新しい収益認識基準 – IFRS第15号

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アーンスト・アンド・ヤング シニア・マネジャー
ジャパン・ビジネス・サービス 荒川尚子

著者プロフィル◎豪州公認会計士・米国公認会計士。日本・米国・豪州の上場企業への監査業務を専門とし、会計基準比較アドバイス(米国と国際基準)、内部統制実用化においての経験が豊富。
新しい収益認識基準 – IFRS第15号

いよいよ収益認識基準が変更されます。国際会計基準審議会(IASB)および米国財務会計基準審議会(FASB)(以下、両審議会)は、IFRSおよびUS GAAPにおける収益認識に関する新たな基準を公表しました。今月号は新しい収益基準について解説いたします。

知っておくべき重要ポイント

1. IASBとFASBは、共同で策定した収益認識基準、IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」を公表した。当該基準により、IFRSおよびUSGAAPにおける収益認識に関する現行の規定はすべて置き換えられる。

 

2. IFRS第15号は、収益を生じさせるすべての契約に適用され、一部の非金融資産の売却(たとえば、有形固定資産の処分)に関する認識及び測定モデルも定めている。

 

3. IFRSでは、当基準は2017年1月1日以後開始する事業年度から適用されるが、早期適用も認められる。

 

4. 早期に準備を始めることが、新基準への円滑な移行の鍵となる。

概要

IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」は、複数のコメント募集文書の公表、多数のラウンド・テーブル、その他のディスカッション・フォーラム、そして両審議会が行った広範囲にわたる審議を経て、10年以上の歳月をかけて開発されたものです。オーストラリアは今後諸手続きを経てIFRS第15号(AASB第15号)を豪州会計基準として採用します。

IFRS第15号の基本原則は、収益は、約束した財またはサービスの顧客への移転を表すように、また当該財またはサービスと交換に企業が権利を得ると見込む対価を反映した金額で認識するというものです。

適用範囲

IFRS第15号では、5つのステップから構成される収益認識モデルが定められており、取引形態や業種に関係なく、(リース契約など一部の例外を除き)すべての顧客との契約から生じる収益に適用されます。また、IFRS第15号の規定は、企業の通常の活動から生じるアウトプットに該当しない、一部の非金融資産の売却(たとえば、有形固定資産や無形資産の売却)から生じる利得および損失の認識と測定にも適用されます。

さらに当基準では、収益の区分ごとの開示、履行義務に関する情報、契約資産及び契約負債残高の期中における変動、さらに主要な判断や見積りなど、より多くの開示が要求されている点、注意が必要です。

発効日

IFRS第15号は、2017年1月1日以後開始する事業年度から適用されます。ただしUSGAAPに準拠して報告を行っている上場企業は、2016年12月15日より後に開始する事業年度から適用されます。早期適用については、IFRSでは容認されていますが、US GAAPに従って報告している上場企業に対しては認められていません。

企業は、完全遡及適用アプローチ(Full retrospective approach)または修正遡及適用アプローチ(Modified retrospective approach)のいずれかにより新基準への移行を行うことになります。修正遡及適用アプローチの下では、初めて当基準を適用する年度の期首から、その時点で存在する契約に対して同基準を適用することが認められます。このアプローチを採用した場合、初めて当基準を適用する年度について、現行のIFRSに基づく収益に関する情報も追加で開示している限り、比較年度の修正再表示は要求されません。両アプローチの主な概要を以下の表にまとめました。

適用日以降の新規契約 完全遡及適用アプローチ
(遷移救済を除く)
修正遡及適用アプローチ
どの提示期間適用する? すべての表示期間 初めて当基準を適用する年度のみ
どの契約に適用する? すべての提示期間中に存在していたであろうすべての契約に新基準を契約開始から適用 ●適用日以降の新規契約
●既存契約に関しては新基準が契約開始以来適用されていたかのように
適用影響はどのように財務諸表に認識される? 適用(会計変更)による表示期間前累積影響額は過年度利益剰余金の期首残高に反映される 適用(会計変更)による累積影響額は、直近表示期間の利益剰余金の期首残高に反映される
適用時に特別な開示は要求される? ●更なる開示要件
●IAS第8会計方針の下で要求される事項
●いくつかの免除は有る
初めて当基準を適用する年度について、現行のIFRSに基づく収益に関する情報も追加で開示(実質的に適用年度中に会計記録の2組が必要)

表1 – 適用アプローチの概要

5つのステップから構成されるモデル

IFRS第15号の基本原則は、5つのステップから構成されるモデルにより適用されます(表「IFRS第15号モデルの概要」参照)。契約条件およびすべての関連する事実や状況を検討するにあたり、判断が求められます。当基準に定められる規定は、類似の特徴を有する契約に対し、また、類似の状況において首尾一貫して適用されなければなりません。

基本原則 収益は、約束した財またはサービスの顧客への移転を表すように、また当該財またはサービスと交換に企業が権利を得ると見込む対価を反映した金額で認識する
ステップ1 顧客との契約を特定する
ステップ2 契約における独立した履行義務を識別する
ステップ3 取引価格を決定する
ステップ4 取引価格を独立した履行義務に配分する
ステップ5 企業が履行義務を充足した時点で(または充足するに応じて)収益を認識する

表2 – IFRS第15号モデルの概要

契約コストおよび、その他の適用ガイダンス

5つのステップから構成される収益認識モデルに加え、IFRS第15号には、契約を獲得するための増分コストと契約の履行に直接関連するコストの会計処理も定められています。これらのコストは、回収が見込まれる場合には資産計上され、事後的に償却および減損テストが行われます。

IFRS第15号には、ライセンス、製品保証、返品権、本人か代理人かの検討、追加の財又はサービスに対する選択権、(商品券の未使用などの)顧客の権利不行使といった一般的な事項に同基準を適用する際の適用ガイダンスが示されています。

最後に

IFRS第15号は現行のIFRSから大きく変更されています。より詳細な適用ガイダンスが提供されているものの、見積りが幅広く用いられることもあり、当基準の規定を適用するに際し、より多くの判断が求められています。

企業によっては、収益認識に大きな変更が生じる可能性があるため、新基準の適用による影響について直ちに社内で検討を開始の上、専門家に相談することが重要になるでしょう。

ジャパン・ビジネス・サービス・ウェブサイト
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※この記事は出版時の時点で適用される一般的な情報を掲載しており、アドバイスを目的としたものではありません。この情報を基に行動をされる際には、専門家のアドバイスを受けることをお勧めいたします。

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