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税務&会計 REVIEW
アーンスト・アンド・ヤング パートナー/日系ビジネス・サービス・ナショナル・ディレクター:菊井 隆正
2008:キャッシュが王者だった年
鉱山・金属セクターにおける合併、吸収、資金調達
2008年を要約するには、世界的な金融危機とそれに端を発した経済不況の影響から始める必要があります。
08年上半期
2008年上半期、楽観論が業績好調な鉱山・金属業を占めていましたが、年末に向けて失望感が広がっていきました。08年7月、世界的な景気減速が現実となり、鉱山・金属業も例外ではないこと、全セクターが深刻な打撃を受けるだろうという認識が高まりました。
08年上半期、金属価格は、限られた供給と好調な需要によって堅調に上昇を続けました。アジアと南アメリカの急速に工業化している国々を中心とした需要の伸びは、鉱山・金属業界が対応しきれないほど急激なものでした。そして、7月以降、大規模なレバレッジ解消が明らかになりました。突然、米ドルはそれまでのドル安基調からドル高になり、世界、特にブラジル、ロシア、インドの成長が著しく減速、金属価格の下落が加速しました。
08年下半期
08年第3四半期の鉱山・金属価格の暴落は、致命的な特質を持っていました。それは、不意であり、突然であり、急速であり、深刻なものでした。中国経済は、先進国の経済問題の影響を受けないだろうという考えはわずか数日のうちに信用を失い、消滅しました。
08年の第4四半期は産出量の削減、新規プロジェクトの延期、コスト削減、設備投資計画の見直し、人員削減、探査および開発の大幅な削減についての発表が目白押しとなりました。
キャッシュを持つ者と持たざる者 鉱山・金属業界は、(キャッシュを)持つ者と持たざるものに二極化しました。強気市場の時に資金を借入れて合併・吸収を行った鉱山・金属会社の中には、商品価格の下落という重圧に沈みながら、いかに借金返済の潮に流されないようにするかを苦慮している会社もあります。
M&A
08年鉱山取引総数は、07年の903件から2%増加し919件でした。08年総取引額は、07年の2,110億ドルから40%下落し、1,270億ドルでした。これらの数字上には、08年上半期と下半期の対照的な結果が現れていません。
08年は、計画あるいはもくろまれていた多くの取引が信用収縮とそれに伴う金属価格崩壊によって、遅延、打撃、または解消された年でもありました。最も注目を浴びた惨事は、BHP BillitonによるRio Tintoの買収計画でした。
M&Aの主要傾向:
▼依然として取引の中心を占めたクロスボーダー取引高は、国内取引高580億ドルに対し690億ドル
▼供給、エネルギー、輸送の確保と、コスト制御をねらった垂直統合
▼政府系ファンド(SWF)や国有企業のさらなる関与 新規株式公開(IPO)
08年、特に下半期の異常な市場状況により、鉱山・金属会社のIPOは大幅に減少しました。株式市場の極端な変動、また年末にかけての鉱山会社株の評価が驚くほど低かったことから、エクイティ・ファイナンスが事実上、不可能となりました。
鉱山・金属セクターの中で最も悪影響を受けたのは、探査と初期段階の開発会社でした。市場が破綻する前に十分なキャッシュを調達できなかった会社は、何らかの形で、財政的に非常に困難な状況に直面しました。
08年、鉱山会社によるIPOトップ10によって調達された資金は、全体の93%を占めました。
債券
08年、140の債券発行で381億ドルの新たな資金調達がされました。平均発行価格は2億6,870万ドル。最大の投資家にとっても魅力的な社債市場となりました。しかしながら、鉱山・金属業界のほかの資金調達源と同様、08年下半期、社債の需要も急速に減少しました。08年末までに、債券発行を保証していたモノライン保険会社問題が主な理由となり、債券市場は事実上閉鎖されました。
57の債権発行者のうち、16は中国を拠点とし、それらは総額67億ドル、54の債権を発行し、市場をリードしました。
借入
意外にも08年、鉱山・金属セクターへの融資は、件数および額ともに、07年と比較して増加しました。融資件数は、07年の83件から08年の268件に増加、融資額も1,107億ドルから1,717億ドルに増加しました。平均融資額は、07年の13億ドルから08年の6億4,100万ドルに減少し、買収とプロジェクトの規模がともに縮小したことを反映しています。
オーストラリアは総額564億ドルを超える、5件の資金調達により、鉱山・金属の融資市場の中心となりました。このうち550億ドルは、Rio Tintoの買収計画(後に断念)を見越したBHP Billitonが手配しました(しかし、実際の引き出しはなし)。
プロジェクト・ファイナンス(PF)
08年、鉱山・金属セクターのPFは比較的堅調でした。2008年、年初における多数の大型プロジェクトに支えられて、融資額は07年の64億ドルから77億ドルに増加しました。
件数は17件から16件へと減少しており、このうち7件は借り換えによるものでした。08年の年末には、PFは事実上停止しました。
PFの取引の中には、企業向け融資と似通ったものもありました。これは、PF役割がより伝統的なもの、すなわちリスク評価と融資保証という役割へ移行していることを反映しました。
今後の見通し
鉱山・金属セクターでは来年、「繁栄と存続」の心理的傾向が現れるでしょう。
このセクターの回復は必至で、タイミングの問題です。不況下にあって適切な準備をした会社には、機会が訪れるでしょう。
09年、大型取引は依然低調である一方、ニッチ取引は増加すると予想されます。キャッシュに富んだ中堅企業が、20億から100億ドル規模の比較的小規模な取引を数多く行うでしょう。またプライベート・エクイティや専門投資家へ資産を売却することで業務の合理化に重点的に取り組む可能性が高いと思われます。また、スペシャリスト・ファンドがこのセクターに再度焦点を置くことが予想されます。
このセクターにおける長期のファンダメンタルズは、依然良好です。供給の安定確保に目を向けている政府系ファンド(SWF)や長期投資家は鉱山・金属業への関心を高めています。09年は、先進国の比較的割安な資産に偏向すると思われます。埋蔵量長期確保のため、比較的規模が大きく成功している探査会社の中には買収されるところもあるでしょう。
09年の終わりに近くなって、一連の破産企業に加え、融資義務を果たすために身売りせざるを得ない会社によって、取引基盤が強化されるでしょう。全体的に資金調達が容易になり、取引は活性化するでしょう。結果、信用取引や現金取引の回復、そして買い手と売り手の評価のずれが解消した段階でのキャッシュに富んだ会社による、資産の便乗買い、2、3の大きな取引が財布の紐をゆるめ、取引が順調に行われるようになっていくでしょう。今後の取引は、潜在的可能性への投資というよりは、原資産への直接的投資となるかもしれません。
市場が初期段階の探索会社を事実上締め出したことから、今後のIPO市場は、若手の鉱山会社にとって難しいものとなるでしょう。しかしながらIPOの潜在的な基盤はしっかりしているようで、時が来れば、非中核的な資産のディスインベストメントのため将来的にIPOする可能性があります。このことからIPOは依然として、多くの会社にとって中期的戦略であり、IPOまでの時間的余裕を持たせることで、変革に十分に備えることが可能になります。
短・中期的には、会社が資金調達することは難しく、引き続き債券市場では質への逃避が見られるでしょう。 資金調達が困難なこと、財務コストの全体的増加、コモディティ価格適正化によって、鉱山・金属会社は代替的な資金提供基盤を探す、あるいはプロジェクトのリスクをどうにか分散する必要があります。
2つの出来事がセンチメントの変化を示すと考えます。1つ目は、高コストの鉱山が閉鎖あるいは一時停止され、設備投資の延期が効果を発揮し始めるにつれ、在庫が急激に減少します。底入れしているコモディティ価格、相次ぐ生産カット、中断された拡大計画が供給を犠牲者としています。2つ目は、インフラ刺激策の詳細が明らかになってくることです。計画されているインフラの正確な内容が分かれば、アナリストは金属需要の行方をよりはっきりと判断することができるようになります。平均してインフラは景気刺激策の30%から40%を占めています。これにより、金属価格が急上昇し、取引価格も追随することで需要と供給の不均衡を新たに引き起こすかもしれません。
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