資産価値と減損テスト:資金生成単位に焦点

税務&会計Review

 

税務&会計 REVIEW

アーンスト・アンド・ヤング シニア・マネジャー
ジャパン・ビジネス・サービス 荒川尚子

著者プロフィル◎豪州公認会計士・米国公認会計士。日本・米国・豪州の上場企業への監査業務を専門とし、会計基準比較アドバイス(米国と国際基準)、内部統制実用化においての経験が豊富。
資産価値と減損テスト:資金生成単位(Cash Generating Unit)に焦点

ASIC(オーストラリア証券投資委員会)は引き続き、資産価値と減損テストを重視しているため、年次減損テストの実施および開示事項の両面から十分な注意を払って対処する必要があります。今回は、資産価値および減損テストが市場参加者に与えている影響などについておさらいします。

今市場で何が起きているのか

過去3年間で、減損を報告するASX100の企業数および計上される減損損失の額が著しく増加しました。直近の会計年度で減損を報告したASX100企業は57社で、前年の47社から増加しました。また、自己資本に占める平均減損損失の比率は5.2%となり、前年の4.0%、2011年の0.7%から上昇しました。

13年度の財務諸表を調査すると、引き続きのれんの減損が見受けられます。のれんの減損計上額は依然として、全体の減損損失の中で最も大きな金額です。表1に示されるように、12年度同様、のれんの次に大きな金額は有形固定資産の減損でした。

表1 – ASX100企業の最近の減損計上トレンド

 項目 2013 2012 2011
 のれん 45% 49% 42%
 有形固定資産 33% 35% 44%
 その他無形資産 12% 11% 7%
 持分法で会計処理される投資 10% 5% 7%

11年度および12年度の特徴は、少数の企業がのれんおよび有形固定資産の両方で巨額の減損を計上したことでした。13年は、1社当たりの減損損失計上額は2012年ほど大きくありませんでしたが、減損損失を計上する企業が増えたことにより全体の減損損失は増加しました。次の表2は、ASX100企業に関する興味深い統計です。

表2 – オーストラリアのASX100企業の減損統計

2013 2012 2011
 減損費用を計上する企業数 57% 48% 36%
(100社中57社) (97社中47社) (97社中35社)
 自己資本に対する平均減損費用 5% 4% 1%

減損損失を計上した企業によると、減損は主に経済環境が悪化した結果と説明しています。このように減損に対する注目度が高まっていることを受け、減損テストおよび資産の公正価値に関する情報開示の改善がみられます。

また、必修開示事項が比較的少ない特別目的財務諸表(Special Purpose Financial Report)を作成する豪州企業も、減損計算の仮定や主要な想定事項を吟味し見直しを行っています。仮定事項の網羅性を確認し、見直す優先順位を決め、資金生成単位が大き過ぎないかなどを体系的に日常作業に組み込むことが重要です。

そのため自社の現在のプロセスが十分で一貫性のあるものなのか、早くからアドバイザー・監査人に相談することが大切です。

資金生成単位の認識

私たちはクライアント業務を通じ、企業においてもASICにおいても資金生成単位への関心が高まっていることを認識しました。2014年6月30日時点で、特に以下の3つの資金生成単位に関する事項はよく間違いが起りやすい重要な分野ですので十分注意が必要です。

 

(1)資金生成単位が大き過ぎる

資金生成単位に含まれる資産が多過ぎないかどうかを検討することが重要です。資金生成単位は独立したキャッシュフロー(利益ではない)を生み出す最小限の資産グループと定義されていることにご注意ください。本来、別の資金生成単位にグルーピングしなければならない資産を誤って同一の資金生成単位にグルーピングしてしまうと、当該資金生成単位の減損が計上されないことがあります。この場合、資金生成単位が正しく認識されていれば減損の対象となる可能性があります。

 

(2)のれんに関わる資産のグルーピングが大き過ぎる

貴社にはのれんがありますか?のれんの減損テストを行う場合には、常に資金生成単位または複数の資金生成単位への配分が必要となります。
 のれんはのれんが内部管理目的でモニタリングされている企業内の最小の単位に配分する必要があり、なおかつ事業セグメントより大きい単位となってはいけません。企業はのれんの配分を検討し、もっと小さい単位(つまり事業セグメントのコンポーネントである資金生成単位グループ)に配分すべきかを判断する必要があります。

 

(3)再編および処分の影響

貴社は事業の一部を処分または再編しましたか?その場合は、さらなる注意が必要です。資金生成単位の一部が再編または処分される時、企業は(残りの)のれんをAASB136「資産の減損(Impairment of assets)」に従って配分したかどうかを検討することが重要です。
 資金生成単位グループの設定が大き過ぎる場合、のれんを相対的な公正価値に基づいて配分するとのれんの配分額を誤る可能性があります。例えば資金生成単位の一部が処分される場合、そのグループに配分されているのれんが多過ぎるもしくは少な過ぎると、損益に影響する可能性もあります。さらに、のれんが実際に配分された資金生成単位グループのレベルで監視されていなかったことを示唆し、内部統制の有効性が問われます。
 事業の一部を再編または処分する場合、状況が複雑になる場合がありますので、決算前にアドバイザー・監査人に相談するなど、再編および処分の影響を吟味し、文書化して思考・考慮事項を明確にしておくことが大切です。

最後に

ASICは今後も減損に注目すると思われます。この複雑な分野は経営陣だけでなく、取締役会も注目すべき分野です。私たちの経験では、減損は年度末を待たずに事前に準備することにより、さまざまな状況下においても利害関係者の考えを反映でき、同意を得られると言えます。

取締役や内部監査人は、特に、現在の経済環境において、また前期の財務予測が未達であった場合、資産価格および前提となる減損の計算の想定が適切であるか、原則ベースの会計基準の解釈と照らし合わせて検証することを推奨します。

 

※この記事は出版時の時点で適用される一般的な情報を掲載しており、アドバイスを目的としたものではありません。この情報を基に行動をされる際には、専門家のアドバイスを受けることをお勧めいたします。

コンタクト:

菊井隆正(ナショナル)
(02)9248-5986
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