フリンジ・ベネフィット税(FBT)申告を控えて

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アーンスト・アンド・ヤング ディレクター
ジャパン・ビジネス・サービス 裕子カーンズ

フリンジ・ベネフィット税(FBT)申告を控えて

FBTは、2012/13年度においても多くの議論の対象となった分野でした。それは、この分野が豪州国税局のコンプライアンス活動の焦点の1つとなっており、連邦政府にとってさらなる税収を提供する可能性のある税制であるためです。雇用主である各企業は、自社のFBT納税義務を正確に理解し、コンプライアンスを立証するために必要文書の整備を図り、税務当局の税務調査に備えることが大切です。また、今回FBT規定の改正が実施されたこともあり、日系企業にとっては遠隔地勤務(LAFH)ベネフィット優遇措置の実質的廃止に伴うコスト管理および節税のためのプランニングが非常に重要になります。今月号は、日系企業が高い関心を寄せているFBTについて、主要改正点を中心に解説します。

FBTとは何か

「フリンジ・ベネフィット」とは従業員に対しての「支給」ですが、給与や賃金の支払いとは異なるものであり、雇用に関連して提供されるベネフィット(以下参照)です。「従業員」とは、雇用のもと給与や賃金の支払いを受ける権利のある者であり、場合によっては過去と未来の従業員も含みます。「ベネフィット」および「フリンジ・ベネフィット」という用語には、FBT法上幅広い意味が与えられており、権利、特典やサービスの供与も含まれます。雇用主の提供する以下のようなベネフィットはフリンジ・ベネフィットとして課税される可能性があります。

 

・私的目的で従業員が社用車を使用することを許可する場合
・従業員に対し低金利のローンを提供する場合
・子どもの学費など、私的費用の払い戻しをする場合

雇用主は従業員に提供したフリンジ・ベネフィットに対し、税金を支払わなければなりません。雇用主のFBT課税額は、FBT課税年度(4月1日から翌年の3月31日までの12カ月)中に提供されたFBT対象額をグロスアップして計算されます。課税対象額のグロスアップは、消費税(GST)の金額を仕入れ税額控除することが認められるベネフィット(タイプ1ベネフィット)とGSTの仕入れ税額控除が認められないベネフィット(タイプ2ベネフィット)の2種類のベネフィットに基づいて行われ、それぞれのグロスアップ率は、2.0647および1.8692です。

FBT改正点

海外からの駐在員に関する遠隔地勤務(LAFH)ベネフィットの優遇措置は、一般的に12年10月1日から廃止となりました。この廃止に伴う問題点や改正点は、以下の通りです。

 

LAFHベネフィットおよび手当

FBT規定改正により、基本的にLAFHベネフィットおよび手当てはFBT課税対象となりました。なぜならば、遠隔地勤務手当ておよびベネフィットが、課税免除および優遇措置適用の基準を満たすための要件がより限定的になったためです。ただし、従業員がオーストラリアにおいて自身が居住するための目的で自宅を保有・管理し、かつ駐在の1年目のみに限り優遇措置の適用を受けることができることになりました。また宣誓書および費用の立証に関する要件もより包括的となり、従業員のオーストラリアにおける自宅および関連費用などの詳細を入手する必要があります。

オーストラリアに派遣される駐在員については、一時帰国費用および駐在員の子女の一定の学費を除き、現時点では、ほとんどの場合、遠隔地勤務手当ての優遇措置を受けることができなくなりました。

従来、課税免除および優遇措置適用となっていたベネフィットをFBT規定の下、課税することは、一定の雇用主にとって税務コストおよび税務リスクの増加につながります。また、費用の正当性の立証や宣誓書上での詳細開示は、雇用者および従業員の両者にとって管理上大きな負担となることが懸念されます。

 

未解決の問題点

今回の改正により改善された点も多くありますが、以下のような未解決の点も存在します。

 

・改正は一時的に遠隔地勤務する従業員に提供される宿泊に関するベネフィットの税務上の取り扱いについて触れていません。よって、このベネフィットも12年10月1日以降FBTの対象とされるかもしれません。
・優遇措置は1つの勤務地につき最長12カ月までしか適用がありません。結果として、同じ勤務地で12カ月以上勤務する従業員や12〜24カ月の海外勤務に就く従業員にとって不利な扱いになります。

 

次のステップ

雇用主は従業員に対して提供される遠隔地勤務手当および関連ベネフィットに関する税務上のインパクトを精査し、FBT規定上それにかかるコストおよび管理方法の見直しを行う必要があります。

 

■一時的転勤に関わる新規定上の取扱い

ベネフィット 海外からオーストラリアへの転勤 オーストラリア国内における転勤
LAFH食費 ✔*
LAFH家賃 ✔*
家具リース ✔*
子供の教育費
一時帰国(ホームリーブ)
短期宿泊施設 ✔*

* 対象となる個人はオーストラリア国内に個人的に利用可能な住宅を維持する必要がある;最長12カ月まで

そのほかのFBT改正点

インハウス・フリンジ・ベネフィット

税制の整合性および公平性を改善するため、政府は引き続き税制の見直しを行っています。12/13FBT税務年度に関しては、政府はサラリー・サクリファイス(給与繰延)によるインハウス・フリンジ・ベネフィットに対するFBT優遇措置の除外を決定しました。

この措置は12年10月22日に発表され、同日以降のアレンジメントに適用されますが、12年10月21日以前のアレンジメントについては、措置の適用は14年4月1日となります。この措置により、将来の一定期間につき4億4500万ドルの税収が見込まれています。

 

自動車フリンジ・ベネフィット

自動車フリンジ・ベネフィットの従来の法定計算率は、下記の表に示す通り4年間にわたり段階的に新車に対して20%の固定率が適用されるよう移行します。この改正は11年5月10日以降の新規契約に対して適用されます。新規の契約には新車の購入およびリースが含まれますが、既存の自動車ベネフィットについても使用方法、契約内容あるいは条項に11年5月10日以降変更があったものに対して新しい法定計算率が適用されます。

上記計算率の変更は、各FBT課税年度において年間走行距離が長く、法定計算率が11%や7%であった車両を多く保有する営業部隊などを持つ企業にとって、FBTコスト増となることが予測されます。よって、雇用主は節税のための対策を考慮する必要があります。

FBT年度の走行距離Km 法定計算率%
2011年5月10日以降 2012年4月1日以降 2013年4月1日以降 2014年4月1日以降
0 – 14,999 20 20 20 20
15,000 – 24,999 20 20 20 20
25,000 – 40,000 14 17 20 20
Over 40,000 10 13 17 20

豪州税務当局の調査活動および記録保持

豪州税務当局(Australian Taxation Office、ATO)は引き続き雇用主の納税義務に焦点をあてており、その1つであるFBTにも注目しているため、コンプライアンスには細心の注意を払う必要があります。FBT申告書に関するすべての選択、優遇措置や免除規定の利用、そして計算根拠を立証するための記録保持が重要です。

例えば、情報の照合と確認の方法や、FBT申告書作成のプロセス、さらに各構成要素の責任者、最終確認者や承認者が誰であるのかが明記されているFBTマニュアルを社内で作成することは、FBTのコンプライアンスを確立するために通常必要とされる一般的な書類とされています。

適切な記録保持は企業がFBTに係る義務のコンプライアンスを確立するために的確な手段を講じていることを豪州税務当局に立証する手立ての1つになります。

 

※この記事は出版時の時点で適用される一般的な情報を掲載しており、アドバイスを目的としたものではありません。この情報を基に行動をされる際には、専門家のアドバイスを受けることをお勧めいたします。

コンタクト:

菊井隆正(ナショナル/アデレード)
(02)9248-5986
Email: takamasa.kikui@au.ey.com

 

裕子カーンズ(シドニー)
Tel: (02)9248-5518
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寺岡洋一 (メルボルン) 
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