に何回参加したかによって最終的に適格性が決まるので、単純そうで簡単ではありません。

データの取扱い及び記録の保管

他の税務と違い、FBT申告書を正確に作成するにはさまざまな情報源からデータを取り込む必要があり、もう1つの大きな課題となっています。申告書作成担当者は給与台帳を分析し、買掛金勘定記録や従業員の車両走行日誌、出向契約書と請求書明細といった外部記録を調査するだけでなく、従業員の宣誓書と雇用主の選択書を管理する必要もあります。もし必要書類が保管されていなければ、雇用主のFBT負債額が大きく増えることがあります。データ記録は必ず該当する取引が完了してから5年間は保管しなければなりません。

申告期限

雇用主は更に2カ月間という短い申告期限内で、これらの課題と直面しなければなりません。2018年FBT年度の申告書は同年5月21日までに提出し、FBT額を納付しなくてはなりません。タックス・エージェントが申告を代行する場合は通常同年5月28日までにFBT額を支払い、6月25日まで申告書提出の延長が認められます。

データの重要性について

データの質が今まで以上に重要なカギとなりました。うまくFBTデータを管理することによって、さまざまな課題を克服できます。

FBTの節税

分かりやすい例に会食交際費を挙げると、従業員に支給した年間会食交際費に掛かるベネフィットに対して、それぞれ支給した場所、人数と頻度などといった精確なデータを保管することで、雇用主は実額法を用いて同ベネフィットを評価することが可能となり、50/50分割法を使用した場合よりも望ましい結果になることがよくあります。

ATOによる監視

ATOが新たなデジタル時代へ進む中、データ管理は必要不可欠な存在となりました。ATOのデータ分析とデータ・マッチング能力により、当局は提出したFBT申告書内容をその他のデータと照らし合わせたり、他の雇用者とベンチ・マーキングをすることで異常値を発見することができ、税務調査へ発展することがあります。また「Single Touch Payroll」が本格的に導入されると、ATOはより大量なデータをリアル・タイムで収集できることから、この分野においての能力が急速に高まり、これらのテクノロジーに対し更なる開発と投資に力を入れると思われます。

FBTの税務管理において

FBTの税務手続きを的確に管理するために、幾つかの役立つポイントをご紹介します。

▶ソフトウェアの導入:FBTデータ管理に特化したソフトウェアの導入は、さまざまな判断に有益な報告書を作成してくれます。

▶チェックリストの作成と更新:FBT申告書作成に必要な情報源(給与台帳や買掛金勘定など)のチェック・リストの作成と更新を毎年することで、申告漏れなどのリスクを削減できます。

▶関連書類の保管:FBTの必要書類(免除規定適用の背景や宣誓書等)を保管することで、税務調査や人事交代があった場合のFBT申告書作成に支障なく対応できます。

▶業務の分散:四半期ごとなどで年間を通して定期的にデータ収集とレビューを行うことで、年度末のストレスを軽減でき、かつ潜在的な問題や節税計画を年度中に把握することに役立ちます。

▶タックス・エージェント:FBT申告書の作成またはレビューを代行してもらうことで、FBTに関する問題や節税機会特定、申告期限の延長が期待できます。


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