豪首相、パプア・ニューギニア訪問

マヌス島難民収容所視察は予定なし

 3月20日、トニー・アボット連邦首相がパプア・ニューギニア(PNG)のポート・モレスビーに到着した。アボット首相はピーター・オニールPNG首相の招きに応じて今回の訪問になり、会談の話題を貿易、投資、インフラストラクチャに限定するだろうと見られている。

 同国司法制度は、PNG国民に世界水準の司法経験者がいないため、同国最高裁所長その他の司法最高責任者にはオーストラリア人の判事経験者らが務めていたが、PNG政府が突然一人を罷免し、他の一人も、「PNG司法制度は機能していない」と批判して辞職するなど、政府の政治的介入に揺さぶられている。また、アボット首相は、先日暴動が起き、収容者多数が死傷した豪領外難民収容所のマヌス島難民収容センターは視察しない。ただし、収容センターで最初に収容者が騒いだのは、半年以上経ってもまだ1件も難民認定申請処理が進んでおらず、PNG側が収容者に対して、「難民認定されてもオーストラリアにもPNGにも定住できない」と説明したことが発端になったと報道されており、両者が避けて通れない課題でもある。

 3月にはスコット・モリソン移民相もPNGを訪れた後、「両国は地域再定着協定でもっと作業を進める必要がある。前労働党政権とPNG政権の間の取り決めはほとんど白紙だった」と発言している。しかし、オーストラリア国立大学の開発政策センター所長のスティーブン・ハウズ教授は、「収容センターは両首相にとって難しい問題だ。PNG国内で収容センターについて対立が高まっている。認定作業が進んでおらず、難民と認定された者をPNGに定着させるつもりがあるのかどうかもはっきりしていない。豪政府はPNGの協力を望んでいるが、PNGにとっては、オーストラリアからさらに援助や妥協を引き出すための材料でしかないだろう」と分析している。

 豪政府は協定の一部としてPNG国内の各種プロジェクトに豪財政から4億2,000万ドルを投じている。それでも、PNG政府は将来も豪政府からどれだけ援助があるか不安にかられている。太平洋島嶼国はいずれも独立国家とは名ばかりでいずれも先進国の援助がなければ経済的に成り立たない。PNGの場合は今も部族抗争で殺人も起きる土地であり、治安も悪く、しかも政治や司法は形ばかりで十分に機能していない。そのような島国に西アジアから中東にかけての宗教も教育も異なる人々を集団的に定着させることは将来に禍根を残すおそれがある。しかも、PNG政権自体が危機状態にあり、アボット首相にとっては何の交渉の手札もない状態での両首相会談となる。(NP)

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