国際会計基準(IFRS)に関する最新動向

税務&会計Review

 

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アーンスト・アンド・ヤング ジャパン・ビジネス・サービス
監査シニア・マネジャー
三島 浩

著者プロフィル◎公認会計士。2001年新日本監査法人入所。日本基準、US-GAAP、IFRSに関する豊富な業務経験を有する。11年10月よりシドニー駐在。
国際会計基準(IFRS)に関する最新動向

オーストラリアでは、国際会計基準を自国の会計基準として採用しています。2014年上半期(1~6月)には、日系企業にも影響を及ぼす収益認識や金融商品の減損会計フェーズ(ヘッジ会計フェーズは13年11月に完了)など、いくつかの主要な国際会計基準の改訂プロジェクトが完了する予定です。今月号では、これらの主要プロジェクトの最新動向(13年12月末時点)について解説します。また、日系企業への影響は限定的と考えられますが、14年1月1日以降開始の会計年度から新たに適用される会計基準についても簡単にご紹介します。

主要プロジェクトの最新動向

収益認識基準(Revenue Recognition)

現行の収益認識モデルは、リスク及び経済価値の移転(transfer of risk and rewards)に焦点を合わせたモデルです。一方、新たな収益認識モデルの下では、顧客との契約に含まれる個々の履行義務を識別し、契約時点でこれらの履行義務に収益を配分した上で、関連する財またはサービスの支配が顧客に移転した時に収益を認識することになります(支配モデル)。

この支配モデルの導入により、すべての企業が何らかの影響を受ける可能性が高いと思われます。複数要素取引などの特定の取引については、現行基準よりも詳細なガイダンスが提供される予定です。

 

金融商品(Financial Instruments)

13年11月19日に新IFRS第9号「金融商品(ヘッジ会計及びIFRS第9号、IFRS第7号、IAS第39号の改訂)」(IFRS第9号(2013年))が公表されました。これは、新たなヘッジ会計の要件およびその他の金融商品に関連する会計基準の部分改訂を含んでいます。また、IFRS第9号(2013年)によって強制適用に関する記述が削除され、後述する減損会計フェーズの完了後に改めて強制適用日が決定されることになりました。

新ヘッジ会計は、金融業以外の事業会社にとってIFRS第9号(2013年)の適用を検討するいい機会だと思われます。何故なら新ヘッジ会計は、ヘッジ会計の適用要件を簡素化し、金融商品を用いた企業のリスク管理活動に関する有用な情報を、提供することに重点を置いているからです。

また、減損プロジェクトが完了する前にIFRS第9号(2013年)を適用することにより、事業会社は、新減損会計の適用を強制提供日まで遅らせる一方で、新ヘッジ会計を適用することが可能となります。

 

●新たなヘッジ会計の要件
ヘッジ会計に関する変更の内、最も重要な点は次の通りです。

ヘッジの有効性判定 有効性判定は将来に向かってのみ行われ、ヘッジの複雑性次第ではあるが、定性的な判定のみでも足り得るようになる。80~120%という有効性の数値基準は廃止され、ヘッジ対象とヘッジ手段の間の経済的関係および、信用リスクがその経済的関係に及ぼす影響に重点を置いたヘッジ目的に沿った判定が必要となる。
リスク要素 個別に識別可能かつ信頼性をもって測定できる場合には、金融項目だけでなく非金融項目についても当該リスク要素をヘッジ対象に指定することが可能となった。
ヘッジコスト オプションの時間価値、フォワード契約のフォワード要素および通貨ベーシス・スプレッドは、金融商品のヘッジ手段の指定から除外され、ヘッジ・コストとして会計処理することができる。つまり、これらの公正価値変動をトレーディング目的の金融商品のように損益に直ちに計上するのではなく、取引コスト(ベーシス・アジャストメントを含む)と同様に一定の方法で損益に按分し、公正価値の変動額との差額は一時的にその他の包括利益に計上されることとなる。
グループ・ヘッジ 階層指定や純額ポジションを含め、従前の基準と比べ、より多くの項目グループをヘッジ対象に指定することが可能となった。
開示 より広範な開示が求められる。

 

●提案されている減損会計基準
新減損会計基準(案)では、期待信用損失モデルに基づいた貸倒引当金の認識および測定が、以下のように提案されています。

 

・特定の金融資産について、期待信用損失の認識が求められます。
・評価時点後12カ月間の期待信用損失または残存期間にわたる期待信用損失に基づき、貸倒引当金の測定が求められます。
・現行基準のように、既に発生した損失だけ認識するのではなく、将来の期待損失をも含む信用損失が、より早い段階で認識される結果となる可能性が高くなります。

14年1月1日以降開始の会計年度から適用される新会計基準

賦課金(IFRIC21 Levies)

IFRIC21により、企業は、法規制によって規定された賦課金を支払う原因となる活動を行った時に、関連する負債を認識することが明確化されました。また、賦課金を支払う原因となる活動が一定期間にわたって生じる場合に限り、関連する負債は徐々に認識されることとなります。さらに、一定の基準値を超えた場合に初めて生じる賦課金については、当該基準値に達するまでは、いかなる負債も認識されないことも明確になりました。

 

金融商品の相殺

IAS32号「Offsetting Financial Assets and Financial Liabilities」の改訂は、「法的強制力のある現在の相殺権を有する」(以下枠内参照)を満たす要件を以下のように明確化するとともに、同じ時点で行われない総額決済メカニズムを採用している決済システム(例:中央清算機関システム)について、相殺要件がどのように適用されるかについても明確にしています。

「法的強制力のある現在の相殺権を有する」の意味
 相殺権は、正常な営業過程にある場合のみでなく、自社を含むすべての契約当事者が、債務不履行や支払不能あるいは倒産に陥った場合にも法的強制力を有していなければなりません。

デリバティブの更改(Novation)とヘッジ会計の継続(IAS 39の改訂)

この改訂は、ヘッジ関係に指定された店頭デリバティブの契約先が、法律や規則により直接または間接を問わず、中央清算機関(Central Counterparty)に変更される場合に、既存のヘッジ関係を継続できるようにヘッジ中止規定の例外措置を設けたものです。

 

投資企業(Investment Entities)の連結に関する例外規定(IFRS 10の改訂)

この改訂は、投資企業の定義を満たす企業に対して、連結規定の例外を定めたものです。投資企業は、子会社をIFRS第9号「金融商品」に従って、純損益を通じた公正価値で会計処理することが求められます。IFRS第3号「企業結合」は、適用されません。

まとめ

2014年上半期に最終基準化が見込まれる収益認識基準や金融商品会計等の主要なプロジェクトに関しては、会計処理だけでなく、企業の事業プロセスや内部統制にも影響を与える可能性があります。その為、十分な準備期間を確保する必要があると思われます。また、2014年1月1日以降開始の会計年度より適用される新会計基準については、オーストラリアで事業展開をしている多くの日系企業への影響は限定的であると思われますが、早いうちにこれらの新会計基準1つ1つの影響の有無を評価することが重要です。

 

※この記事は出版時の時点で適用される一般的な情報を掲載しており、アドバイスを目的としたものではありません。この情報を基に行動をされる際には、専門家のアドバイスを受けることをお勧めいたします。

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