Temporary Skill Shortage(TSS)ビザ

税務&会計 REVIEW

Yジャパン・ビジネス・サービス・ディレクター
篠崎純也

プロフィル◎オーストラリア勅許会計士。2002年EYシドニー事務所入所。日系企業や現地の企業の豊富な監査・税務経験を経て、現在NSW州ジャパン・ビジネス・サービス代表として日系企業へのサービスを全般的にサポート。さまざまなチームと連携しサービスを提供すると共に、セミナーや広報活動なども幅広く行っている

Temporary Skill Shortage(TSS)ビザ

2018年3月18日に「Temporary Skill Shortage(TSS)」ビザが導入されました。これによって昨年4月から段階的に改正されてきたサブクラス457ビザが廃止され、今後は駐在員を派遣するための主な就労ビザはTSSビザに置き換わりました。今回の記事では、TSSビザの概要をご紹介します。

TSSビザの概要

TSSビザは従来のサブクラス457ビザと同じように①スポンサーシップ申請②ノミネーション申請③ビザの申請と3段階のステップで構成され、この3つのステップの審査を終了して、初めてビザを取得できます。

TSS ビザ
 TSSビザは短期就労ビザ、中期就労ビザ、レイバー・アグリーメント(Labour Agreement)の3種類で構成されます。

短期就労ビザ(Short term stream)
 原則2年間有効の短期就労ビザは、短期熟練職業リスト(STSOL)の職業が対象となります。オーストラリア国内で1回限りビザ更新申請が可能です。永住ビザの申請はできません。

中期就労ビザ(Medium term stream)
 原則4年間有効の中期就労ビザは、中長期戦略技能リスト(MLTSSL)の職業が対象となります。更新における制限はありません。また永住ビザ申請が可能です。

レイバー・アグリーメント
 オーストラリアの労働市場では必要な人材を充足できず、通常のビザでは対応できない場合はレイバー・アグリーメントという枠組みが設けられています。この場合、雇用主はオーストラリア政府と個別にアグリーメントの条件などを交渉し、ケース・バイ・ケースで認可されます。

職業リスト

改正後、ビザ申請可能な職業リストが大幅に見直され、オーストラリア労働市場で必要とされている職業スキルにリンクした、より対象を絞った職業リストとなりました。

短期熟練職業リスト(STSOL)
 オーストラリアの雇用主が必要とするスキルを持った人材を一時的に海外から派遣できる職業。例として「Corporate Services Manager」「Finance Manager」「Sales and Marketing Manager」「Facilities Manager」「Production Manager」などが挙げられます。

中長期戦略技能リスト(MLTSSL)
 より対象を絞った高度なスキルやニーズが非常に高い職業が含まれる職業リスト。例として「Chief Executive Officer / Managing Director」「Corporate General Manager」「Engineering Manager」などが挙げられます。

地方における職業リスト(Regional Occupations)
 地方に所在する雇用主向けの特定の職業が含まれます。有効期間が2年または4年のビザが取得できます。

上記の3つの職業リストは、その時の労働市場のニーズなどを考慮して政府によって定期的に見直され、特定の職業がリストから削除・追加されたり、リスト間の移動もあり得ます。

付帯条件の設定

今回の改正で新たに導入されたポイントとして付帯条件(Caveats)があります。付帯条件は特定の職業に対して、ビザ申請者の最低給与、スポンサー企業の事業規模などをより詳細に設定することにより、該当するビザ申請者やスポンサー企業を制限しています。例えば、日系企業でよく利用される「Chief Executive Officer / Managing Director」「Corporate General Manager」「Corporate Services Manage」には【表1】の付帯条件があります。

【表1】付帯条件

職業リスト 職業(職業コード) 付帯条件
MLTSSL
(4年有効のビザ)
Chief Executive Officer or Managing Director(ANZSCO111111) 年収18万1豪ドル以上または国際協定が該当するグループ企業間の派遣員
Corporate General Manager(ANZSCO111211)
STSOL
(2年有効のビザ)
Corporate Services Manager(ANZSCO132111) ●事業の売上が100万豪ドル未満でないこと
●従業員数が5人未満でないこと
●年収が8万豪ドル未満でないこと
ただし、国際協定が該当するグループ企業間の派遣員の場合は上記の要件が免除され、更に4年有効のビザ取得が可能

国際協定を重視

最初に改正された時点では、上記の付帯条件などの導入により要件が厳格化され大変厳しいものでしたが、その後の変更によりオーストラリアが締結している貿易協定が重視される形となりました。日本の企業においては日豪経済連携協定(EPA)により、グループ企業間の派遣員に対しては特定の職業において付帯条件に対する例外規定が設けられ、更にビザの有効期間が原則2年のSTSOLに含まれる職業でも4年のビザを取得できる場合があります。この規定の対象者は、日本の企業からオーストラリアの子会社・支店や関連会社に派遣されるエグゼクティブやシニア・マネージャー級の派遣員となります。

英語能力テスト

日豪EPAによりグループ企業間の派遣員の場合、基本給与が9万6,400豪ドル以上であれば英語テストが免除されます。免除の対象とならない場合は、STSOL(2年ビザ)ではIELTSテストの全体平均スコアが5.0以上で、更に各項目の最低スコアが4.5、MLTSSL(4年ビザ)では全体平均スコアが5.0以上で、各項目の最低スコアが5.0必要となります。

労働市場テスト

海外から人材を就労目的で派遣する場合は、原則的にオーストラリア国内の労働者によって充足できないことを証明するための求人広告を一定期間掲載するなど、労働市場テストを原則的に実施することが求められます。ただし、日豪EPAの規定により日本企業のグループ企業内異動の派遣員の場合はこのテストが免除されます。

無犯罪証明書

TSSビザを申請した時点からさかのぼって過去10年間において申請者が12カ月以上滞在した国からの無犯罪証明書の提出がTSSビザの要件に含まれます。同証明書は申請者本人に加え16歳以上の扶養家族も対象となります。なお、無犯罪証明書をビザの申請時点において入手できていない場合は一旦先にビザの申請を行い、同証明書を後日提出することも可能です。

トレーニング・レビー

これまで457ビザ制度でスポンサー企業に対する要件であったトレーニング・ベンチマークはトレーニング・レビーに置き換わりました。同レビーはノミネーションを申請した時点で支払い、申請するビザの有効期間の年数に応じて一括で支払うことが求められています。レビーの金額はスポンサー企業の売上げによって異なり、年間売上げが1,000万豪ドル未満の小規模企業は主申請人あたり年1,200豪ドル、それ以外の中・大企業は年1,800豪ドルとなります。なお、同記事執筆時点では、上記レビーが含まれる法案が議会を通過していないため、レビーはまだ導入されていません。

旧457ビザ保有の派遣員や企業への影響
  • ●TSSビザへ移行後も旧457ビザ保有者はビザの有効期限まで滞在することが可能です。ビザの更新の際はTSSビザの申請が必要となりますが、申請する職業が最新の職業リストに含まれていることが必要となります。
  • ●旧457ビザを保有する派遣員の社内におけるポジションが変わる場合は新しいTSSビザのノミネーション申請が必要となる場合があります。その場合は申請する職業が最新の職業リストに載っていることが求められます。
  • ●TSSビザ移行前に取得したスポンサーシップは、引き続き有効でTSSビザの申請が可能です。今後スポンサーシップを更新する際は、有効期限が一律5年となりトレーニングベンチマークの要件はなくなります(その代わりノミネーション申請時にトレーニング・レビーが発生します)。

認定スポンサーシップ

より多くの企業が対象となるよう認定スポンサーシップ(Accredited Sponsorship)の要件が緩和されました【表2】。認定スポンサーは、標準スポンサーシップと比較して下記のようなメリットがあります。

  • ●ノミネーション申請及びビザ申請における優先的な審査
  • ●オーストラリア以外の国からの無犯罪証明書の代わりに雇用者が申請者の人物証明を保証することも可能

【表2】認定スポンサーシップの主な要件

ビザ申請件数が少ない
スポンサー企業
ビザ申請件数が多い
スポンサー企業
過去2年の年間売上げ 400万豪ドル以上 同左
全従業員のうちオーストラリア市民権及び永住権保持者が占める割合 最低85% 最低75%
過去2年間におけるノミネーション申請の承認実績 最低1件 最低10件

*本記事は、4月13日時点での情報となります。ご了承ください。


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