鉱業・金属セクターの事業リスク・トップ10 2014/15年度

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税務&会計 REVIEW

EY パートナー/ジャパン・ビジネス・サービス
アジア太平洋地域統括
菊井隆正

著者プロフィル◎アジア・パシフィックおよびオセアニア地域日系企業担当部門代表。常に監査、会計、税務から投資まで広範囲にわたる最新情報を提供することで、オセアニアで活躍する日系企業に貢献できるよう努めている。
鉱業・金属セクターの事業リスク・トップ10 2014/15年度

オーストラリアの主要産業の1つである鉱業・金属セクターの企業は、リソース・ナショナリズム、スキル不足とインフラをトップ3の主要問題として抱え、現在一段と複雑なリスクに直面していると言えます。EYの鉱業・金属セクターの専門家は、定期的に業界の企業が直面する重要なリスクやチャンスについて調査しています。以下2014/15年度調査結果のキー・ポイントをご紹介致します。

トップ10リスク-7年間の推移

 2014年
 01:生産性の向上
 02:資本配分と資本調達
 03:社会的操業許可
 04:資源ナショナリズム
 05:投資計画の実行 
 06:価格および為替のボラティリティ
 07:インフラの整備状況
 08:利益の共有
 09:必要な人材の適正化
 10:水およびエネルギーの確保
 2008年(スーパー・サイクルのピーク)
 01:人材不足(今回より「必要な人材の適正化 」)
 02:業界再編
 03:インフラの整備状況
 04:社会的操業許可
 05:気候変動の懸念
 06:コストの高騰
 07:開発パイプラインの縮小
 08:資源ナショナリズム
 09:エネルギー へのアクセス
 10:規制の強化

コモディティ価格の高騰がもたらした成長ブーム「スーパー・サイクル」の間、鉱業・金属セクターは成長を追求し、過去10年間に同セクターの生産性は低下しました。これに対応するため、今回、「生産性の向上」がEY のリスク・ランキングのトップに押し上げられました。コモディティ価格が引き続き軟化し、利幅が減少し、収益性をどこにも求めることができない今、同セクター全体で生産性が大幅に低下した影響が明らかになっています。

このスーパー・サイクルによって、鉱山開発事業者のDNAは、ひたすら成長のみを追い求めるプロセスや業績指標、企業文化に適応するDNAへと変化しました。この変化は水面下で起きたため、立ち向かうためには、抜本的な対策が必要になるでしょう。長期的な収益性と適切なROCE(使用資本利益率)を達成するためには、生産性を取り戻し、新たな競争優位を得ることが重要であり、セクター全体での対応が求められることを取締役やCEOは理解しています。こうした変化に広範に取り組むことが不可欠ですが、これまで有効な取り組みを行った鉱山開発事業者は1社もありません。この大規模な変革の必要性が、このリスクが最上位にランキングされている要因となっています。

ランキングでは上位のリスクは変動していますが、優先順位に大きな変化はありません。今年、「水およびエネルギーの確保」がトップ10にランク入りしましたが、このリスクは水やエネルギー需要の増加やコストの高騰、入手が困難になってきたことなどに伴って大きな問題となってきています。

資本配分と資本調達―多様化するユニークな課題

「資本配分のジレンマ」は昨年この課題への対応が進んだことを受け、昨年の最上位からランクを下げました。2013年に実施された一連の資産の減損を受けて、大手鉱山開発事業者の資本の管理と最適化は着実に進歩しています。今後も投資方針の厳格な適用が予想されますが、現在企業が直面している問題は、投資の次のフェーズがどのような形を取り、いつステーク・ホルダーがそのフェーズを強く求め始めるのかという点です。しかし、多くのジュニア企業および開発事業者にとって、過去12カ月間、ほとんど変化はありません。これらの企業は手元資金が不十分な状態が続き、生き残りに賭けています。

社会的操業許可―強い影響力を持つ地域社会への関与

このリスクは、今回第3位まで上昇しました。この理由は、企業の社会的関与の実績がいかに模範的であっても、地域社会の影響が強まり、プロジェクトが中止や遅延に追い込まれているためです。地域社会や環境問題の活動家によって遅延や中止に追い込まれたプロジェクトの件数は増え続けています。企業は現状に甘んじているわけにはいかず、地域社会やステーク・ホルダーが常に受け入れてくれることも期待できません。企業は社会的操業許可を取得し維持するための取り組みを、よりサステナビリティブルな事業戦略に広く取り入れる必要があります。

資源ナショナリズム―後退と前進と

鉱業・金属セクターの利益は減少していますが、より多くの利益を得ようとする各国の資源ナショナリズムは依然として高い水準で続いています。そのため、この項目はリスクのトップ5に引き続きランクされています。一方、投資利回りが低い状況で、このセクターへの投資をより魅力的なものにするため、鉱物に対する税務政策を転換した国もあれば、生産国での鉱石の精錬・加工を強制する制度や「使わなければダメになる」というルールを発動して政府による直接保有を増やした国もあります。資源ナショナリズムは資源生産国の国民には非常に受けが良く、多くの国では鉱石の精錬・加工を強制する制度を浸透させる動きは、重要な選挙がある年に活発になります。感情に訴えかけて資源ナショナリズムをあおるような議論は、事実を詳細に、かつ透明性を高めて開示することでしか克服することができません。

投資計画の実行―保守的なアプローチ

このリスクは、成長ブームの際に開始された長期大型プロジェクトが、まだ完全に実施する必要があることからトップ5にランク入りしています。次のサイクルの上昇局面を視野に入れている企業は次のプロジェクトを相次いで計画し始めています。新しいプロジェクトへの投資意欲は民間の資本市場にはまだ見られないものの、保有する埋蔵量から生産分を回復しなければならず、サイクルも変化するため、企業は避けられない投資への準備を静かに始めています。鉱業・金属セクターの企業は「スーパー・サイクル」の際に犯した同じ失敗は避けたいと考えています。また、取締役会も過去の過ちを繰り返さないため、さらに健全な投資計画の管理を求めるようになるでしょう。さらに、コモディティ価格の下落に伴い、企業の多くは生産性の向上によって、より少ない投資でより多くの利益の獲得を目指しています。今後数年間に多くのコモディティの供給不足が再発し、投資が認可されれば、このリスクはCEOや取締役会にとって、優先順位の高い課題になるでしょう。

初めてトップ10入りしたリスク―水およびエネルギーの確保

安価な水とエネルギーの確保は、鉱業・金属セクター企業の業務に不可欠であり、特に南米およびアフリカの国々では入手が次第に困難になってきています。世界中の多くの採掘地域におけるエネルギー・コストの急騰と水需要の高まりは、企業の事業コストと操業能力に大きな影響を与え始めています。世界的なエネルギー需要が25年までに36%増加することが予想され、鉱石品位も低下することから、このリスクは年々高まっており、同セクターはエネルギー価格とボラティリティの上昇に直面しています。同様に、水不足の問題には戦略的で実践的な対応が必要とされます。多くの国ではこの問題の危機的状況からこのリスクが上昇し、トップ10にランク入りしています。

メガトレンド
 事業リスクトップ10は鉱業・金属セクターの今後1~2年間における優先課題を挙げたものです。これらのリスクは、ビジネス、社会、カルチャー、経済に影響を与えている世界的なメガトレンドに左右されます。この中には次のメガトレンドが含まれます。

• デジタル革命
• 勤務形態の変化
• グローバルな市場
• 都市とインフラ需要
• 資源豊富な地球による稀少資源の配分
• 増加するニーズを満たすための健全性の再考
• メガトレンドは本質的に、中・長期の関連性を対象としています。

ジャパン・ビジネス・サービス・ウェブサイト
ey.com/au/en/JapanBusinessServices

 

※この記事は出版時の時点で適用される一般的な情報を掲載しており、アドバイスを目的としたものではありません。この情報を基に行動をされる際には、専門家のアドバイスを受けることをお勧めいたします。

コンタクト:

菊井隆正(ナショナル)
(02)9248-5986
Email: takamasa.kikui@au.ey.com

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