第15回不正行為グローバル・サーベイについて

税務&会計 REVIEW

EYパートナー/ジャパン・ビジネス・サービス
オセアニア/アジア太平洋地域統括
菊井隆正

プロフィル◎アジア・パシフィック及びオセアニア地域日系企業担当部門代表。常に監査、会計、税務から投資まで広範囲にわたる最新情報を提供することで、オセアニアで活躍する日系企業に貢献できるよう努めている。

第15回不正行為グローバル・サーベイについて

EYのFIDS(Fraud Investigations & Dispute Services、不正対策・係争サポート)サービスは、2年に1回不正行為に関する調査をグローバルで行っています。第15回目となる今回のレポートでは、技術的発展が著しい今日、組織が不正や汚職防止に取り組む上で直面するリスクや課題、そして企業がいかにこうしたリスクに取り組んでいるかについて紹介しています。以下、不正行為グローバル・サーベイの主要調査結果について説明します。

私たちは2017年10月から18年2月にかけて、55カ国・地域の経営幹部2,550人を対象にインタビューを実施しました。オーストラリアから40人、ニュージランドから10人、計50人の回答者を含む今回のインタビューでは、不正行為や汚職がビジネスからなくなっていないことが示されました。私たちは、経営陣が取り組んでいる現行の不正防止対策や政府の取締強化が不正行為や汚職を撲滅するのに十分に有効かどうかを見極めるため、これらの調査結果を活用しました。

不正行為や汚職は減っていない

統計1
統計1

この2年間で、状況がある程度改善した国も一部あるものの、世界的には不正や汚職は減少していないことが同調査で確認されました。不正や汚職がより広く蔓延しているのは新興国市場であることに変わりはありませんが、「汚職がはびこっている」との回答は先進国市場でも、少数とはいえ看過できない数に上りました(統計1)。

「財務目標の達成や不況克服のためなら、不正や汚職もやむを得ない」と考える傾向が強いのは、回答者の中でも若年層に多く見られました。個人と企業に対して好業績を求める圧力が高まる中、不正や汚職の問題が絶えることはなさそうです。

オセアニアの動向

オーストラリアとニュージランドの不正行為の動向はどうでしょうか。回答者が「汚職が蔓延している」と答えた14年の数値から18年の数値を差し引いて算出した回答者比率の変化を見ると、オーストラリア・ニュージーランドで30ポイント上昇(2018:38%)、ブラジルが26ポイント上昇(同96%)、サウジアラビアが20ポイント上昇(同46%)、イギリスが16ポイント上昇(同34%)といずれも、「汚職が蔓延している」と考える回答者の割合が増えました。これらの国々では、17年にかなりの取締活動が実施されたことは注目に値します。

一方、中国が8ポイント(同16%)、チェコが13ポイント(同56%)、ルーマニアが12ポイント(同34%)、アメリカでは4ポイント(同18%)、「汚職が蔓延している」との回答者比率が減少しました。こうした国々では、取締当局が14年以前から積極的に活動していました。では、取締活動の結果、コンプライアンス・プログラムや企業文化が本質的に変化したのでしょうか。それとも、単に取締が減ったために汚職に対する意識が低下したのでしょうか。

取締の影響

組織はビジネスのやり方を変えるために次第にデジタル技術を活用するようになっており、それに伴い、不正行為や汚職などのリスクにさらされることが多くなっています。技術が目まぐるしく進化する今日、米国司法省や米国証券取引委員会(SEC)、英国重大不正捜査局(Serious Fraud Office)といった機関や、ブラジル、オランダ、フランスなどの国々の検察は不正行為の取り締まりを強化し続けています。

この2年間で政府が科した罰金は異例の水準に達しており、特にブラジル、オランダ、イギリス、スイスなどで科された制裁金は大幅に増加しています。世界各国の政府による反汚職法を制定・施行する動きが続いていますが、世界規模で行った同調査では、不正や汚職が14年以降も減っていないという結果が出ています。経験から言えば、法律が施行されてから各組織が実際に是正を施すまでにタイム・ラグが生じることは珍しくありません。

企業の対策とその現実

「反汚職方針や内部通報ホットライン、倫理規程が経営陣によって導入された」と答えた回答者は半数を超えていますが、非倫理的行為や企業不祥事が、それに呼応して減っているわけではありません。企業は、誠実性の観点から企業文化や内部統制、ガバナンスを評価すると共に、データ分析の知見を最新技術に活用し、プログラムの有効性の改善に向けて注力しなければなりません(統計2)。

法律違反に伴う代償がますます大きくなる中、誠実に行動すれば、顧客や一般市民の印象が良くなり、好調な業績を上げられるなどのメリットが得られると、同調査の回答者は認識しています。では、非倫理的行為が今も絶えないのはなぜでしょうか? 理由の1つとして、組織の中で誠実性に関して責任を負っているのが誰なのかが明確でないことが挙げられます。「基本的に個人の責任である」との回答は、4人に1人にも達していません。企業は、従業員と第三者に対して誠実性に関する彼らの責任について明確な期待値を設定する必要があります(統計3)。

統計2
統計2
統計3
統計3

コンプライアンスの将来像

予測分析やリアル・タイムのリスク・アラートなど、コンプライアンスに関わるデジタル・ツールを導入することによりフォレンジック・データ・アナリティクス(FDA)でモニタリング・レポーティングの有効性と効率性を大幅に改善し、第2のディフェンス・ラインを強化できるようになりました。

コンプライアンス部門には、第1のディフェンス・ラインで果たすべき役割があります。コンプライアンスの専門家がビジネスの運営や戦略といった場面で自ら進んで知見を提供し誠実な企業文化を育むことが重要となります。

最後に

本レポートの狙いは、取締役会に対して厳しい問い掛けを行うことです。不正行為や汚職、誠実性について、より幅広く、有意義な議論を活性化させるものになることを願います。

ウェブサイト(ey.com/fraudsurveys/global)には、主な質問事項に対する回答について、更に多くの国別や、業種別に詳しく紹介しています。ぜひご参照ください。

※この記事は出版時の時点で適用される一般的な情報を掲載しており、アドバイスを目的としたものではありません。


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コンタクト

菊井隆正(ナショナル)
(02)9248-5986
Email: takamasa.kikui@au.ey.com

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