花王「アタックNeo」編 第3回

世界に誇る技術力、
サービスを通して環境問題に真摯に取り組む日本企業

花王「アタックNeo」編 第3回

省エネ・省資源効果に優れた「アタックNeo」誕生秘話
それは開発陣のあくなき努力の賜物だった…

消費者・顧客の立場にたった「よきモノづくり」が、創業以来120年続く花王の事業活動の原点です。例えば、消費者相談センターに寄せられる消費者からの声は、翌日には花王の全社員が閲覧でき、それら1つ1つの声が商品の開発や改良にも生かされているのです。豪州で「Biozet Attack Ecosmart liquid」として発売が開始され話題を呼んでいる環境配慮型の液体衣料用洗剤「アタックNeo」も、毎日の洗濯を通して消費者が感じていた思いを形にした製品。この「アタックNeo」誕生に至る開発秘話を花王オーストラリアの青木薫さんに伺いました。(写真提供=花王株式会社)

商品開発のための戦略会議、右が呉裕利子さん

 

家事をする女性の目線で開発に臨む

「アタックNeo」の大きな特長は、洗浄成分の高濃縮化によって従来製品の40%にまで容器が小さくなったこと。そのことで、生産時の省資源化や、輸送に伴うエネルギーの削減、排出されるCO2の削減に大きく貢献しています。また、洗濯の際にすすぎの回数が1回ですむので、「節水」「節電」「洗濯時間の短縮」にもつながります。「アタックNeo」は、環境に配慮された暮らしにとても優しい製品なのです。

花王は、2009年6月に「環境宣言」を発表し、積極的に環境視点での企業活動に取り組んでいます。そして、「環境宣言」のテーマとして、“いっしょにeco”を掲げ、原材料調達や生産、物流、販売、使用、廃棄など、製品がかかわるサイクルの中で、消費者をはじめ、さまざまなステークホルダーの方といっしょに実行できる、よりecoな方法を提案しています。花王は、 “いっしょにeco”を具現化した第1弾の製品として「アタックNeo」を発売しました。

この「アタックNeo」の生みの親ともいうべき人が、当時、他部署からの異動によってファブリックケア開発部門に配属されたばかりの、呉裕利子さんでした。

呉さんは、洗剤開発に関する経験はありませんでしたが、むしろそのことを強みにする−−つまり、生活者である家事をする女性と同じ目線で開発に臨もうとします。この発想の転換こそが、後のヒット商品「アタックNeo」誕生の第1歩となるのです。

新しい液体洗剤を開発するにあたって開発チームがまず最初に取り組んだのが、家事をする女性が洗濯に何を望んでいるかを知るために、いくつもの消費者宅を訪れて、普段の洗濯の様子を実際に自分の目で見て、話を聞くことでした。

すると、「洗剤を買う時は、じゃがいもや玉ねぎなど重い物を一緒に買わないようにしている」「分けて何度も洗うのは大変なので、すべて一緒に洗濯する」「もう1回回すのは時間が掛かるので、あと1枚と詰め込んでしまう」「朝は10分でも時間が惜しい」「干してから寝るので早く終わってほしい」「洗濯に使う水や電気代がもったいない」−−など、多くの女性が洗剤や洗濯に対して、大きな不満はないもののさまざまな想いを抱いていることを実感することになったのです。

開発研究員、三宅登志夫さん

 

水を減らせば小さくできる

より良い洗濯洗剤開発のために見えてきたのは、「容器のコンパクト化」「節水」「節電」「洗濯時間の短縮」などのコンセプトでした。

呉さんはさっそく商品開発のための戦略会議で、環境意識がだんだん高まってくるので社会的価値を上げるためには、次世代液体洗剤の開発が必要であることを提案。現状の1kg入り液体洗剤ボトルを半分以下に小さくし、しかも、小さくても同じ回数洗濯ができること、さらに、少量でも汚れがよく落ち、洗濯に使う水が減らせること、洗濯にかける時間を短くできることを訴えました。

液体洗剤は通常、「洗浄成分」と洗剤を液体に保つための「水」からできています。従来と同じ洗濯回数を維持しながら製品をコンパクトにする−−それは、従来洗剤に含まれる水の配合量を減らし、高濃度に濃縮した洗浄成分から成る液体洗剤を創り出すということでした。

しかし、呉さんの開発企画には大きな壁が立ちはだかっていました。液体洗剤から水分を減らせば洗剤は固まりやすくなり、洗濯では水に溶けにくくなるという、開発面での技術的限界があり、開発のGOサインを得ることはできなかったのです。

 

強力なパートナーとの出会い

新製品開発の提案から10カ月。彼女に強力な協力者が現れることになります。呉さんと同様、コンパクト化した液体洗剤を開発したいと密かに研究を進めていた花王の開発研究員、三宅登志夫さんです。スーパーマーケットの売り場で主婦が液体洗剤を重そうに運んでいるのを見て、容器のコンパクト化につながる液体洗剤の濃縮化に独自に取り組んでいたのです。

こうして消費者が求めている理想の液体洗剤を完成させるという、大きな挑戦への取り組みがスタートしたのです。

和歌山県にある花王のハウスホールド研究所で、洗い上がりをチェックする研究員

 

洗浄力の維持と泡切れの良さを両立

日々、試行錯誤を繰り返す実験の中で、三宅さんは、通常の洗濯機で2回に設定されているすすぎを1回に減らすことができれば、節水・節電・洗濯時間の短縮を同時に実現できるとひらめきます。それはつまり、すすぎの回数を減らしても洗濯物の繊維に洗剤成分が残りにくくなるようにすることでした。

水により近い性質をもつ洗剤成分は水に溶けやすいため、繊維に残りにくい性質を持ちます。しかし、油にはなじみにくいため、洗浄力が劣るという問題がありました。三宅さんはそれから数カ月にわたり、この「高い洗浄力」と「繊維への残りにくさ」という相反する技術の両立を実現するため、世界初の洗剤成分の開発に注力していきます。

しかしなかなか解決の糸口は見つかりません。そこで三宅さんは、過去に研究の中で開発したものの中に突破口となるヒントが隠されてないか、検討した洗浄成分のデータすべてを、1つずつ丹念に調べ直していくことにします。たいへんに骨の折れる作業でしたが、グループの研究員とともに、この蓄積された膨大なデータを再度確認したのです。

そしてついにそれが功を奏します。三宅さん自身が5年前に実験した洗浄成分のデータがメンバー全員の目に留まりました。その洗浄成分は当時、洗浄力をテーマに検討したものでしたが、実は高い洗浄力を持ちながら濃縮しやすく、さらに繊維にも残りにくいという、まさに探し求めていた成分のヒントがそこに隠されていたのです。三宅さんらはこれに改良を加え、ついに新洗浄成分「アクアWライザー」の開発に成功し、これが「アタックNeo」の完成へとつながったのでした。

呉さんによる、あくまでも家事をする女性の目線を大切にした製品開発の追求心、そして三宅さんによる研究者としての飽くなき探求心と誇りが結実した瞬間でした。

 

環境意識の高い豪州でも発売開始

そして2009年、新しい液体洗剤「アタックNeo」が誕生しました。「アタックNeo」は家事をする女性の心をつかみ、発売開始後1カ月で1,000万個を出荷するという空前のヒットに。さらに、環境負荷の低減に配慮した優れた製品として高く評価され、2010年には、「第7回エコプロダクツ大賞」において「環境大臣賞」を、2011年5月には、「第3回日本マーケティング大賞」において「日本マーケティング大賞」を受賞しています。 さらに花王は、同製品を環境意識の高まる海外においても積極的に展開。オーストラリアでは、「Biozet Attack Ecosmart liquid」として発売を開始しています。「とにかく1度使えば、その優れた製品特長を実感いただけるはず」と青木さん。水資源や環境問題に関心が高いここオーストラリアでも、多くの心をつかむことは間違いなさそ商品開発のための戦略会議、右が呉裕利子さんうです。

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