「偏狭の権利を守る」とブランディス大臣

人種差別発言禁止条項廃止主張

 保守連合連邦政権は、「人種差別禁止法」の差別発言禁止をうたった18C条の廃止に一種政治生命を賭けた状態にある。ユダヤ人、イスラム教、中国人など多くの少数派民族団体が廃止に反対しており、保守連合議員にも採決では議場を横断し、野党労働党側に座る意思を明らかにしている者もいる。

 ジョージ・ブランディス法務長官は、保守連合政権閣僚の決定として同条項廃止を推進しており、「偏狭でいる権利を守る」と公言している。そもそもこの条項は、何人または何人の集団を、その人種民族を理由に公に「攻撃し、侮辱し、屈辱を与え、または威嚇する」ことを禁止するもので、現実にはオーストラリア社会ではこの禁止条項の「加害者」は白人成人男子でメディアなどで発言力を持つ者であるのが通常であり、被害者は少数民族の個人または集団である。一つにはオーストラリア社会で公に人種民族を理由に誰かを攻撃し、侮辱し、屈辱を与え、威嚇することができる立場にいるのは政界でもメディア界でも芸能界でも学界でも大多数を占めている特権階級的な白人成人男子である。この状態は多文化主義が続いても当分変わらない。保守連合がこの18C条廃止で守ろうとしているのは他でもない社会的強者の「偏狭でいる権利」であり、多くの少数民族団体が廃止に反対するのも集団的な民族差別被害の経験から、保守連合が弱者の権利に無関心であり、その危険を見抜いているからだと容易に想像できる。

 2011年の裁判で、保守派コメンテータのアンドリュー・ボルト氏が2009年に書いた新聞投稿で、アボリジニ学者らを名指しで「アボリジニと名乗ることで優遇制度を利用する肌の白いエセアボリジニ」の主旨の攻撃を行った。連邦裁は、ボルト氏が悪意を持った原稿を書き、数多の事実誤認は著述業者としてずさんのきわみと決めつけた。これに対して、ボルト氏は、「オーストラリアの言論の自由にとって悪夢の日」と発言している。ブランディス法務長官は、「18C条廃止で、あの裁判のようなことは二度と起きない」と発言している。

 野党労働党のマーク・ドレイファスは、「ブランディス上院議員の発言は、オーストラリアで人種憎悪発言に青信号を点すもので、非常に危険な政策だ」と批判している。これに対してブランディス大臣は、「ボルト氏には自分の意見を自由に述べる権利がある」と反論している。また、タニア・プリバセク労働党副党首がトニー・アボット首相に対して、「法務長官の、偏狭でいる権利発言を支持するか?」と質問したが、アボット首相は答をはぐらかした。(NP)

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