【視点】 “暑さ”と闘った亜熱帯の夜 

 

ブリスベンは暑かった。日本代表がブリスベンの町に到着するのを待つかのように、気温と湿度はうなぎのぼり。試合当夜も、湿度は軽く80パーセントを超えていて、何をしなくてもじんわりと汗ばむくらいの蒸し暑さ。スタンドで見守る側がそうだったのだから、ピッチ上の選手が体感したものは推して知るべし。

実際、昨晩の気候は試合内容に大きく影響した。後半に入ると、日本とイラク両軍の選手たちの運動量は著しく落ちた。試合中にもドリンク・ブレイクが2度ほど行われる程の暑さは、ピッチ上の選手たちにダメージを与え、試合を殺してしまった。

試合後の会見で、この暑さに関して、筆者は日本代表のエース本田圭佑に「代表の到着を待ち構えていたかのように跳ね上がった、このブリスベンの気温と湿度は自身とチームのパフォーマンスにどう影響したか」という質問をぶつけてみた。

本田はうなずきながら質問を聞いたうえで、「夏場の試合は、チームとしてスピーディーなサッカーがやりにくい。そうなることで、見ている側も退屈になると思うが、条件は相手も同じ。(日本が)バテていると見えても、相手だってバテている。そういった駆け引きを、選手同士では前向きにとらえながら、試合に勝てるように戦術を練ってプレーするようにしている」と答えた。

確かに、日本の流れるようなパス・サッカーの片鱗は見ることができた。しかし、蒸し暑さが選手の体力を思った以上に消耗させたことで、特に後半に顕著だったように、1つひとつのプレーにキレを欠いた。本田自身がコメントしたように、スピーディーな展開はほとんど見られず、日本の良さはピッチ上で存分に発揮されたとは言い難い。

サッカーに「たられば」は無い。しかし、あえて言えば、適度な温気候条件な下でこの試合が戦われたならば、同じ結果が出たとは思わない。本田がポストに阻まれた3本のシュートのうちのいくつかは、ゴール・ネットを揺らしたに違いない。暑さでの消耗が本田のプレーの精度をミリ単位ながら狂わせたと書けば、大仰だろうか。

90分間のタフなコンディションを耐えて、1-0の勝利で勝ち点6は積み上げた。しかし、この過酷な蒸し暑さの後に残ったのは徒労感だけだ。季節が逆の南半球での大会で、当然ながら暑さ対策に抜かりはない。しかし、セスノックからニューキャッスルを経て、たどり着いたブリスベンで待ち構えていたのは、想定外の暑さだった。この予期せぬ暑さの中で戦うことを強いられた選手達の疲労が、次の20日のヨルダン戦までにどれだけ回復するか。そこが、間違いなく次戦の大きなカギになってくる。次で負けるようなことがあると、同グループのもう1試合の結果によっては、まさかの予選敗退の可能性すら残る。

日本はこんなところで足踏みをしてはいられない。“キング・オブ・アジア”たる日本が、目指すものは、ただ1つ。このトーナメントの頂点にたどり着いてのタイトル防衛だけなのだから。
 
(本紙特約記者 植松久隆)

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