「すべての絶滅危惧種保護は不可能」

科学者が「保護優先順位」を呼びかけ

 国内でも最高権威とされる自然保護生物学者が、「絶滅から救える生物種と救えない生物種をトリアージ(優先順位を判定)し、救える生物種の保護に力を集中すべきだ」と発言している。これまで、「現存するすべての種と大自然を保護する」方向で進んできた自然保護運動に対して、「生き残れないものは絶滅にまかせよう」との発言は今後波紋を広げる可能性がある。

 トリアージは救急病棟、事故現場、戦場などで疾病・傷害の重度や緊急性を判断し、治療の優先順位を決めることで、タスマニア大学の環境変化生物学の権威、デビッド・ボウマン教授は、「言いたくないことだが、私たちは末期的状況にある。多くの種が絶滅寸前にある」と述べている。また、アデレード大学の気候生態系研究センターのコリー・ブラッドショウ教授は、「カカドゥ国立公園では哺乳動物が95%消え去った。グレート・バリア・リーフも何十年にもわたって生物多様性が衰えてきている。この2つの最大にしてもっとも有名で、もっとも豊富な資金で保護されてきた地域でさえこの有様なのだから、他の国立公園にはどんな希望があるのか?」と述べている。

 オーストラリア全域では、200年前のヨーロッパ人移民以降、百種を超えるオーストラリア独特の生物種が絶滅し、現在は1,500を超える種が絶滅に瀕している。アカハラワカバインコの場合、TAS、VIC、SA3州で300人ほどのボランティアが野生の環境で種を保存しようと活動している。しかし、ボウマン教授は、「このインコを保存するために懸命の努力が行われているが、この種は野生に200羽程度しかおらず、何年種を維持できるかほとんど見通しがない。近い将来に絶滅することは確実だ」と語っている。さらに、ボウマン教授は、「種保護の優先順位を人間への有用性で決めるべきではないか」と提唱している。しかし、ボウマン教授の提案には2通りの反論が出ており、そもそも優先順位をつけるべきではないとする考えと、「人間への有用性で優先順位をつけることは人間の身勝手すぎる」という考え方である。

 連邦政府のグレッグ・ハント環境相は、「絶滅危惧種については政府は3段階の計画を立てている。まず、現場で活動するチームを編成する絶滅危惧種委員会の設立。次に国土ケア・プログラムを再編し、種の個体数を回復するため、農家や地域コミュニティを支援する。3つめが15,000人の若者を動員する、グリーン・アーミーで、土地の自然回復や種回復作業に従事することで将来的な環境労働力を創出する。できる限りの種を救うつもりだ」と述べている。(NP)

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