「学費上昇はありえない」と教育相

大学側の試算に反論するも根拠なし

 6月1日、保守連合政権の予算案に基づく国内大学の学費試算が発表された。予算案では、政府の大学予算を段階的に縮小し、20%引き下げることになっており、それと同時に学費の規制を廃し、大学が自由に学費を決められるようにするとしている。それと合わせて、民間カレッジなど高等教育にも予算を広げるとしている。基本的な考えとして、クリストファー・パイン教育相のイデオロギーである教育の民営化を主軸として、高等教育の連邦政府責任を軽減し、大学の独立採算制を強め、学生の受益者負担比率を大きくするということになる。

 5月31日日付でメルボルン大学のグリン・デービス副学長が職員に送った電子メールによると、「政府予算案に基づけば、学費はコースにより、61%引き上げなければならない。学生はこの学費値上げで何の新しく得る物もない」と述べていると報道されている。また、他の大学の試算でも医学部などのように学生一人あたりの教育経費の大きい分野では学費が倍以上に跳ね上がることも予想している。

 これに対して、パイン教育相は、「大学が法外な学費を要求すれば入学志望者が減り、その学部は猛烈な市場競争ではじき出されるだけだ。たとえばメルボルン大学が何倍もの学費値上げをすれば、モナッシュ、ラトローブ、ディーキンの各大学が価格競争を始め、学費を押し下げる結果になるだろう。個別の副学長発言にいちいち反論するつもりはないが、競争により学費が押し下げられ、質の面でも価格の面でも学生が利益を得ることになるだろう」と語っている。

 ビル・ショーテン野党労働党党首は、「学費は上がらないと言いながら、教育相もトニー・アボット首相も学費が大幅に上がらないと確約することもできないではないか。なぜ確約しないのか。なぜなら、彼らも学費が跳ね上がることを知っているからだ」と批判を加えている。

 シドニー・モーニング・ヘラルド紙のロス・ギティンズ経済編集長は、「大学にはパイン教育相が想定しているような自由な市場競争の原理は成り立たず、従って競争により商品価格が下がることにはならない。また、大学は質で競争しても価格で競争する分野ではない。ジョン・ハワード保守連合政権期に起きたように、学費が低ければ保護者や子弟は質も低いと予想し、学費の高い大学に入学しようとするから、結局すべての大学が一様に学費を引き上げる結果になる」と分析しており、アボット首相やパイン教育相の発言に首を傾げている。(NP)

新着記事

新着記事をもっと見る

NICHIGO CHANNEL

新着イベント情報

新着イベントをもっと見る