ブルカ論争にアボット首相が鶴の一声

多民族住民の接戦区支持率考慮

 ムスリム社会の女性の頭巾には頭と首だけ隠すスカーフのようなヒジャブから全身を覆い、目のところだけベール生地で外が見えるようになっているブルカまで何種類かある。頭巾そのものは世界的に珍しいものではない。

 しかし、オーストラリアでは主としてキリスト教徒の間のムスリムに対する反発や偏見が強く、トニー・アボット首相も「ブルカを見るとぎょっとする」と告白している。政界では特に保守派議員が、街頭を含めて公共の場でのブルカを禁止しろという主張をしばしばしてきた。ブロンウィン・ビショップ現下院議長もその一人である。また、パーマー統一党のジャッキ・ランビー上院議員は議会でブルカ禁止演説をした。

 さらに与党保守連合超保守の平議員が、「連邦議事堂内でのブルカ着用を禁止しろ」と主張し、アボット首相のピータ・クレドリン首席補佐官が議員に電子メールを送り、「宗教的な主張を抑え、議事堂内の警備問題一本に絞れ」と指示していたことが明るみに出た。クレドリン首席補佐官は大臣を叱責し、縮み上がらせるほどの権力を振り回しており、そのため、アボット首相は何らかの発言をせざるを得ない状況に追い込まれていた。

 現実には、議事堂消息通が、「議事堂内でブルカを見たことはない」と発言しているくらいで、ムスリム住民の多いシドニー首都圏西部の町でもヒジャブ着用の女性は見かけるが、ブルカの女性を見ることはほとんどない。その人達がキャンベラの連邦議事堂を見学に来ることはさらにまれというのが実情だ。イスラム過激派テロ事件を奇貨とした超保守派議員がもともとほとんど起こらないことに大騒ぎしているという状況になっている。

 さらに、連邦上下院の両議長が、ブルカの議場内禁止や完全ガラス張りの傍聴席のみ立入を認めるなどの措置を検討していることが報道されると、アボット首相が、「議事堂内の公共空間については常識的な措置で十分。検問所で女性警備員に顔を見せた上で議事堂内を歩けるようにすればいい」と両議長に指示する考えを明らかにした。また大臣2人も、「顔のかぶり物で国民を差別することは問題」と発言しており、平議員にもこれを支持する人たちがいる。一方、議事堂事務局(DPS)では、「顔のかぶり物を着けた人はガラス張りの傍聴席に座ってもらうことで顔を出す義務を免除できる」と発表している。

 Tim Soutphommasane民族差別問題コミッショナーは、アボット首相の指示を歓迎し、「今回の議員達の主張が危険な前例になるのではないかと危惧する市民も多い」と発言した。また、ビル・ショーテン労働党党首は、「アボット首相は率先して動かず、みんなの後をついているだけではないか」と批判している。アンドリュー・ウィルキー無所属下院議員は、「保守連合議員の提案は宗教アパルトヘイトだ。完全に間違っている」と厳しく批判している。さらに、ムスリム婦人協会のマハ・アブドCEOは、「ブルカを禁止すれば、一部のムスリム女性が外に出なくなるだけだ。また、イスラム教の衣料を着けた女性が攻撃されたり、差別される事件が増えている。女性がどんな衣料を身に着けようとそれはそれで尊重されるべきだ。警備問題があるのなら、私たちが協力的に話し合うことで解決できることではないか」と発言している。

 シドニー首都圏西部選出の与党議員は、保守連合議員の反ムスリム発言が野放しにされるとイスラム系有権者の支持票を失いかねないと危惧していることも報道されている。(NP)

http://www.abc.net.au/news/2014-10-02/abbott-seeks-to-overturn-parliament-burka-restrictions/5787072

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