【視点】日本代表、勝って兜の緒を締めよ──アジアカップ

 サッカー日本代表は、12日、ニューカッスルでパレスチナと対戦。4-0の完勝で、5度目の戴冠を狙う大事な大会をまずは無難にスタートさせた。

 パレスチナ人やそのファンには悪いが、パレスチナの実力が参加16か国中で一番劣るのは分かっていた。パレスチナは、そもそもが「AFCチャレンジ・カップ」枠での出場(筆者注:AFCチャレンジカップは、AFC加盟国の中でFIFAランキング下位のナショナルチームによるサッカーの国際大会。パレスチナはそこで優勝してアジアカップ出場権を掴んだ)で、参加のステータスそのものが“チャレンジャー”だ。そんな相手を迎えての試合、結果も予想の範疇に収まった。 

試合前、盛り上がるパレスチナのサポーター席(撮影:馬場一哉)

試合前、盛り上がるパレスチナのサポーター席(撮影:馬場一哉)



 この日のスタンドでは、国として苦難の道を歩んできたパレスチナの人々が自らの代表チームに惜しみないを声援を送る姿が見られた。自国の代表が、アジア王者の日本と公式戦で顔を合わせること自体が快挙で、スタンドには結果に関わらず、誇らしげにパレスチナ国旗がはためき続けた。

 スタンドの人々のピュアな思いとは裏腹に、ピッチ上のパレスチナ選手は、かなりラフだった。プレーの端々に才能の一端を見せるのだが、やはり完成度では日本の選手とは拭えない差がある。その違いを何とか埋めるため、手を使い、足が遅れて出てとなった結果、パレスチナには試合を通じて非常にラフプレーが目立った。

 審判が流した幾つかのファウルは、カードが出てもおかしくなかった。レッドカードは、結局、後半25分の1枚だけだったが、相手選手がスパイクの裏を見せて武藤嘉紀の腹部にタックルしたシーンなどは、レッドカードが出なければおかしい悪質なファールだった。
 そのパレスチナと初戦を戦った日本にとって、この試合はほんのスタートに過ぎない。日本が国旗をはためかせるのは、決勝に勝利してアジア王者となる1月31日のスタジアム・オーストラリア(シドニー)のメインポールである。

 “キング・オブ・アジア”として、すべてのチームの目標になる存在としてオーストラリアに乗り込んできている日本代表は、相手がどうあろうと、違いを見せて、勝つことが義務付けられている。それが日本代表に、自国民、そしてアジアのサッカーコミュニティが求める”あるべき姿“である。

試合後「自分としてはまだまだこれから」と語った本田圭介選手(撮影:馬場一哉)

試合後「自分としてはまだまだこれから」と語った本田圭佑選手(撮影:馬場一哉)



 この試合は、ベストメンバーで臨んだ日本。そのメンバーが、前半のうちに3点を取ったことは大きい。前半の圧倒的な戦いぶりには、その“あるべき姿”が多少なりとも見られた。しかし、後半始まってすぐのダメ押しの吉田麻也の4点目のゴールが入った後は、選手が意図的にギアを1つ落としたのか、試合運びにメリハリがなくなり、ピッチ上からやや弛緩した空気が漂ってきたように感じた。

 追加点の決定的なチャンスも幾つかあったものの、相手GKの好守にはばまれるなどで、結局は5点目を挙げることなく、どこか“試運転”のような雰囲気が拭えないまま90分が過ぎた。王者としての貫録を示すには充分の結果だったとは思うが、どこか相手に情けを掛けてしまったかのような後半の戦いぶりには、味の悪さを感じずにはいられない。

 日本戦の後、今後の対戦相手となるイラク対ヨルダン戦の試合を見た。いずれのチームも、フィジカル面でもテクニック面のどちらをとっても個のレベルはパレスチナを大きく上回る。どちらとの試合も楽な戦いにはならないだろう。パレスチナと違ってイラクもヨルダンも、日本戦には「打倒日本」を実現しようという強い気持ちで臨んでくる。その強いモチベーションでぶつかってくる両国相手の試合で、もし、一瞬でも今日の試合のような弛緩した空気が流れたなら、それが命取りになる可能性すらある。

 筆者ごときに言われなくても選手たちが一番良く分かっているだろうが、あえて言いたい。

「勝って兜の緒を締めよ」―アジア王者への道は簡単な道のりではない。もちろん、意図的なものではなかったろうが、緩い空気は、もうこの日限りにしてもらいたい。

 4-0という“完勝”の後に、あえて苦言を呈してみる。

(本紙特約記者・植松久隆)

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