「WAQU」オーナー兼ホール・マネジャー 西城戸嘉奈さん

豪で輝く30'sキーパーソン
タイミングと少しの勇気

日豪プレスも今年で31歳 ! ということで、オーストラリアで活躍する30代に、“活き活きと輝く”ための秘訣を聞く。


「WAQU」オーナー兼ホール・マネジャー
西城戸嘉奈さん

満を持して移転オープン

シティから車で20分ほど、日本人も多く暮らす町クローズネストに人気日本食レストラン「WAQU」はある。今年9月25日に、ファルコン・ストリート沿いの店舗から300メートルほど移動し、以前の倍近くの70席以上はある新店舗をオープンさせた。当初から本格的な日本の味とサービスに定評があり、その繊細かつモダンな味と盛り付け、隠れ家的な雰囲気の良さでローカル客を中心に人気を獲得してきた同店。オーナーは、「今もできる限りホールの責任者として自らお店に立ちます」と言う、弱冠33歳の西城戸嘉奈さんだ。華奢な体からは想像できない情熱と根性を秘め、夫の淳平さんとの二人三脚で今回の移転オープンへとこぎつけた。

豪で輝く30'sキーパーソン
最初に店をオープンしたころ。夫の淳平さんと

好きなことは苦と思わない

初来豪は21歳の時。サーフィンが好きだった嘉奈さんは、英語の勉強を兼ねてワーキング・ホリデーでシドニーを訪れた。1人でラウンドも経験し、目いっぱい満喫した1年後に帰国。約3年は日本の不動産会社でリゾート物件の顧客担当として働いていた。

両親が会社を経営していたこともあり、ワーホリ中もいつかは何かしら自分の店を持ちたいという思いを持ち続けていた。そして2000年、接客に欠かせないホスピタリティーの勉強をしようと学生ビザで再びオーストラリアへ。学校に通いながら、さまざまな日本食レストランで働く日々が始まった。

美味しい日本食を出す店も多かったが、オージー向けに甘い味付けにしてあったり、サービスもカジュアル過ぎたり、逆に形式的だったり…といろいろな店を目にする中で、自分の目指す味とサービスへの思いが募っていった。「プロフェッショナルとして働ける場所、味・サービスともに自分が思う“ちゃんとした日本食”を提供するレストランを作りたい、と思ったんです」。

03年には、友人を介して参加したソフトボール大会で、既にシドニーでグラフィック・デザイナーとして活躍していた淳平さんと出会い、翌年3月に結婚。心強いパートナーを得て、05年9月には30歳の若さで「WAQU」をオープンする。内装デザインは淳平さんが担当、店の照明を自分たちで作るなどの工夫で多少の資金不足はカバー。手作りでの店造りは、不安や苦労を吹き飛ばすには十分なほど充実していた。地元業者の仕事のペースが遅くオープンが遅れてしまったり、こちらも慣れていない中すぐ辞めてしまうスタッフがいたり、苦労は多かったに違いない。だが、「夫婦ともに、好きなことをやっている時は、苦とは思わないんですよね」と振り返る。

豪で輝く30'sキーパーソン
随所に淳平さんのこだわりが光る新店舗

目標に向かって努力するだけ

そしてオープンから4年目を迎えた今年、より多くの人に楽しんでもらいたいと店舗の拡大を決意。最初に店を持った思い出深いクローズネストで店を続けようと空き物件を探していた時、たまたま見かけたのが、立地・大きさともに申し分ない今の店舗だ。「本当に何かをやりたい時は、タイミングが合うのかもしれないですね。最初のオープンの時も、タイミング良く話が進んで。あとはちょっとの勇気、それと努力、でしょうか」。

今やシドニーを代表する日本食のレストラン「東」なども最初に店を構えたクローズネストだが、シティに出店するという考えはなかったのだろうか ? 「シティは、考えなかったですね。やっぱり私がやりたいことは地元重視というか、ローカルの人たちとコミュニケーションをとりながら楽しいお店を作ることだったので」。

常に語り口にブレがない。「ネガティブなことは考えない。はっきりとした目標がある時は、努力すればできる気がして。だから失敗する時は努力する気持ちがなくなった時なのかな」と語り、「妥協はしない。目標があるからそれに向かって努力するだけなんです。体育会系なので」と笑う。

2人+1人で創る新店舗

仕事での夫婦の役割はきっちり分担されている。嘉奈さんは接客などお客に関することをすべて受け持ち、淳平さんはデザインやマーケティングを担当。最初はぶつかることもあったが、今ではお互いの分野を尊重し合っている。

豪で輝く30'sキーパーソン
1歳になったばかりの長男・豪君と

嘉奈さんから全幅の信頼を得ている夫の淳平さんも、自分の思いをストレートに表現できる今回の仕事に意気込み十分だったよう。内装のコンセプトを聞いてみた。

「基本は温かい雰囲気。お客さんがリラックスできる照明、サービスなど、カジュアル・ファイン・ダイニング独特の肩肘張らずに非日常的な雰囲気を味わえる空間を創りたかった。和の良さを持った、退屈させないシンプルさを目指しています」。

96年に独立し、印刷物やウェブサイト、店舗の内装デザインなど幅広く活躍する淳平さん。盛り付けの美しさにも定評がある「WAQU」のメニューには、グラフィック・デザイナーの淳平さんも一役買っている。味だけでなく繊細な盛り付けもやはり日本人だからできる仕事だと信じているからだ。

新店舗でも、日本食に明るくないオージーにも気軽に食べてもらえるよう、和食と洋食をうまく組み合わせた、コース中心のメニュー形式は変えていない。「日本食にこだわらずに、日本人が表現できる“おいしく、美しく、楽しんでもらえるもの”を提供していきたい。そして、いろんな意味で感動を与えたい」。

嘉奈さんは新店舗での目標をこう語った。「まずは繁盛店にする。それから私の役割は、スタッフが楽しく仕事できる環境を作ること。スタッフが楽しんでいないとお客さんも楽しくないでしょうし。この子のためにも頑張らないと」。昨年誕生し、ちょうどオープンを迎えた9月で1歳になった愛息の豪君を見つめた瞬間、それまでの力強い眼差しが少し緩んだ。

オフの日の楽しみを聞くと、「今はほとんど休みがなくて(笑)。近くの公園やビーチに行ったり、あとは家族で美味しいものを食べに行くことが楽しみでしょうか。シドニーが好きだから、ずっと住みたいですね」。今後はランチも始める予定でますます忙しくなりそうな嘉奈さんだが、お店が落ち着いたらまた大好きなサーフィンをやりたいという次の目標も教えてくれた。

新着記事

新着記事をもっと見る

NICHIGO CHANNEL

新着イベント情報

新着イベントをもっと見る