鉱物資源利用税導入に向けて

税務&会計Review

税務&会計 REVIEW

アーンスト・アンド・ヤング ディレクター
/ジャパン・ビジネス・サービス 裕子カーンズ

鉱物資源利用税導入に向けて

2012年3月29日に勅ちょっきょ許を受け成立した鉱物資源利用税(Minerals Resources Rent Tax=MRRT)の導入予定日が2012年7月1日と目前に迫っています。鉄鉱石、または石炭のプロジェクト権益を持つ企業は新税制の影響を受ける納税者として現在注意を向けなければならない決定事項が多くあります。今月号ではMRRT制度の概要とともにMRRT導入に関わる今後の主要期日、および納税者として対応が必要な決定事項についてご紹介いたします。

 


MRRT制度概要


鉄鉱石および石炭プロジェクトのうちMRRT利益が年間7,500万ドルを超えるものについて納税義務が発生します。低利益プロジェクトに対する課税免除額(Low profits offset)は年間の利益が7,500万ドルから1億2,500万ドルまで増加するにつれ段階的に減額されます。

MRRTは鉱業活動のうち、上流の資源採掘活動から得られる利益に課税しようとするものであり、この上流活動と下流活動が分かれるポイントを課税ポイントとします。MRRT課税年度はすべての対象納税者について2012年7月1日に始まります。法人税申告について6月30日終了年度以外の代替課税年度を採用している納税者は、MRRT申告についても同様の代替課税年度を採用することになります。


MRRT 対応に関する主要日程


MRRT導入に向けて以下の期日および決定事項が重要となります。

2012年7月1日

MRRT課税年度開始日。この日までに、納税者は各プロジェクトについて、(1)MRRTがどのように課税されるかを理解し、(2)開始ベースやMRRTモデルなどの計算やレビューを行い、(3)MRRT申告・納税に関わる情報をタイムリーに収集するための社内プロセスを確立し、(4)MRRTコンプライアンスが正確かつ確実に実行されるよう担当者、承認者、報告プロセスなど、ガバナンスの観点から確認することが必要となります。

2012年7月21日

鉄鉱石および石炭プロジェクトの探査権、または生産権益を10年5月1日〜12年6月30日に売買している場合には、この日までに売り手から買い手にプロジェクト譲渡に関わる通知の提出が必要となります。

2012年10月21日

MRRTの1回目予定納税期日。石炭プロジェクトは3%、鉄鉱石プロジェクトは8%の規定値予定納税率(Instalment rate)が適用されますが、MRRT計算に基づいて実際の課税額が予定納税率で計算される額よりも低いことが予想される場合には、納税期日前に税務当局に通知することにより納税率を変更することが可能です。MRRTモデルを用いて将来のMRRT課税額を正確に見積もることが重要となります。 MRRT予定納税は四半期ごとに行われ、最終納税は年度終了後6カ月目の1日までに行うことになります。

2013年6月1日

12月決算の納税者の場合、初年度の申告書および開始ベース申告書の提出期日は13年6月1日となりますが、初年度の申告書提出期日については税務当局により期日延長が認められる可能性もあります。小規模事業者の場合、簡易MRRT制度を採用するか否かの決定は、申告書提出期日までに行う必要があります。3月決算納税者の場合の期日は13年9月1日、6月決算納税者の場合は13年12月1日となります。


小規模鉱山事業者


ニュース/コミュニティー

MRRT制度への対応は小規模鉱山事業者にとって不合理なコンプライアンス負担となる可能性があります。小規模鉱山事業者はコンプライアンス・コストを最小限化するために各種優遇措置の利用を検討するとともに、優遇措置を採用することによるデメリットも理解することが必要となります。

【簡易MRRT制度】

一定の調整を加えたEBITが7,500万ドルに満たない(またはロイヤルティーが収益の25%以上ある納税者の場合、2億5,000万ドル)は簡易MRRT制度採用の通知を行うことにより、すべての納税および申告義務が免除されます。ただし、簡易MRRT制度を採用したプロジェクトは、開始ベースを含むすべての控除額を失うことになりこの影響を理解する必要があります。翌年度以降簡易MRRT制度の要件を満たさない、または適用を選択しない場合には、通常の申告義務に関わる規定が適用されます。

【MRRT納税額の減額】

グループ全体のMRRT利益が7,500万ドル以下の納税者には低利益プロジェクトに対する課税免除が適用され、7,500万ドルを超えると、1億2, 500万ドルまで当該免除額は段階的に減少します。ただし、課税免除による納税額の減額以外のほかの申告義務は免除となりません。

【開始ベース】

開始ベースを帳簿価格に基づいて計算することにより時価評価に関するコストを削減することが可能です。ただし、時価が簿価よりも高い場合、開始ベースをその分失うことになるため、その影響を理解することが必要となります。



ノン・オペレーター


ジョイント・ベンチャーにおいてオペレーターではない納税者にとっては、ジョイント・ベンチャーのオペレーターから適切な情報をタイムリーに受け取ること、そして社内でMRRT申告に携わる人材の確保などが今後の課題となります。 対応策として、ジョイント・ベンチャー契約規定の確認、開始ベースに関わる時価および時価評価に使用された各種前提条件の共有の確認、そのほかMRRT計算に必要となるプロジェクトの情報提供などについてオペレーターと話し合うことが重要となります。

特に複数のジョイント・ベンチャー・パートナーを有するノン・オペレーターの場合、採用する各種前提条件がプロジェクト間および社内の減損モデルなどで用いる前提条件と一貫性があること、または相違がある場合にはその理由が合理的に説明可能であること、などにも注意を要します。

 


最後に


新税制導入に関わる税務および財務上の報告義務を理解し、社内のプロセスやシステムが必要な情報を適切に入手できるようにすることが、今後のMRRTコンプライアンスをスムーズに行うためには重要となります。7月1日以前に確認および対応しなければならない事項も多くあり、早めの対応をお勧めいたします。

※この記事は出版時の時点で適用される一般的な情報を掲載しており、アドバイスを目的としたものではありません。この情報を基に行動をされる際には、専門家のアドバイスを受けることをお勧めいたします。


コンタクト:

菊井隆正 (ナショナル)
Tel: (02)9248-5986
Email: takamasa.kikui@au.ey.com

裕子カーンズ(シドニー)
Tel: (02)9248-5518
Email: yuko.kearns@au.ey.com

岩崎知美(メルボルン)
Tel: (03)9288-8907
Email: tomomi.iwasaki@au.ey.com

荒川尚子(ブリスベン)
Tel: (07)3011-3189
Email: shoko.arakawa@au.ey.com

渡辺登二(パース)
Tel: (08)9217-1263
Email: toni.watanabe@au.ey.com

新着記事

新着記事をもっと見る

NICHIGO CHANNEL

新着イベント情報

新着イベントをもっと見る