【特別対談】ジュリア・ギラード元首相、東日本大震災5周年

g1-top1

 2月上旬、オーストラリア連邦元首相のジュリア・ギラード氏が在シドニー日本国総領事館を訪問した。東日本大震災から5周年の節目に日本人に向けてメッセージを届けるためだ。ギラード氏は2011年4月23日、世界中のどの国の閣僚よりも早く被災地である宮城県南三陸町を訪問し被災地の人々に希望を与えた。また国家間でも復興支援の名目で自然資源やレアアースなどの安定供給を約束するなど日本への惜しみない援助を約束してくれた。
 今回ギラード氏は、震災以降被災地の子どもたちをシドニーに呼ぶ保養プロジェクトを行っているレインボー・ステイ・プロジェクト(シドニー日本クラブ公認)の活動に賛同する形でメッセージを届けてくれることになったが、日豪プレスではこの機会にギラード氏、高岡正人・在シドニー日本国総領事、そしてレインボー・ステイ・プロジェクト代表の平野由紀子氏の対談を企画した。

取材・写真=馬場一哉(日豪プレス)

──今回、レインボー・ステイ・プロジェクトの尽力でこのような集まりを実現することができ感謝しています。平野さんありがとうございます。
平野「とんでもないです。こちらこそジュリア・ギラード・元豪連邦首相、高岡正人・在シドニー日本国総領事にお集まりいただき感謝の念に堪えません」
──さて、まずはギラード氏へに感謝の言葉をお伝えさせていただければと思います。
被災地の現状をギラード氏に語る高岡正人総領事
高岡正人(以下、高岡)「震災から5年というこのタイミングでお越しいただけたこと、そして日本とオーストラリアの関係においても多大なご尽力をいただき本当にありがとうございます。ギラード氏は約5年前、震災直後に南三陸を訪れてくださいました。各国の首脳の中で最初に被災地を訪れてくださったことは多くの日本人の記憶に残っていることと思います。昨年7月にオーストラリアを訪れた安倍晋三日本国首相も震災以来のオーストラリアのサポートを忘れないと話していました。ご支援本当にありがとうございます」
──総領事もおっしゃるようにギラード氏は2011年に南三陸を訪れました。当時、どのような思いでいらっしゃったのでしょう。
ジュリア・ギラード(以下、ギラード)「まずは今回、このような良い機会をいただけて本当にありがとうございます。滞在時のことは非常に鮮明に覚えています。菅直人元首相との会食なども有意義でしたが、やはり南三陸での滞在が何よりもたいへん衝撃的でした。状況は私が考えていたよりもはるかにひどかったです。どれだけ巨大な津波が来て建物を破壊していったか。そしてその時そこに居合わせてしまった人たちの救いのない状況。実際に見るまでそういったことは私の中ではリアルではありませんでした。しかし実際に現場に行ったことでそれらを真に理解しました。ビルの屋上に避難したにも関わらず、建物の高さを超える津波に襲われ、かろうじて柵にしがみついて生き残った方などもいたと聞いています。その鉄筋の骨組みだけになった建物も見ました。すべてにとんでもない衝撃を受けました」
被災地への思いを語るジュリア・ギラード元首相
「またもう1つ受けた衝撃は避難所の状況でした。寒い、狭いという苦しいコンディションの中、人々はショックを受けており皆、深く悲しんでいました。そんな深刻な状況を何とか乗り越え、未来を作り直すために費やしたこの5年間にそれぞれの思いがあると思います。ですが5年経って復興も進んでいると聞き非常に嬉しく思います。私にとっても被災地への訪問は国として災害に対してどのように対処すべきかなど、再考する良い機会でもありました」
──実際、復興はどの程度進んでいるのでしょう。
高岡「まだたくさんの避難者がいることはまず最初にお伝えしなければなりません。そんな中でも被災地の産業の中には前向きな動きがどんどん増えてきています。安倍首相も話していますが、岩手県では震災を乗り越えた奇跡のしょう油と呼ばれるしょう油のフランスへ輸出が始まりました。また、漁網を編む宮城・気仙沼の伝統は手編みのセーターへと生まれ変わっています。さまざまな新しい産業が、東北で育っている状況です。政府は被災地支援に引き続き積極的で安倍首相の訪問もすでに25回を数えております」
ギラード「25回。それはすごい。それに人々がさまざまな創造の力によって事態を好転させていることは素晴らしいと思います」
高岡「復興と言ってもひと言でいうのは難しい。いろいろな努力の形があるわけです」
ギラード「持続可能な方法を見つけ出すことで過去を取り戻してほしいですね」
──ギラード氏がご自身の政権の時に東北地方の学生のオーストラリア留学の支援などをされていたと平野代表から聞いています。
平野由紀子(以下、平野)「私はレインボー・プロジェクトという保養プロジェクトで福島の子どもたちを毎年シドニーに招待しています。ギラード氏も東北の学生をNSW州の学校に留学をさせるなどの活動をしたと聞いています」
ギラード「私自身が個人的に支援したわけではないですが、さまざまな組織や学校で学生を招待するなどの活動を行いました。また、姉妹校同士でのエクスチェンジなどもありましたね」
平野「そういったオーストラリア政府の支援は同じような活動をしている日本人として本当に重要で嬉しいことです。オーストラリアの方々のこの5年間の温かいサポートを本当にありがたく思っています」
ギラード「そういった活動にはお互いにとっていろいろといい結果をもたらすものだと思います。日本とオーストラリアのつながりは今でも非常に深いですが、こういった活動によりさらに双方の深い理解につながるでしょう」
平野「実はそういったプログラムでオーストラリアに留学した学生が、2年前、レインボー・プロジェクトのボランティアとして手伝ってくれたということがありました。そういう風に行動がつながっていくのだなと思いました」
ギラード「それは本当に良かったです」
レインボー・ステイ・プロジェクト代表の平野由紀子氏
──今回、ギラード氏からは3月11~12日に行われる復興支援イベントに向けてメッセージをいただけるそうですね。
平野「はい、今回実際に震災の起きた日本時間午後2時46分に福島とシドニーをつなぎます。ギラード氏のメッセージもその時に流す予定でいます」
ギラード「その時期、私が直接イベントに行ければ良かったのですが、どうしてもアメリカに行かねばならない予定があり参加できないのです、そのため、コメントを事前収録する形となってしまいましたが、確実に届いてくれることを願っています」
──メッセージはイベント当日にお聞かせいただきたいと思います。最後に日豪プレスを読んでいる日本人の読者に向けてコメントをいただけましたら幸いです。
「私はこれからも日本という国、日本の人々のことを深く考えるでしょう。2011年4月に被災地を訪れた際に感じた気持ちは今でも忘れがたく貴重で今も常に私と一緒にいることを感じます。巨大な悲劇の後、この5年間でたくさんの涙があり、悲しみがあったでしょう。一方で進んだこともまたあるはずです。私は皆さんのことを忘れません。復興を目指し、新しい未来をぜひ作っていってもらえればと思います」
──本日はお忙しい中本当にありがとうございました。
(2月5日、シドニー総領事公邸で)
■東日本大震災5周年イベント
日時:3月11日(金)4PM~、12日(土)10AM~
会場:St Matthews Church, 1 Darley St., Manly NSW
料金:11日は無料、12日は$20(15歳以上)
問い合わせ:tohoku2016@gmail.com
Web: www.tohoku2016.com Facebook: www.facebook.com/events/916441931773977

「東日本大震災5周年・特別インタビュー/石川綾子さん(プロ・バイオリニスト)」はこちら ▶▶▶

新着記事

新着記事をもっと見る

NICHIGO CHANNEL

新着イベント情報

新着イベントをもっと見る