「公立学校付き聖職者制度は不要」

キリスト教団体側から政権批判の声

 キリスト教系私立学校出身者の多い保守連合閣僚にとって、ジョン・ハワード元保守連合政権が施行した「公立学校付き聖職者制度」は当然と感じられるかも知れないが、政教分離を原則とする現代の民主国家で、しかも多文化主義を国是として様々な宗教信者や無信仰者、無神論者の国民を抱える現代オーストラリアでは、制度への反対も多い。しかも、トニー・アボット保守連合政権は、公立学校付き聖職者制度に予算を割きながら、大学で資格を得た専門のカウンセラーに対する予算を廃止しようとしている。先日、連邦高裁でこの制度を違憲とする判決が出たが、これは「州政府の管轄である公立学校に連邦政府が直接予算を交付すること」が違憲とされただけで、公立学校付き聖職者制度そのものには触れていない。

 しかし、6月25日にはシドニーの「英国教会教育委員会」のブライアン・カウリング理事長の「公立学校に聖職者を置くことの有効性は証明されていない。それよりも学校生徒の肥満問題や福利、精神衛生などへの取り組みに予算を使うべきではないか」と、制度継続を考えているアボット政権を批判する発言が報道されている。

 NSW州教育省でカリキュラム編成の長を務めたことのあるカウリング博士は、「公立学校の長期的目標は現在の聖書授業も廃止し、世界観と倫理の授業を設け、生徒に様々な宗教について教えることではないか。現在の学校にとって最優先課題は何かと問わざるを得ない。そうすれば、ほとんどの人は、生徒の福利、肥満解消、精神衛生と答えるはずだ。確かに政府にとって現在のプログラムを廃止することは難しいだろうが、それは言い訳にはならない。私の知る限り、現在の公立学校付き聖職者制度の有効性を示すちゃんとした研究結果はない」と語っている。

 これに対して、「全国学校付き聖職者協会」のピーター・ジェームズ氏は、「大学の2件の研究で聖職者の効果が裏付けられている」と反論しており、またNSW州カソリック教育委員会は、「お互いの合意で始められたプログラムを中途で廃止することは公正ではない」とのみ語っている。一方、NSW州教職員組合のモーリー・マルヘロン議長は、「教職員は一貫して学校付き聖職者制度に反対してきた。この制度は教会への公的資金の抜け道であり、社会的にも教育的にも何のメリットもない」と語っている。(NP)

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