キヤノン・オーストラリア 中舛貴信 社長

進出日本企業
●PROFILE
なかます・たかのぶ
キヤノン・オーストラリア社長
<略歴>
1981年、上智大学外国語学部卒。同年キヤノン入社。2009年までヨーロッパのキヤノン販売会社への赴任・駐在を複数回。09年映像事務機事業本部スモール・オフィス・システム事業部長。11年4月より現職。

進出日本企業  トップ・インタビュー
第3回

キヤノン・オーストラリア

中舛貴信 社長

 デジタル・カメラをはじめとする映像機器、プリンターや複写機といった事務機器などを手がけるキヤノン。日本を代表する大手電気機器メーカーである同社にとって、オーストラリアは製品の販売だけではなく研究開発施設も置くグローバルな拠点の1つとなっている。在豪現地法人の中舛貴信社長に話を聞いた。

(インタビュー=ジャーナリスト・守屋太郎)

 

問題解決型ビジネスで付加価値を創造
サービス・プロバイダーへの転換図る

 

オフィスの情報管理を最適化

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同社のオフィス向けの主力商品であるオフィス・ネットワーク複合機「imageRUNNER ADVANCE シリーズ」

ーーひとことで言うとキヤノンとはどんな会社ですか? フィルムの時代からカメラ・メーカーとして馴染み深いですが、オフィスでも事務機器の存在感が強いですね。

キヤノンは1937年に高級カメラ・メーカーとしてスタートし、2012年には創立75周年を迎えました。カメラの印象が強いかもしれませんが、製品別の売上規模では、デジタル・カメラなどのコンシューマー(一般消費者)向け製品と、複写機に代表されるオフィス向け製品は拮抗しています。最近では、医療器機分野やシネマ用カメラなどの新規製品の拡販にも積極的に投資しています。

 
ーー豪州市場で展開する主な事業は?

 デジタル・カメラ、カメラ・レンズ、デジタル・ビデオ・カメラ、インクジェット・プリンター、インクジェット複合機、スキャナーなどのコンシューマー製品をはじめ、オフィス・ネットワーク複合機、レーザー・ビーム・プリンター、液晶プロジェクターなどのオフィス製品、放送機器、プロダクション複合機などの産業用製品まで多岐にわたっています。最近ではオフィスのドキュメント(文書)・情報管理環境を最適化して管理・運用するサービス分野にも、非常に力を入れています。

 
ーーコンシューマーとオフィスのそれぞれの市場の特徴は?

 コンシューマー製品に関して言えば、デジタル一眼レフ・カメラを例に取ると、オーストラリア人のアウトドア志向を反映してか、高画質・高品位の写真・画像を撮るための製品やサービスを重んじる傾向があります。日本では珍しくなったカメラ専売店が健在であることも、そうしたニーズを反映しているのではないでしょうか。

 オフィス製品の市場では、モバイル・ワーキングやクラウド・コンピューティングなどの新技術の導入に積極的です。そのため、従来型のビジネス・モデルに固執するのではなく、顧客のオフィス環境に応じた問題解決型、サービス提供型の「ソリューション・ビジネス」を拡大していく必要があります。顧客がそうしたアプローチに対して積極的に耳を傾けてくれるのも、豪州市場の特色です。

他社にはない強みは、画像・情報の取り込みから検索・編集を経てプリント・保存まで、つまりワーク・フローの入口から出口まで一貫して付加価値を訴求できる幅広い製品群をそろえていることだと考えています。コンシューマーとオフィスのいずれの市場においても、ハードとソフト、サービスの総合力ではどこにも負けないと自負しています。

 

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デジタル一眼レフ・カメラ「EOS6D」

ーー研究開発拠点のキヤノン・インフォメーション・システムズ・リサーチ・オーストラリア(CiSRA)も置いています。

CiSRAは、キヤノン本社の研究開発部門として、ソフトウエアとハードウエアの研究開発を行っており、現在200人規模の体制を敷いています。オーストラリアは、ビジネスと文化の両面で先進国であり、世界中からの移民が集まる多民族社会でもあるので、優秀な技術者を比較的容易に確保できるという利点もあります。

 
ーー豪州でも積極的にCSR(企業の社会的責任)活動を展開していますね。

コーポレート・スローガンである「共生」の理念の下で、オーストラリアでも社会貢献活動に力を入れています。環境保護活動を行う団体・研究者に、キヤノン製品を提供して活動に役立ててもらうキヤノン環境賞や、シドニー大学でマーケティングを学ぶ学生への奨学金制度、オーストラリアの写真界の発展を目的としたプロ写真家向けコンテストへの協賛などを行っています。

 

ハードの強み生かし次のステップへ

ーー目下の最大の課題は?

 我々のビジネスに関しては、完全に成熟した市場であるということです。「箱売り」に固執していては成長が止まってしまうので、ハードだけではない、市場の特色に合わせたユニークなサービスやビジネス・モデルを打ち出して行かなければなりません。

「もの造り」の観点から言うと、参入障壁が高いとされる、レンズに代表される光学技術や、技術のすり合わせなど、まだまだ優位性のある製造・製品技術を持っています。その強みをいかに守り、拡大していくかが大きなテーマではないかと思っています。

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プロ・ハイアマチュア写真家向けインクジェット・プリンター
「PIXMA PRO-10」

また、いわゆる「Two Speed Economy(経済の二重構造)」のマイナス要因もあります。資源産業がいくら好調でも、全就業者数に占める割合は非常に低いのが特徴です。就業者数の多い小売業や製造業はさまざまな課題に直面していて、当社の事業も直接的、間接的に影響を受けています。資源産業が近い将来、活況を享受できなくなった時、この国の発展を担う次の産業が何か? それが明確に見えてこないことに懸念を感じます。

一方、Eコマース(電子商取引)の浸透によって、オーストラリアでも流通や店舗販売のあり方が大きな転換点を迎えています。こうした急激な変化は、リスクである一方で新たなビジネス・チャンスとなる可能性も秘めています。

 
ーー現状と課題を踏まえて、将来に向けたビジョンについて聞かせてください。

 「サービス提供型企業への変貌」を加速させます。キヤノンの優れた技術を核にしたハードウェア中心のビジネス・モデルを維持しながらも、顧客の生活やビジネスに新しい付加価値を提供できる企業に変えていく。それを今後の販売・マーケティング戦略の中核に据えていきます。

<会社概要>
●英文会社名:Canon Australia Pty. Ltd.
●企業形態:キヤノンの在豪現地法人
●代表者:中舛貴信社長
●拠点:シドニー本社、メルボルン、ブリスベン、キャンベラ、アデレード、パース、ニュージーランド
●社員数:オーストラリア約800人、ニュージーランド約200人
●主な事業:キヤノン製品の販売・サービス
<沿革>
1978年、欧州、米州に次いで豪州現地法人をシドニーに設立。1990年、研究開発拠点のCiSRAをシドニーに設立。


<トップに聞く10の質問>
1. 座右の銘:「得意淡然、失意泰然」
2. 今読んでいる本:吉村昭「三陸海岸大津波」(初版は1970年代らしいんですが、これを読むと3.11の津波が「想定外」だったなどという理屈は通用しないのがよく分かります)
3. 豪州の好きなところ:シドニーの天気。多民族国家、多国籍料理。おおむね穏やかで明るいオージー気質
4. 外から見た日本の印象:多くの方々と同じく政治のリーダーシップの不在は痛感しますが、一方きめ細かいサービス・おもてなしの心は世界一です。さらには震災の時に表れた高い道徳心、自律心も日本人の1人としてもっと自信を持ってもよいのでは、と再認識しました。
5. 好きな音楽:ジャズ、クラッシック、J-POP(要するにジャンルを問わず好きな曲は好きですね)
6. 尊敬する人:マザー・テレサ
7. 有名人3人を食事に招待するとしたら誰?:織田信長、豊臣秀吉、徳川家康
8. 趣味:ゴルフ
9. 将来の夢:豪華客船で世界1周の旅に出ること、ボランティアの地域・社会貢献活動
10. カラオケの十八番:「Oh! クラウディア」(サザンオールスターズ)。古い!ってよく笑われます。

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