IFRS第11号「共同契約の改訂による影響について

税務&会計Review

 

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アーンスト・アンド・ヤング
シニア・マネジャー/ジャパン・ビジネス・サービス 
荒川尚子

★著者プロフィル=豪州勅許公認会計士・米国公認会計士。日本・米国・豪州の上場企業への監査業務を専門とし、会計基準比較アドバイスと監査業務を専門とする。JBSでも資源・電力業界のEYグローバル・ネットワークを屈指し、さまざまな包括的サービス提供に従事。
IFRS第11号「共同契約(ジョイント・アレンジメント)」の改訂による影響について

2011年に公表され、13年1月1日以降、開始事業年度から適用されているIFRS第11号「共同契約」は、ジョイント・ベンチャーとジョイント・オペレーション(以下、共同営業)のための会計処理に関する要件について規定のほとんどを定めています。しかしながら、問題点も残っており、今回の改訂にいたりました。

知っておくべきこと

No. 内容 説明
1 説明 企業が共同営業の持分を取得し、さらにその共同営業の活動が「ビジネス」と判定された場合、IFRS第3号「企業結合(Business Combinations)」に規定されているすべての会計原則を適用する必要がある
2 発効日 2016年1月1日
3 非遡及的適用と
遡及的適用
●本改訂は16年の発効日以降に発生する取得に非遡及的に適用
●比較期間の再表示は不必要(遡及的適用は禁止)
4 適用範囲 本改訂は以下の持分の取得に適用される
1. 「ビジネス」と指定された既存の共同営業;または
2. 既存の「ビジネス」が、共同営業に参加しているいずれかの当事者の拠出により設立された場合
5 企業結合会計原則の幅広い適用 「ビジネス」を構成する共同営業の持分を取得した場合に、企業結合の会計原則を適用する必要がある

13年から適用されているIFRS第11号の懸念事項の1つとして挙げられるのが、共同営業者が「ビジネス」を構成する共同営業における持分を取得した際に、どのように会計処理をすべきかという問題です。現IFRS第11号の下では、実際会計基準が多様に解釈・適用され、企業によって会計処理上の相違があるという懸念がありました。

この問題は、IFRS解釈指針委員会(IFRS Interpretations Committee)、次に国際会計基準審議会(International Accounting Standard Board、IASB)によって検討され、結果として、IFRS第11号「共同契約」の改訂 – 共同営業事業における持分取得の会計処理(Amendments to IFRS 11 – Accounting for Acquisitions of Interests in Joint Operations)が14年5月、IASBによって発行されました。

改訂の概要

本改訂では、共同営業の活動が「ビジネス」を構成し共同営業の持分を取得する場合、IFRS第3号の企業結合会計のすべての原則とIFRS第11号のガイダンスに抵触しないほかのIFRSが適用されることを明確にしました。この要件は共同営業の当初の持分と追加取得の持分の両方に適用されます。また、本改訂には、非網羅的ではありますが、IFRS第11号のガイダンスに抵触しない企業結合に関する会計処理の原則が明記された一覧が含まれています。例として、取引費用、繰延税金およびのれんの会計処理と減損テストがあげられます。

課題

本改訂は比較的理解しやすいものですが、会計実務の大幅な変更を伴うため、今までに企業結合の手法を適用していなかった企業にとっては、難しい対応に迫られることになります。以下では、それらの課題のいくつかを見ていきます。

 

1.「ビジネス」それとも資産?

共同営業の活動、または設立時に共同営業に対して拠出された資産および活動がIFRS第3号「企業結合」で定義される「ビジネス」に該当するかどうかは、慎重に検討する必要のある事項です。実際に、どの活動が「ビジネス」と判定されるかは、主要判断材料と経営者の見解によって多様化しています。企業結合の会計方針を見直し、本改訂によってどの契約が影響を受けるかを判定する上での主な判断材料となる活動や資産を把握することが大切です。

 

2.増加する時間、費用、労力

相対的公正価値手法と企業結合手法のいずれの場合も、取得した識別可能資産および引受負債の公正価値を判断する必要があります。
 ただし、企業結合手法の場合、さらに時間、費用、労力がかかる可能性があります。これは、今まで企業が相対的公正価値手法を適用した多くの場合、すべての資産と負債(採掘権/資産を除く)の公正価値を判断し、金額を取得項目の一部として認識した後に、採掘権/資産に残存価値を配分しているためです。一般的に、採掘権/資産を個別に評価すること、または取得した他の資産(例えば推定埋蔵量および/または取得探査の可能性を超えた値)の価値評価に労力を割くことを避ける傾向にありました。
 今まで企業結合手法を採用したことのない企業がこの手法を適用するには、採掘権/資産やその他の識別可能な無形資産を含め、すべての資産を公正価値で評価する必要があります。このような資産の評価はより複雑なため、時間と費用がかかります。
 その上、取得した各持分に要件を適用するため、経営者が後で共同営業の持分を増やした場合には公正価値を再び評価する必要があります。

 

3.貸借対照表と損益計算書の内容変更の可能性

さらに、今までに企業結合手法を採用していなかった企業にとって、以下によって貸借対照表と損益計算書の内容の変更が伴うことがあります。

No. 内容 説明
1 アプローチ 相対的公正価値手法と比較して、資産と負債は当初異なる金額で認識される 。
2 繰延税金資産  当初の識別免除は利用不可。該当する場合は、繰延税金資産の残高を識別する必要がある 。
3 取引費用 取引費用は資産ではなく経費として計上する必要がある 。
4 のれん のれんは認識されることがある 。
IFRS第11号の本改訂は、一部の金属鉱業産業に従事する企業にとって大きな影響があると考えられます。少なくとも、今後の共同営業の持分取得を分析して、今回の改訂の対象となるかどうかを判断する必要があるでしょう。

 

4.最後に

この改訂による潜在的な影響に関して具体的な懸念はありますか?あるいは、改訂に関して何らかの不確定要素が存在しますか?

 これらの質問に該当する場合、本改訂の解釈と適用方法について独自の見解を持つことが求められます。また財務諸表だけではなく、社内業務にも影響が出る可能性があるため、経営陣はより早く着目し、準備に取り掛かるべき問題といえます。私たちの経験では、適用開始が近くなることを待たずに事前に入念に準備することにより、さまざまな状況下において利害関係者の考えを最大限に反映することが可能となり、必要な同意を得やすくなるでしょう。
 特に、現在の経済環境において、また前期の財務予測が未達であった場合、投資・資産価格およびその算出に必要な仮定や前提の適切性を、原則ベースの会計基準の解釈と照らし合わせて検証することをお勧めします。

ジャパン・ビジネス・サービス・ウェブサイト
ey.com/au/en/JapanBusinessServices

 

※この記事は出版時の時点で適用される一般的な情報を掲載しており、アドバイスを目的としたものではありません。この情報を基に行動をされる際には、専門家のアドバイスを受けることをお勧めいたします。

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(02)9248-5986
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