進出日本企業インタビュー第25回「トヨタ・マテリアル・ハンドリング・オーストラリア」

進出日本企業 トップ・インタビュー

第25回 トヨタ・マテリアル・ハンドリング・オーストラリア

会長 中澤 俊さん

ⓒNaoto Ijichi
ⓒNaoto Ijichi

世界屈指の自動車メーカーであるトヨタ自動車のルーツは、創業者の豊田佐吉氏が1926年に設立した豊田自動織機にさかのぼる。同社は現在、トヨタ・グループの中核企業の1つとして、繊維機械やフォークリフト、トヨタ車の生産などを手掛ける。豪州では50年間にわたりフォークリフトを販売しており、トップ・シェアを誇る。在豪現地法人の中澤俊・会長に事業戦略を聞いた。(インタビュー=ジャーナリスト・守屋太郎)

総合的な物流ソリューション提供
顧客の「カイゼン」も提案したい

――豊田自動織機の歴史について教えてください。

豊田佐吉が発明したG型自動織機を製造・販売するため、1926年に設立されました。その後、事業の多角化を進め、繊維機械、自動車(車両、エンジン、カーエアコン用コンプレッサーなど)、フォークリフトなどの産業車両、エレクトロニクスと事業を拡大していきます。

1933年には、自動車製造のための自動車部を設立し、2年後の35年に「G1型トラック」を発表しました。トヨタの自動車は、実はトラックからスタートしているのです。37年に自動車部門を分離・独立する形で、トヨタ自動車工業を設立。これが後のトヨタ自動車に発展していきます。

戦後間もない46年、連合国軍総司令部(GHQ)は日本がコメや小麦、石油などを輸入することを認めます。その見返りに、当社は織機を輸出しました。これが日本初の機械輸出となりました。

自動車用エンジン開発の技術を利用した新製品の開発を進めると、56年にはフォークリフト1号車が完成。現在では世界1位のシェアを獲得するまでに成長しました。また、カーエアコン用コンプレッサー事業も大きく飛躍し、97年には生産累計1億台を突破しました。海外展開も加速し、フォークリフト、自動車組み立てと並ぶ事業の柱の1つとなっています。

豪州でのフォークリフト販売は1968年以来、50年にも及ぶ(ⓒNaoto Ijichi)
豪州でのフォークリフト販売は1968年以来、50年にも及ぶ(ⓒNaoto Ijichi)

産業車両部門では、2000年に倉庫内フォークリフト市場で世界トップ・シェアを誇るスウェーデンのBTインダストリーズを完全子会社化し、BTが既に買収していた米レイモンド・コーポレーションも傘下に収め、産業車両のグローバル市場でトップ・シェアを獲得しています。

以前は、豊田自動織機がフォークリフトの開発・製造、トヨタ自動車が販売をそれぞれ担当していましたが、01年にはトヨタ自動車のL&F(ロジスティクス&フォークリフト)販売部門を譲り受け、自社内で「トヨタL&Fカンパニー」をスタートさせました。トヨタ・グループの中で豊田自動織機が開発・製造から販売までを一貫して担うことで、世界ナンバー・ワンの総合物流機器・システム・メーカーとしての地位を盤石にする狙いがありました。

現在の豊田自動織機には、大きく分けてトヨタの小型車「ヴィッツ」などの生産、エンジン、コンプレッサーなどを手掛ける自動車部門、フォークリフトや物流機器などの産業車両部門、繊維機械部門、エレクトロニクス部門があります。現在の世界シェアは、水の力を利用した「エアジェット織機」が31%、フォークリフトが19%、カーエアコン用コンプレッサーが43%とそれぞれトップを占めています。

創立から1世紀近く経った今も、豊田佐吉の遺訓は社是「豊田綱領」として息づいています。これを簡単にまとめると、「産業報国のために、先進的な研究を行い、質実剛健、温情友愛の精神と、報恩感謝を忘れてはいけない」というものです。これを基に、公正で透明な企業活動、社会貢献、環境保全、品質第一、顧客優先、技術革新、全員参加といった考え方が、豊田自動織機の基本理念として受け継がれています。

――豪州事業の歴史と現在の事業内容について教えてください。

1968年にフォークリフトの豪州向け輸出をスタートし、今年で販売開始50周年を迎えました。99年以来、フォークリフト全体でトップ・シェアを獲得しています。2001年にトヨタ自動車からフォークリフト販売部門を譲り受けたのを機に、豪州でも03年に豊田自動織機の現地法人「トヨタ・インダストリーズ・コーポレーション・オーストラリア」(TICA)を設立し、フォークリフトの現地販売を受け継ぎました。

その後、各州に点在していた地場の販売店を買収し、全豪15支店の販売網を構築。07年にはトヨタ・マテリアル・ハンドリング・オーストラリアに社名を変更し、本社をシドニー南西郊外ムーアバンクに移転して現在に至ります。

豪州で取り扱っている商品としては、フォークリフトの他、バッテリー駆動式の倉庫内物流機器、空港で航空機の荷物を牽引して運ぶトーイングトラクター、道路工事や農作業用のミニショベルカー、オートメーション化に対応した無人フォークリフト、などがあります。こうした産業車両の新車と中古車、周辺機器の販売、レンタル、アフター・サービスを手掛けています。

更に、昨年からは倉庫用のラック、高所作業車、清掃車などの販売も開始し、「トータル・ソリューション・プロバイダー」(総合的な物流サービス提供者)として、物流機器の「ワン・ストップ・ショッピング」を可能にしています。

――ビジネスの現況と課題、今後の見通しについて聞かせてください。

当社の受注台数は2017年に5,800台(豪産業車両協会=AITA=調べ)を記録し、シェアは41.8%と初めて40%を超えました。

実は、豪州のフォークリフトの市場規模は12年の1万8,000台をピークに縮小傾向が続いていたのですが、17年は1万4,000台まで持ち直しました。人口増加を背景に、スーパーマーケットなど小売業界の投資が活性化。物流倉庫の数や輸送量が増加していることから、フォークリフトの需要も回復してきています。

一方、課題としては、中国製フォークリフトへの対応があります。使用頻度の少ない低稼働のお客様には、中国車の需要はあります。そうしたお客様のニーズを特定し、戦略を立案していく必要があります。

また、豪州で深刻化している熟練労働者不足も課題です。顧客が増えれば増えるほど練度の高いメカニックが必要になってきます。このため、豪州で昔から根付いている師弟制度(見習工制度)を活用しています。毎年約10人のメカニックの見習工を採用し、4年間のプログラムで教育するという地道な取り組みを続けています。これまでの10年間で99人を採用し、プログラム修了後にメカニックとして活躍してもらっています。

豪州は人口は伸びているものの成熟市場ですので、新興国のような急激な成長は見込めません。しかしながら、四半世紀も景気後退を回避してきた底堅い経済成長は今後も続くと期待しています。年間数パーセントのサステナブル(持続可能)な成長を長く持続させていくことを目指し、トータル・ソリューション・プロバイダーとしてお客様のニーズに幅広く応えていきたいですね。

そのため、販売・サービス網の強化、周辺機器を含む商品群の拡充、アフター・サービスの強化に向けた取り組みを実施すると同時に、お客様の物流現場の「カイゼン」の提案営業にも力を入れていきたいと思います。

PROFILE:中澤 俊
1990年青山学院大学卒。同年トヨタ自動車入社。2000~02年ベルギーのフォークリフト欧州統括会社駐在。10~12年インドネシアのトヨタアストラモーター駐在(自動車)。16年豊田自動織機転籍。同年豊田自動織機の豪州現地法人TMHA社長としてシドニーに赴任。18年より現職

<会社概要>
英文社名:Toyota Material Handling Australia PTY Limited
事業内容:フォークリフトなどの輸入販売
代表者:中澤 俊
拠点:ムーアバンク(シドニー郊外)
従業員:740人

<沿革>
1968年 オーストラリアへのフォークリフト輸出開始
2003年 現地法人トヨタ・インダストリーズ・コーポレーション・オーストラリア(TICA)設立
2007年 トヨタ・マテリアル・ハンドリング・オーストラリア(TMHA)に社名変更。本社移転

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