外国支配企業についての最新情報:財務報告要件

税務&会計Review

 

税務&会計 REVIEW

アーンスト・アンド・ヤング ディレクター
ジャパン・ビジネス・サービス
篠崎純也

著者プロフィル◎オーストラリア勅許会計士。2002年EYシドニー事務所入所。日系企業や現地の企業の豊富な監査・税務経験を経て、現在NSW州ジャパン・ビジネス・サービス代表として日系企業へのサービスを全般的にサポート。
外国支配企業についての最新情報:財務報告要件

オーストラリア証券投資委員会(Australian Securities and Investment Commission、ASIC)は、外国企業と外国の支配を受ける大規模および小規模非公開企業の財務報告の監視を目的とした法令順守プログラムの開始を予定しています。国内外の規制当局は、財務情報の適切な開示と透明性にますます注目していますので、日系企業の現地法人のようなオーストラリアで事業を展開する外国支配企業、特にオーストラリアに複数の参入形態・拠点を持つ企業は、法令上の義務を十分に果たすことが重要です。今月号では、外国支配企業についての最新情報を中心に解説します。

オーストラリアの外国支配非公開企業に対する報告要件

2001年(連邦)会社法(Corporations Act 2001)は、国内支配の会社と直接または間接的に外国支配となる会社に対し、それぞれ異なる処置を設けていることを認識することがまず重要です。同法令により、外国支配企業はASICに監査済財務諸表を提出することが義務付けられています。

ただし、ASIC当局のクラス・オーダー(Class Order、CO)と呼ばれる報告要件に対する特定の軽減措置を設けた規定も多数あり、個々のクラス・オーダーの要件が適切に適用され、順守されていることが重要です。以下、日系企業に影響する主なクラス・オーダーをいくつか解説します。

ASIC クラス・オーダー「CO 98/98」

CO 98/98では、外国企業が支配する小規模非公開企業(Foreign owned small proprietary company)に対し、監査済財務諸表および取締役報告書の作成・提出義務に関して免除措置を与えています。

非公開企業は、次の基準のうち2つ以上に該当する場合に小規模とみなされます。

 

● 会社およびその支配下にある事業体の当該事業年度における連結売上高が、2,500万豪ドル未満
● 会社およびその支配下にある事業体の連結総資産が、当該事業年度末において1,250万豪ドル未満
● 会社およびその支配下にある事業体の従業員が、当該事業年度末において50人未満

オーストラリアに会社が1社または1つの連結グループしか存在しない場合は、上記を確認することは容易ですが、会計上連結されてないオーストラリアの子会社が複数ある場合などは注意が必要です。なぜならば、共通の外国の親会社*を有する企業群はオーストラリア国内で会計上連結されていない場合でも、同一グループの企業と扱われ、連結ベースで上記の要件を照らし合わせて判断する必要があるからです。また、オーストラリア企業傘下の外国の連結子会社も、同グループに含めて判断する必要があります。

 

*注:外国の親会社には、オーストラリア企業を直接支配する外国企業(Immediate foreign parent)および間接的にオーストラリア企業を支配する外国企業(Ultimate foreign parent)が含まれる。

「グループ」全体が上記基準を満たさない場合には、「大規模グループ」とみなされ、CO 98/98の免除措置を受けることはできません。当該グループに含まれるすべての会社は、原則的に監査済財務諸表をASICに提出することが求められます(ただし以下のクラス・オーダーに該当する場合は、当該軽減措置を受けられる可能性もあります)。

ASICクラス・オーダー「CO 98/1417」

外国企業の支配を受ける小規模の非公開企業で「大規模グループ」の一部である場合でも、CO98/1417により会計監査の免除を受けることが可能です(ただし未監査の財務諸表の提出は求められます)。

当該クラス・オーダーの規定はかなり複雑で、取締役や株主の決議、債務や収益性などに関する条件を満たす必要があります。

ASICクラス・オーダー「CO 98/1418」

大規模グループ内に100%の子会社が含まれる場合、CO98/1418により当該子会社の監査または財務諸表提出の免除を受けることが可能です(ただし、親会社による監査済連結財務諸表のみ提出が求められます)。

この際当該グループは、グループ企業間で相互保証(Deed of Cross Guarantee)を締結し、この証書を適切な時期にASICに提出することが求められます。

登録外国企業(またはオーストラリア国内の支店)のための報告要件

登録外国企業は、CO 02/1432の諸規定に依拠する場合を除き、ASICへの財務諸表の提出が義務付けられています。このクラス・オーダーは、企業が「大規模」または「大規模グループ」の一部分である場合、あるいは、企業が本国の当局管轄において財務諸表提出義務がある場合には該当しないため、当該緩和措置の適用は幾分限定的と言えます。

支店の場合、提出する財務情報は支店の事業のみのものである必要はなく、本社所在地で申告した外国企業の財務報告書で通常は十分です(財務情報は英語表記が求められます)。ただし、ASICが受領した財務情報では十分でないと判断した場合、特定な形式での財務情報の提出が求められることもあります。

ASICの監視活動

ASICは、非公開企業がこれまで提出した財務諸表のレビューを実施し、いくつかの指摘事項を公表しています。クラス・オーダーの適用に関する指摘事項には、CO98/1417で求められる財務上やそのほかの要件を満たしてないにもかかわらず、同クラス・オーダーの免除措置を誤って適用している企業が複数あったことが含まれます。

また、CO 98/98の免除措置を利用した企業の中で、同クラス・オーダーの申請時期の要件を満たしていないケースも多かったことが指摘されています。こうした例では、会社は、ある時点(年度)でたとえ要件を満たしていたとしても、申請は遡及的に有効にはなりませんので、同免除措置を受けることはできません。また、同クラス・オーダーの利用には取締役の責任も問われるため、このような点も十分管理する必要があります。

ASICは、法令順守プログラムを通してこれらの問題を引き続き監視し、必要に応じて企業に対して法令順守を促すための通知を行うことを公表しています。これにより企業は当初の違反までさかのぼって、過年度の監査済財務諸表の提出を求められる可能性があります。

またASICは、裁判所から民事命令を求めたり、法令違反があった場合に、英連邦控訴局長官(Commonwealth Director of Prosecutions)に対し訴訟のための証拠・報告を照会したりする権限を有しています。

ASICより指摘を受けた場合、過年度の財務報告書の作成・監査や申告遅延でかかる費用・課徴金の発生のみならず、個々の取締役の責任が問われたり会社の評判にも影響を与える可能性があるため、クラス・オーダーの適用要件をきちんと把握することは、オーストラリアで適正な事業運営を確保する上で重要な点であると言えます。

最後に、オーストラリアの財務報告義務を確実に果たすにあたり、以下の点を検討することをお勧めします。

 

1. 財務報告を適切に行うため、企業または企業グループが、しかるべき会計基準に沿って資産および売上高の総合的な評価を実行しているかを見直す。
2. 利用している軽減措置の適切性が確保されており、その要件を継続的に順守し、また継続的なコンプライアンスを確保するためのプロセスが存在するかをレビューする。
3. 財務報告義務に関する軽減措置を現在、受けていない企業の場合、利用可能な免除措置の恩恵を適切に受けられるよう検討する。
4. グループ企業の場合、財務報告の効率化に向けた報告体系の見直しを行う。

 

※この記事は出版時の時点で適用される一般的な情報を掲載しており、アドバイスを目的としたものではありません。この情報を基に行動をされる際には、専門家のアドバイスを受けることをお勧めいたします。

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