「ジャパン・タウン」仕掛け人に聞く 日本のライフスタイルをシドニーで実現したい

クラウン・グループのイワン・スニトCEO。シドニー南郊ウォータールーのショールームで完成予想模型を前に(Photo: ©Naoto Ijichi)
クラウン・グループのイワン・スニトCEO。シドニー南郊ウォータールーのショールームで完成予想模型を前に(Photo: ©Naoto Ijichi)

大手不動産デベロッパー「クラウン・グループ」(シドニー)が、シドニー南郊で開発中の高級集合住宅プロジェクト「マスタリー(Mastery)」。日本を代表する建築家・隈研吾氏がメイン・ビルディングを設計、現地で活動する日本人建築家・高田浩一氏も参画し、日本テイストのシンプルで高感度な都市空間を創造する。商業施設には日本の飲食店や小売店などを集積させる計画だ。そんな「ジャパン・タウン」構想の狙いについて、同グループのイワン・スニト最高経営責任者(CEO)に聞いた。(取材・文=守屋太郎)

風通しと日当たりの良い開放的な街造りによって「日本の洗練された都市文化とオーストラリアのアウトドア・カルチャーを高い次元で融合させた」と語るスニトCEO(Photo: ©Naoto Ijichi)
風通しと日当たりの良い開放的な街造りによって「日本の洗練された都市文化とオーストラリアのアウトドア・カルチャーを高い次元で融合させた」と語るスニトCEO(Photo: ©Naoto Ijichi)

「日本の魅力は、シンプリシティー(簡素さ)とミニマリズム(装飾的要素を最小限に切り詰めた芸術・文化の様式)だ」

そう話すスニト氏は、NSW大学(UNSW)で建築学を専攻した学生時代、安藤忠雄氏や丹下健三氏といった日本の建築家に傾倒していた。卒業後にNSW州の登録建築士となり、1996年にクラウン・グループを土木の専門家と共同で起業。ビジネスを成功させた後も、日本の現代建築への尊敬の念を抱き続けてきた。

マスタリーのコンセプトに「和」を取り入れた背景にも、そうした思いがあった。狙いを定めたのは、木材など自然の建材を取り入れたデザインで知られる隅研吾氏。同氏は中国・北京のゲストハウス「バンブー・ウォール」や東京の新国立競技場などで世界的に有名な日本建築界の巨匠だ。同社をオーストラリア指折りのデベロッパーに育てたスニト氏にとっても、憧れの存在だった。

スニト氏は「何度もメールを送り、懇願したんだ」と打ち明ける。ようやく隅氏から返信メールを受け取ったのが1年半前。熱意は伝わっていた。隅氏はプロジェクトへの参画を快諾。同社の既存プロジェクトで実績を重ねていた高田氏も加わり、スニト氏の夢は実現に向けて走り出した。

日系の商業施設のみ誘致

シドニー市内中心部(CBD)から南へ約4キロ。マスタリーの建設現場は、高層マンションの建設ラッシュに沸くウォータールーの再開発地区の一角にある。現在、1.6ヘクタールの敷地内で基礎工事が進んでいる。

隅氏がプロジェクトの中核となる20階建ての高層棟の設計を手掛け、高田氏がその内装デザインを担当した。外壁には隅氏のトレードマークと言える木材を多用し、間口の広いガラス窓から続くバルコニーには木や植物を多く配置して「垂直の森林」を演出する。この他に4つの中層棟があり、高田氏がそのうち3棟の外観とインテリアを設計した。いずれも曲線を基調とした外壁に自然の緑をふんだんに取り入れ、落ち着いた街並みのデザインとハーモニーを奏でる。

20階建てのメイン・ビルディング。最上階からの眺め
20階建てのメイン・ビルディング。最上階からの眺め

販売するのは、高層棟と中層棟を合わせて374戸。「おおむね700~800人程度」(スニト氏)が住む、緑と陽光に溢れた新しい街が誕生する。竣工は、中層棟が2020年第2四半期(10月~12月)、高層棟が21年第2四半期を予定している。

デザインに日本の建築家の感性や日本テイストを取り入れているだけではない。併設する商業施設に日本のレストランやカフェなどの飲食店、日本ブランドの小売店などの入居を計画しているのも、このプロジェクトの大きな特徴だ。現時点ではテナントを募っている段階で、店名やブランド名は明らかになっていない。だが、「オーストラリアの大手スーパーマーケット以外は、全て日本または現地の日本関連の企業や店舗に限定する」と徹底的にこだわっている。

同社は近く東京で販売説明会を開き、日本の在住者にも投資を呼び掛ける。「シドニーで活躍している日本人のヤング・プロフェッショナル(若い専門職)の人たちにもぜひ住んでもらいたい」とスニト氏。日本の現代文化やライフスタイルの発信拠点にとどまらず、日系のビジネスやコミュニティーの核となる「ジャパン・タウン」に発展する可能性も秘めていそうだ。

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