進出日本企業インタビュー第20回「近鉄エクスプレス・オーストラリア」

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第20回 近鉄エクスプレス・オーストラリア

坂本 真司 取締役社長

(Photo: Naoto Ijichi)
(Photo: Naoto Ijichi)

航空貨物と海上貨物、ロジスティクス(倉庫)事業を手がける日本有数の物流企業、近鉄エクスプレス(KWE)。オーストラリアでも、空、海、倉庫の物流サービスをワンストップで提供している。在豪現地法人の坂本真司・取締役社長にオーストラリア市場での戦略と展望を聞いた。 (インタビュー=ジャーナリスト・守屋太郎)

グループの世界ネットワーク生かし
付加価値高いサービスを豪州に提供

――まずは近鉄エクスプレスの概要について教えてください。2015年3月期のグループ全体の営業収入約3,270億円のうち約3分の2を海外事業が占めていて、グローバル化が進んでいますね。

坂本取締役社長。保管貨物が積まれた自社の倉庫にて
坂本取締役社長。保管貨物が積まれた自社の倉庫にて

私鉄大手の近畿日本鉄道の業務局が1948年に開始した国際貨物・旅客取り扱い事業が源流です。55年には近畿日本ツーリストに発展し、69年に香港と米国に現地法人を設立して海外進出を果たしました。70年に国際航空部門が近鉄航空貨物として独立し、89年に現在の社名に変更しました。

その後、海外展開を加速させ、現在では日本、米国、欧州、東アジア・オセアニア、東南アジアの世界5極体制の下で、34カ国の226都市に374拠点を構えています。地域別の営業収入の割合(15年3月期)は、日本36.6%、米州12.8%、欧州・中近東・アフリカ11.1%、東アジア・オセアニア26.6%、東南アジア12.3%となっています。

中でも、85年に北京に駐在員事務所を開設して以来、中国事業に力を入れ、現在、41都市に125拠点、倉庫55カ所、17法人を構えています。12年にインドに合弁の「ガティ-KWE」を設立、15年にシンガポールの物流大手APLロジスティクス(APLL)を子会社化し、中国以外のアジア地域にも事業を広げてきました。

――アジア・オセアニア地域では、日系物流大手のM&A(企業の合併・買収)を軸に再編が加速しています。KWEがAPLLを1,500億円で買収した狙いは?

APLLの取得にあたって、本社の石崎哲・取締役社長は、会見でこう述べています。「近鉄エクスプレスの航空・海上フォワーディング力(輸送能力)とAPLLが持つバイヤーズ・コンソリデーション(複数の工場で生産された商品を買い付け、船積み地でコンテナに混載することで、物流を集約する形態)などのコンストラクト・ロジスティクス(第3者の運営会社による倉庫運営)機能を組み合わせることで、顧客に新たな価値を提供できる」

買収後、KWEグループの事業比率は航空貨物35.8%、海上貨物20.6%に対して、ロジスティクスが36.5%と大幅に増えました。今後もシナジー効果の最大化に取り組んでいきます。

日本式のきめ細かいサービスに強み

――次にオーストラリア事業についてうかがいます。

91年の現地法人設立以来、今年で設立25周年を迎えました。09年には自社で通関業務を始め、11年にはロジスティクス(倉庫)事業への本格参入を果たしました。

現在、国際航空輸送、国際海上輸送、ロジスティクス・サービスに加えて、顧客のニーズに応じたサービスやソリューション(解決策)の提案、オーストラリアの市場動向に関する情報も提供しています。現在はまだオーストラリアに拠点がない企業の相談にも対応しています。

ロジスティクス・サービスでは、倉庫で商品を保管するだけではなく、倉庫内で顧客の商品を加工したり、英文の取り扱い説明書を挿入したりといったアウトソーシング業務も手がけ、高い付加価値を提供しています。

現地のクーリエ(宅配便)会社と提携して、ネット・ショッピング需要の拡大に対応したB to C(企業から消費者へ)の小口輸送にも力を入れています。傘下のAPLロジスティクスのオーストラリア法人とも連携し、例えば中国からオーストラリアに戻るコンテナの空きスペースの有効活用にも取り組んでいます。

オーストラリア市場の魅力は?

――オーストラリア市場の重要性と今後の展望について、お考えを聞かせてください。

安定した政治や経済、人口増の恩恵もあって、業績は順調に推移しています。足元の景気はやや足踏みしていますが、将来的にはまだまだ成長していくでしょう。

オーストラリア市場の最大の魅力は、長期的な人口増が予想されることです。市場規模の拡大に伴って、衣食住関連の物流需要は必ず伸びると見ています。15年に発効した日豪経済連携協定(EPA)が2国間貿易に与えるプラスの影響、日本直行便の増便も追い風となるでしょう。日本食人気を背景に、日本の食材の取り扱いも増えています。

KWEシドニー・オフィス外観
KWEシドニー・オフィス外観

KWEのグループ会社の主な顧客である欧米企業が、アジア事業を統括する拠点としてオーストラリアに地域本部を置くケースも少なくありません。そうしたグローバルな顧客との関係を維持・強化していく役割も重要です。従来は日系企業が欧米進出の足がかりにオーストラリアに進出するケースがよく見られましたが、今ではアジア進出を念頭にオーストラリアに拠点を置く欧米企業が増えているのです。

一方、オーストラリアは広い国土の割にはまだまだ人口が希薄で、労働力など人的資源の希少価値が高く、事業コストが非常に高くつきます。市場規模が小さいため、少数の大手企業が市場を寡占する傾向が強く、物流業界でも多くのプレーヤーが共存できる機会は限られてしまいます。

そうした厳しい環境の中で、KWEの最大の強みは世界的なネットワークでしょう。グループ力を生かしたグローバル規模の提案を行い、APLLとのシナジー効果で多角的にアプローチできます。日本水準のきめの細かいサービスも利点です。欧米の大手物流企業にはできない高い品質を武器に、今後もサービスの更なる向上に努めていきます。

●PROFILE さかもと・しんじ
<略歴>創価大学(文学部英文学科)卒業。1990年より10年間オランダ駐在。2010年7月より現職

<会社概要>
英文社名:Kintetsu World Express (Australia) Pty Ltd
事業内容:航空貨物、海上貨物、ロジスティクス(倉庫)事業
代表者:坂本真司
拠点:シドニー、メルボルン
従業員数:35人

<会社沿革>
1987年 駐在員事務所をシドニーに開設
1991年 現地法人をシドニーに設立
1992年 メルボルン支店開設

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