駐在員の個人所得税申告について

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アーンスト・アンド・ヤング ディレクター
/ジャパン・ビジネス・サービス 裕子カーンズ

 

駐在員の個人所得税申告について

日本を含め外国からの駐在員がオーストラリアでの就業に対し所得を得ると、通常オーストラリアにおいて、個人所得税申告の義務が発生します。今回は、駐在員の方の個人所得税申告について、概要を説明します。

 

必要書類と申告時期 

オーストラリアで個人所得税を申告する際に必要な書類は、駐在員用に特別なものがあるわけではありません。また申告時期も、タックス・エージェントを通さない場合、一般と同じく10月31日までとなります。

 


オーストラリアで課税の対象になる所得


 

給与所得

オーストラリアでの就業に対して支給された給与およびボーナスが、オーストラリアでの課税の対象となります。支給される場所は関係なく、海外の親会社が本国で支給した給与・ボーナスでもオーストラリアでの就業に対して支給されていれば、オーストラリアで課税の対象になります。ボーナスは、支給計算期間がオーストラリアでの就業と無関係であれば、支給された際に、オーストラリアに滞在していても、課税の対象にはなりません。反対に、オーストラリアの就業期間を対象に支給されたボーナスが駐在終了後に本国で支給された場合は、オーストラリアでの課税の対象となる場合もありますので、注意が必要です。

オーストラリアの会社から支給された給与・ボーナスに関しては、雇用者が源泉徴収票(PAYG Payment Summary)を発行しますが、海外で支給された給与・ボーナスが源泉徴収票に含まれていない場合は、それを豪ドル建てにした上で、申告書の提出をしなければなりません。

 

投資所得

駐在員のような一時居住者には税法上の優遇があり、オーストラリアを源泉とする投資所得だけがオーストラリアでの課税の対象となります。例えば、オーストラリアの銀行口座の金利所得や不動産収入、またオーストラリアの会社やマネージド・ファンドからの配当金などが課税の対象となり、日本の銀行口座からの金利所得は、オーストラリアでの課税の対象になりません。

またキャピタル・ゲインは、非居住者と同じ扱いになりますので、オーストラリアで課税の対象にならない資産(海外資産すべておよびオーストラリアにある不動産を直接および間接的に保有しない会社やファンドに対する投資など)からのキャピタル・ゲインは、オーストラリアで申告する必要はありません。ただし、報酬の一部として支給された自社ストック・オプションからの所得は、一部この優遇枠に入らない場合があるので、注意が必要です。

一時居住者の優遇税制の適用を受けるには、本人または配偶者が、オーストラリアで社会保障上での居住者ではないこと、移民法(Migration Act 1958)により発行されたテンポラリー・ビザを保持していること、などの条件を満たすことが必要です。

 


日豪租税条約


日豪租税条約の適用により、ある一定の条件を満たしている場合、日本の駐在員がオーストラリアで得た所得は、オーストラリアでの課税を免除されます。租税条約の適用を検討される場合は、専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

 


メディケア・レビー免除証明の申請


駐在員の方は、通常メディケア(医療保険)の対象外になりますので、ある一定の条件を満たす場合、メディケア・レビー免除申請を行える場合があります。ただし、オーストラリアのパーマネント・ビザ保持者または当ビザを申請中の人はメデイケア・レビーの免除を受けることは不可です。

メディケア・レビーの免除を受ける資格を持っている人は、「Medicare Levy Exemption Certification」申請書およびパスポートのコピーを毎年用意し、メディケアに免除申請を行います。パスポートのコピーは公証人(Justice of Peace)、またはこれと同等の人による認証が必要です。免除証明は税務申告書と一緒に提出する必要はありませんが、毎年申請を行う必要があります。次に、所得税申告書の準備以外の税務上のポイントを説明します。

 


所得税対象のグロス額と給与源泉税(PAYGW)の計算


駐在員の方で、給与支給額補償(ネット補償)の場合は、フリンジ・ベネフィット税(FBT)の中の免除項目である、遠隔地勤務手当(Living Away From Home Allowance、LAFHA)を有効的に支給することで、会社のコストを削減することができます。

LAFHAは、自宅(本国)から離れて遠隔地(駐在地)での生活を強いられるために生じる追加的な費用や損失を補償するべく、駐在者に支払われる現金手当です。LAFHAはさまざまな名目からなりますが、多くは、食費手当分(food component)と住宅手当分 (accommodation component)から成っています。手当に該当しますが、受け取った駐在者には何ら課税がされません。他方、雇用者が支払義務を負うFBTでは、LAFHAが合理的な水準であれば、優遇課税対象となります。したがって、ネット額をグロス・アップして、所得税課税対象のグロス額を計算する上で、このLAFHAを支給ネットの一部として支給すると、計算上所得税対象グロス額を低くすることが可能になります。

LAFHAの合理的な水準は、毎年3月下旬にATOよりガイドラインが発表されるため、毎年4月から、PAYGWの額を変更しなければなりません。また家族構成の変化でもLAFHAの水準が変わるので、注意が必要です。

また、LAFHAの優遇措置は短期滞在ビザで就労しているすべての駐在員に自動的に提供される訳ではなく、各個人の置かれている事実関係や状況を十分に検討する必要があるのでご注意ください。ATOは最近雇用者の提供しているLAFHAの税務調査を行っており、滞在期間が4年超の駐在員についてはLAFHA優遇措置の受領資格について個別通達を入手するなど慎重に対応されることをお勧めします。

 


日本の厚生年金とオーストラリアのスーパーアニュエーション


日本とオーストラリアの間には、社会保障協定がありますので、オーストラリアに滞在する駐在員が日本の厚生年金に加入し続けるのであれば、最初の5年間はオーストラリアでのスーパーアニュエーションに加入する必要はありません。したがって、年金積立費用の二重払いを回避できます。

ただし、457ビザで入国されている上級管理職レベルの方は上記の社会保障協定にかかわらずオーストラリアでの年金加入を免除されています。

上記のように駐在員の個人所得税申告は複雑なため、その申告書作成に関しては、専門家にご相談されることをお勧めします。また雇用に際してはさまざまな税務上の義務が生じることから、雇用者としては節税効果の高い給与プラン、雇用計画を立てるための総合的な検討を行うことが重要です。


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