会社法改正法案の解説

税務会計最前線

KPMGシドニー事務所  パートナー 八郷 泉

会社法改正法案の解説

2009年12月4日、連邦財務省は、会社法の改正法案を意見聴取目的で公表し、意見書の提出を2010年2月3日まで受け付けています。

改正の内容は10項目にわたりますが、その内、親会社財務諸表、配当支払に関する要求事項、会計期間の変更、会社法258F条による減資、の4項目について解説します。

改正法案は、不必要な規制を撤廃し、会社の規則による負担を軽減し、開示事項を改善するもので、歓迎すべき内容です。

(1)親会社財務諸表

現行の会社法の下、会社は財務諸表を作成することが要求されていますが、連結グループについては会計基準により連結財務諸表を作成することが必要です。この結果、財務諸表は少なくとも4コラム(親会社単体および連結について当期と前期)から構成されることになります。

親会社単体の財務諸表の有用性の問題について、オーストラリアでは長年にわたり議論されてきました。親会社単体の情報を要求している国/地域はあまり多くありません。

改正法案の下では、会計基準が連結財務諸表の作成を要求している場合には、親会社単体の財務諸表は作成しなくてよいことになります。

その代わり、連結財務諸表は親会社についての情報を脚注で開示することが要求されています。会社法規則が改正され下記の開示が必要になります。

* 流動資産および総資産
* 流動負債および総負債
* 株主持分、資本金と剰余金を区分して表示
* 損益

* 子会社の負債についての親会社保証の詳細
* 偶発債務の詳細
* 資本的支出義務
* 上記の項目について前期の比較情報

この改正案は、2010年6月30日以降に終了する事業年度から適用が予定されています。この改正により、連結財務諸表を作成する場合、親会社単体の財務諸表作成は必要でなくなり、主要な財務数値の開示に置き換わります。したがって、不必要な開示が除去され、企業は財務諸表作成のコストを削減できます。

(2)配当支払に関する要求事項

現行の会社法254T条は、配当は会社の利益からのみ支払うことができる(A dividend may only be paid out of profits of the company)と規定しています。会社法は、利益(profits)の用語を定義しておらず、解釈指針も存在しません。

さらに、判例などの過去の法的事例は時代遅れで複雑であり、また現代の会計原則に沿ったものでありません。このことは、配当支払に関する法的要求事項が何かを取締役が理解することを困難にしています。

オーストラリアの会計原則の性格および会計原則が会社の利益計算に与える影響は、長い間に変化しています。現在の会計原則の下では、利益は公正価値の使用に大きく影響され、多くの非現金収益費用項目によってボラティリティーが増加しています。決算上配当を行なう十分な現金があっても、非現金費用項目によって会計上の利益が少なく、配当できない事態も考えられます。

現行の254T条は廃止され、以下の柔軟な規定に改正されます。

会社は以下の条件を満たさない場合配当を行なってはならない。

a) 会社の資産は負債を超過しており、その超過額は配当を行うのに十分である
b) 配当の支払いは、全体として、会社の株主に対して公正で合理的である
c) 配当の支払いは、債権者に対する支払い能力を大きく損なわない

a)のテストは重要な安全措置であり、ニュージージランドおよびカナダの規定に類似しています。b)およびc)のテストは、減資および株式買取を行う場合の規定と一致しています。

新しいテストの全体的な目的は、当該配当を受領しない債権者と株主を十分に保護することです。

なお、今回の改正は、資本金からの配当も認めていますので、税法(配当は利益から行うとする現行の会社法の規定に準じている)との調整が必要になると考えられます。

配当支払に関する要求事項の改正は、改正法の成立日から適用になります。

(3)会計期間の変更

現行の会社法323D条は、会計期間を12カ月間(7日間までのプラスマイナスは認められる、例えばある曜日を期末日とする)と規定しています。従って、会計期間の変更は、親会社の会計期末に一致させる以外は困難となっています。

なお、会社を設立した最初の年度は、18カ月までの期間が認められています。

323D条は改正され、以下の条件を満たす場合、会社は最初の年度以降についても12カ月以外の会計期間を採用することができるようになります。

* 会計期間は18カ月を超えない

* 過去5年以内に、12カ月以外の会計期間を採用していない

* 会計期間の変更は、会社の利益のために信義則に基づいて行われる

今回の会計期間についての柔軟な規定の導入は、会社が期末日を変更することを容易にします。適用は、2010年7月1日以降に開始する事業年度からの予定です。

(4)会社法258F条による減資

会社法258F条は、会社が払込資本を取消すことを、その資本が失われてしまっていたり、会社の財産を反映していない場合に、認めています。この規定は、会社に一定の種類の損失が生じた場合に、会社が資本金を減額することを認めることを意図しています。このことは、会社の資本金と過去の繰越損失を相殺することで行なわれます。

258F条は改正され、資本金の取消は、オーストラリアの会計基準の要求事項に準拠している場合にのみ認められることが明確にされます。改正案は、資本金と繰越損失の相殺は認めていますが、費用を直接資本金と相殺することは認めていません。この改正は、改正法の成立日以降に行なわれる払込資本の取消に適用されます。


この記事についての質問などは下記の各事務所に連絡する。
■シドニー 八郷 泉 Tel: (02)9335-8913
東 大夏 Tel: (03)9335-7292
ティペット 仁美 Tel: (02)9335-8606
山田 友美 Tel: (02)9335-7755
■メルボルン 森部 裕次 Tel: (03)9288-5742
北村 美幸  Tel: (03)9288-5257
■ブリスベン 池広 政久  Tel: (07)3233-3221
■パース 船津 賢一  Tel: (08)9263-7251

新着記事

新着記事をもっと見る

NICHIGO CHANNEL

新着イベント情報

新着イベントをもっと見る