防虫剤から常温クォンタム・コンピューティング開発の道

ナフタリンを焼いてできる炭素が開発の未来を握るカギに

 衣類を虫から守るナフタリンは「亀の甲」と呼ばれるベンゼン環2個がくっついた形の炭化水素で、昇華性と強い匂いが特徴になっている。このナフタリンを焼いてできる炭素粉末が、これまで開発が進められてきた絶対零度(摂氏マイナス273度)近くで稼働させるクォンタム・コンピューティングとは異なり、常温でクォンタム・コンピューティングが可能になるかも知れず、この分野の未来を握るカギになる可能性がある。

 ABC放送(電子版)が伝えた。

 クォンタム・コンピューティングが常温で可能なら市販化の道も開けてくる。シドニー大学の研究者、Dr Mohammad Choucairが共同で率いる国際的な研究チームは、クォンタム・コンピューティング開発の第一歩としてナフタリンを焼いた炭素粉末を素材とし、常温クォンタム・コンピューティングを目指している。

 この研究は、「Nature Communications」誌に掲載されており、Dr Choucairは、常温クォンタム・コンピューティングは特定の面はすでに達成されているが、用いる素材の問題がつきまとう。クォンタム・コンピュータを常温で作らなければならないということはないが、通常大気状態で使えることがどうしても必要になってくる。この新しい炭素素材は常温でのクォンタム・コンピューティングの問題を解決するだけでなく、導電性やシリコンとの統合性などを備えた素材でなければならないという問題も解決する。

 「私達の研究で、誰にでも手に入る素材を使って技術的な障害をなるべく取り除くことが可能に近づいた。それにより、クォンタム・コンピューティングが一歩近づいた。また、もっと大勢の研究者がこの分野で仕事をすれば科学の進歩に貢献することができる」と語っている。

 一部のクォンタム・コンピュータは、電子のスピンが素材の中を情報を載せて移動することが基本になっており、情報を処理する間スピンが続くことが重要な問題になる。そのため、絶対零度近くまで温度を下げることで原子間の振動を抑え、スピンを長持ちさせることが考えられている。

 新素材では、この電子のスピンの寿命を常温で175ナノ秒まで引き延ばすことができた。これは石墨のような素材に比べて常温で100倍も寿命が延びたことを意味する。(Ratei)
■ソース
Quantum computing: Mothball chemical napthalene helps technology work at room temperature

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