フリンジ・ベネフィット税(FBT)申告を控えて

税務&会計Review

 

税務&会計 REVIEW

アーンスト・アンド・ヤング ジャパン・ビジネス・サービス
雇用関連税務部門シニア・コンサルタント 
浅井和弘

著者プロフィル◎NSW州弁護士資格有。2008年新日本税理士法人入所。10年EYシドニー事務所入所。法人税務の豊富な業務経験を経て12年11月から雇用関連税務および個人所得税務を担当。
フリンジ・ベネフィット税(FBT)申告を控えて

今年もFBT申告の時期がやってきました。1年のこの時期には多くの雇用主がFBT申告書作成に向けて情報収集および確認作業を行います。FBTは、連邦政府にとってさらなる税収を提供する可能性のある税制であり、豪州国税局(ATO)のコンプライアンス活動の焦点の1つとなっています。そのため、各企業は雇用主として自社のFBT納税義務を正確に理解し、コンプライアンスを立証するための必要文書の整備を図ることが大切です。今月号では、FBTに関して特に日系企業に影響がありそうなエリアに焦点を当てて解説します。

FBTとは何か?

「フリンジ・ベネフィット」とは従業員に対しての「支給」ですが、給与や賃金の支払いとは異なるものであり、雇用に関連して提供されるベネフィット(以下参照)です。「ベネフィット」および「フリンジ・ベネフィット」という用語には、FBT法上幅広い意味が与えられており、権利、特典やサービスの提供も含まれます。FBTは、従業員およびその関係者に現金給与以外の経済的利益を提供する場合に、雇用主に対して課されます。ただし、FBTが適用されるのはオーストラリアで課税対象となる給与・賃金を受領している従業員に提供されたフリンジ・ベネフィットです。例えば、日本国籍保有者がオーストラリアで一定期間以上勤務する必要がある場合、提供されたフリンジ・ベネフィットはFBTの対象となる可能性があります。会社が従業員に対して提供する最も一般的なフリンジ・ベネフィットには以下のものがあります。

・社用車のプライベート使用
・接待(レストランでの食事、ゴルフ・コンペ、ショーのチケットなど)
・私的費用の払い戻し(交通費、子女の授業料、個人所得税の負担など)

関連会社(日本の親会社など)からオーストラリア勤務の従業員に提供されるベネフィットもFBTの適用対象となります。これは従業員への支払いが現地であろうと海外であろうと発生します。

FBT課税年度は4月1日~3月31日の12カ月であり、申告書の申告期限は、通常5月21日ですが、タックス・エージェントを通した場合6月25日に期限を延長することも可能です。

税率の変更

FBTの税額はFBT税率に課税対象となるフリンジ・ベネフィット額をグロス・アップした額に適用して計算されます。FBT税率は個人所得税最高税率にメディケア税率を加算したものですが、メディケア税の税率が2014年7月1日付で1.5%から2%に引き上げられたため、それに対応して14年4月1日付から前倒しで14/15FBT課税年度のFBT税率とグロスアップ率が変更されました。

・FBT税率が46.5%から47%に引き上げ
・タイプ1グロス・アップ率は2.0647から2.0802に引き上げ
・タイプ2グロス・アップ率は1.8692から1.8868に引き上げ

15/16課税年度(15年4月1日開始)については、2%のオーストラリア予算均衡化税(時限立法)の導入に伴い、FBT税率が再び変更になります。このため、15年4月1日~17年3月31日までの2年間は、FBT税率が47%から49%に引き上げられることによってグロス・アップ率も上がります。

遠隔地勤務手当

12年10月1日付で、国外からの駐在員および国内の転勤者に適用されるFBT免除規定および優遇措置に大幅な変更がありました。この結果、多数の雇用主が駐在員に対する遠隔地勤務(LAFH)手当の支給を全額または一部を取りやめました。

概して、国外からの駐在員に与えられるLAFH手当(住居費、食費)は全額がFBTの適用対象となり、免除が適用されるケースは限られています。ただし、一時帰国休暇や子女の学費などを含むその他のFBT免除規定および優遇措置は引き続き適用されます。

LAFH手当てのFBT免除規定または優遇措置が適用される可能性は国内の転勤者のほうが高いと言えます。ただし、従業員は以下の要件を満たす必要があります。

・業務上の目的でオーストラリア国内の通常の住居から離れた遠隔地勤務が必要
・従業員または配偶者がオーストラリアに住居を所有または賃貸
・オーストラリアの住居が常時利用可能な状態であること(住居間貸し不可)
・12カ月を超えて1つの場所(またはその付近)に遠隔地勤務をしない、および
・LAFH期間中の住居費に関する証明の提出

自動車フリンジ・ベネフィット

この数年間に自動車フリンジ・ベネフィットのFBTの計算方法に関して多くの変更がありました。

経過措置として原則的に11年5月10日以前に購入またはリースした自動車には走行距離ベースの旧法定計算率が適用されます。ただし、自動車のリース契約が3年または4年を超えることは稀であることから、現在この経過措置が適用される契約はほとんどありません。このため法定計算率方式では、自動車フリンジ・ベネフィットの課税額を計算するために一律20%が適用されます。

FBTコストの削減

従業員にフリンジ・ベネフィットを供与した場合、会社にそれに関連するFBTコストが発生します。またフリンジ・ベネフィットには会社の給与税および労働災害補償義務への影響があるため、その点を社内で検討する必要があります。そのため、雇用主はフリンジ・ベネフィットを提供した場合のコストと従業員が感じるベネフィットの価値とのバランスを考える必要があります。

FBTコストの削減方法には、以下のようなものが含まれます。

・従業員拠出金:従業員拠出金(税引き後)によって、フリンジ・ベネフィット課税価格を減額する。
・FBTの対象となる特定のフリンジ・ベネフィットを全額現金化:これはベネフィットを従業員に直接支払う現金手当てに交換するのと同じ。これは過年度に民間健康保険を従業員に提供してきた雇用主の間で最も一般的。ただし、これがPAYG源泉徴収、スーパーアニュエーション制度や給与税に与える影響には注意する必要あり。
・駐車費用の払い戻し:技術の進歩に伴い、過去の多数の駐車料金の履歴が入手可。雇用主が従業員に数年にわたり自動車の駐車スペースを提供している場合、過年度の割安な駐車場料金情報を入手し、税務長官にFBTの払い戻しを修正申告によって請求できる。
・会食交際費:会食交際費の課税額を計算する最も一般的な方法は50/50分割法。ただし、多くの場合、実額法(1人当たり)に基づく方法を利用することで雇用主の大幅な節約につながる可能性がある。
・少額ベネフィット:300ドル(GST込)未満の不定期に従業員または社員に提供される特定のベネフィットは免除される。雇用主はこの免除枠を利用して、FBTコストをかけずに従業員に各種ベネフィットを提供できる。

終わりに

ATOは、コンプライアンス強化の一環として、FBTの納税義務を遵守していない雇用主、特にFBTの申告を行っていない雇用主に対する取り締まりを強化しています。FBT申告書上で開示した数字が正しいか、FBT申告において行うすべての選択、優遇措置、免税、算出方法を裏付ける基本的な記録が保持されているかどうかなどを十分確認し、万一のATOの調査活動に備えることが重要です。

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※この記事は出版時の時点で適用される一般的な情報を掲載しており、アドバイスを目的としたものではありません。この情報を基に行動をされる際には、専門家のアドバイスを受けることをお勧めいたします。

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