帰ってきた五郎丸─ブリスベン・グローバル・ラグビー・テンズ(1)

今年からの新しい試みである10人制ラグビー(テンズ)の国際大会『ブリスベン・グローバル・ラグビー・テンズ』が、2月11日、12日に行われた。その熱戦の様子を豊富な写真と共にNichigo Press ウェブ版限定でお届けする短期集中連載。その第一弾は、試合前日までの“帰ってきた五郎丸”の様子をつぶさにお届けする。

 ラグビーの原型で、ここ豪州では“ユニオン”と呼ばれる15人制。五輪競技でもあり多くの国際大会の定期開催で定着した7人制(セブンス)。そのいずれも、それぞれの良さを生かしてこの国でも愛されてきた。

 そして、満を持してラグビー大国・豪州にやってきたのが、それらの二つの異なるラグビーのハイブリッドとして産み出されたテンズ。ラグビーよく知る人々からも、ハイブリッドに相応しいラグビーの“進化形”として軒並み高い評価を集めている。

トゥーロンのチームメイトのアルゼンチン代表アクセル・ミュラー(左)と豪州代表ジェームズ・オコナ―(中)と大会トロフィを前に写真に収まる五郎丸(Photo:Nino Lo Guidice)

トゥーロンのチームメイトのアルゼンチン代表アクセル・ミュラー(左)と豪州代表ジェームズ・オコナ―(中)と大会トロフィを前に写真に収まる五郎丸(Photo:Nino Lo Guidice)



 そんなテンズの豪州国内で最初の大掛かりな国際大会として、今年から開幕したのが「ブリスベン・グローバル・ラグビー・テンズ」。豪州とニュージーランドのスーパー・ラグビー(SR)チームの全て、そして、南ア、日本、フランス、サモアからも参戦があり、計14チームが一堂に会して、エキサイティングなトーナメントを2日に渡って戦う。

 大会に参加するフランスの強豪トゥーロンの一員として、五郎丸歩(30)がブリスベンに戻ってきた。

 1年前の2月6日にレッズ入団のためにブリスベン空港に到着。今回は、フランスから2月7日の早朝に到着したのは非常に印象的だ。その1年で、五郎丸のラグビー人生は、日本のトップリーグからSR挑戦でレッズ入団、サンウルブズ戦での骨折、フランス移籍、リハビリを経てTOP14デビューと激動した。本人にとってもラグビー人生の中でも非常に大きな意味を持つ1年になったことは想像に難くない。

木曜日の練習でチームメイトと汗を流す五郎丸(Photo:Nino Lo Guidice)

木曜日の練習でチームメイトと汗を流す五郎丸(Photo:Nino Lo Guidice)



 木曜(9日)の夕方、トゥーロンの練習後に行われた練習場となった地元クラブのファンとの交流会に、自宅からさほど遠くなく、息子のサッカー練習が急遽キャンセルになったたこともあって息子と連れ立って駆けつけた。子連れのプライベートだったので目立たないようにしていても、日本人が数えるほどしかいなかったこともあって嫌でも目立つ。すぐに見つかてしまった。約8か月ぶりに会った五郎丸はブリスベンにいた頃より間違いなくリラックスして見えた。

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「すいません、今日は取材じゃないんで、こんな格好で……」と、Tシャツに短パンというラフな姿を詫びつつ、そのまま、しばし立ち話。そこでの内容は、オフレコである以上は何も書かない。プライベートだからと息子との写真まで撮ってもらった。止せばいいのに周りに促されるままに、自分までもツーショットで写真に収まった。こんなことをしたのは初めてだが、久しぶりの再会だったので良しとする。

多くの地元ファンにサインや写真を求められるなどブリスベンの地での“Goro”の人気は健在だ(Photo:Taka Uematsu)

多くの地元ファンにサインや写真を求められるなどブリスベンの地での“Goro”の人気は健在だ(Photo:Taka Uematsu)



久しぶりに直接話しを聞いて、常に日本ラグビーの先頭を歩み続ける男の存在感の大きさをあらためて感じた。チームメイトで、豪州代表のベテラン、ドリュー・ミッチェルなんかと肩を並べても負けない何にも動じない風格がある。それこそ、“SR経由TOP14行き”という日本人では他に例を見ない道を切り拓く男の強烈な存在感というものだろう。

goro4.jpg GC出身でかつてレッズでもプレーしたジェームズ・オコナ―(左)と、こちらもレッズに所属していたドリュー・ミッチェルのいずれも豪州代表のスター選手でトゥーロンで五郎丸のチームメイトだ(Photo:Taka Uematsu)

goro4.jpg GC出身でかつてレッズでもプレーしたジェームズ・オコナ―(左)と、こちらもレッズに所属していたドリュー・ミッチェルのいずれも豪州代表のスター選手でトゥーロンで五郎丸のチームメイトだ(Photo:Taka Uematsu)



翌日(10日)は、取材者として大会の前日イベントに赴いた。この日も暑い。半野外の会場は、ステージを前に14チームの全選手が集い、人いきれが充満していた。壇上には、ラグビー界の多くのレジェントが上がり、大会をアピールする。その進行を見守る選手団の中には、五郎丸以外にもパナソニックから参加の山田章仁、ホラニ龍コリニアシ、児玉健太郎、今季のSRでレベルズに加入したアマナキ・マフィなどの新旧の日本代表が顔を揃えた。イベント終了後、メディア対応までの時間、五郎丸はパナソニックの選手たちが座るエリアに自ら歩みよって、しばし、談笑。久々に顔を合わせる仲間の前で、五郎丸にもリラックスした表情が見られた。

パナソニックの選手たちと談笑する五郎丸(Photo:Nino Lo Guidice)

パナソニックの選手たちと談笑する五郎丸(Photo:Nino Lo Guidice)



 次回は、「二日間のラグビー天国」と謳う大会の様子と、五郎丸を始めとした日本人選手の活躍ぶりを豊富な写真と現地からの情報満載でお届けできればと思う。

◇五郎丸インタビュー
(2月10日・ブリスベン市内 サウスバンク・ピアッツァ)

──今日も暑いですが、気候面の調整は?
「いや、本当に暑い(移動、時差、温度差などの諸条件を考えれば)トゥーロンが一番大変」

──移動は、そんなに大変でしたか。
「トゥーロンからパリまで電車。そこからドゥバイまで飛んで、乗り換えてブリスベン。24時間以上掛かった。着いたのは火曜日(7日)の朝」

──週末はかなりの酷暑が予想されますが。
「(38度?)僕らは干からびますよ(笑)」

──テンズは初めてですが、今大会への意気込みは?
「(フランスのTOP14で、)あまり出場機会がないので、試合のフィットネスを戻すためにとても大事な大会だと思う。数少ないチャンスをものにするために、しっかり準備して臨みたい」

──テンズでは、キックがすべてドロップキックで40秒以内とされるが、そのあたりを含めての対策は。
「ルールなのでアジャストするしかない。(何か特別にキックの準備をするとかは?)それは全然ない」

──テンズの特別な準備/対策は?
「やってない。大会のことも良く分かってなくて、急に行くぞって感じだった(笑)。こっちに来てから合わせている感じ」

──テンズの印象は?
「相当ハードだと思う。(イメージとしてはセブンスに近い?)そう思う。ボールが動いている時間が長く、南半球勢の方が得意な感じ。トゥーロンにとっては、楽な戦いではないが良い経験にはなる」

──チームも本人も未経験のテンズの大会に参加することの意義、トップ14のシーズンへの良い影響があるのか。
「ここに派遣された選手は、全員、良い経験になると思って来ているし、スカッドには若い選手も多く、フランスを出たことのないような選手もいる。そういうチームが豪州に来られるという意味は大きい」

──ブリスベンにこういう形で戻ってくることいなっての率直な感想は。
「レッズに来たのがちょうど1年前で、そのことを思い出して、もう一年が過ぎたんだという感じ」

──そろそろ、フランスのシーズンが終わったその先を考え始めるタイミングなのか。
「いや、まだシーズンが半分ほど終わったばかりで、まだ早い。全然考えてない。今は残りの試合のことを考えるだけ」

──先ほど、パナソニックの選手と腰かけて談笑していたが、どんなことを話していたのか。
「いや、ただの世間話。同じホテルに滞在しているし、朝食も一緒に食べた。山田(章仁)とか同期だし、他にも何人か同期もいる。同期がどんどん少なくなってきているので『何歳までできるかな』みたいな、そんな話(笑)」

──若い選手の台頭が日本ラグビーには必要だと言っていたが、その考えは変わらないか。
「いや、(若い選手は)出てきてはいると思う。でも、なかなかそこにフォーカスが当たらないというのが現実だと思う。自分に与えられた仕事を各々がきちんとやっていけば、良いW杯になるだろうし、その先の五輪と、日本のラグビーも色々変わってくるのではないかと思う」

──ご自身のビジョンには、19年W杯がはっきりと描かれているのか。
「現段階ではあまりない。まずはフランスで自分ができることを確実にやっていくだけ」

──日本人ファンへのメッセージを。
「色んな国からチームが集まったし、素晴らしい大会になる。そこに日本代表としてのパナソニック、トゥローンの一員としての僕が参加している。そういう世界レベルでの日本人の活躍を目の当たりにして応援してもらえると有難い。また、現地でしか味わえない会場の雰囲気だとか、その場所の文化とかを感じてもらいたい」

──出場機会に飢えている状態で臨むこの大会で、暴れる、荒ぶる五郎丸が見られるのか。
「(笑)そうですね。頑張ります!」

(取材:植松久隆(ライター/日豪プレス特約記者、写真:Nino Lo Guidice/Taka Uematsu)

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