日立オーストラリア社長 石原均 取締役社長

進出日本企業
●PROFILE
いしはら・ひとし
日立オーストラリア取締役社長
<略歴>
早稲田大学卒業後、日立製作所入社。海外事業に従事し、電力などのプラント案件から産業機器などのコンポーネント・ビジネスに携わる。1990年から4年間、日立カナダ(カルガリー)2001年から6年間、日立アジア(シンガポール)に勤務、10年に日立オーストラリア社長に就任、現在に至る。

進出日本企業  トップ・インタビュー
第7回

日立オーストラリア

石原 均 取締役社長

 日本を代表する総合電機メーカーの1つである日立製作所は、これまで約半世紀にわたってオーストラリアのインフラ整備に貢献してきた。現在では資源産業向けの輸送機械、発電用タービン、鉄道のモーター、データ・ストレージなど多様な事業を展開している。在豪現地法人の石原均・取締役社長に話を聞いた。

(インタビュー=ジャーナリスト・守屋太郎)

 

「B to B」から「B to S」へ
インフラ整備で豪州社会に貢献

 

インフラを中核事業に


豪州各地の鉱山で活躍する日立製の超大型油圧ショベルとダンプトラック

——日立製作所と言えば、以前はテレビなど消費者向け家電製品のブランドとして親しまれていましたが、現在ではインフラを中心とした法人向け事業に注力していますね。

源流は1910年に発足した日立鉱山のモーター修理工場です。当時の日本は産業機械を輸入していて、外国製モーターの修理事業からスタートしました。その技術を生かして、後に変圧器や交流電流計、電圧計、水力発電用の水車、扇風機などの国産化に成功しました。2 0 年に日立製作所を設立し、国産初の電気機関車(24年)をはじめエレベーター(32年)、交流発電機(43年)などを世に送り出しました。 

戦後は扇風機や洗濯機といった家電製品へと事業領域を拡大しました。テレビなどのエレクトロニクス製品、パソコンなどの情報通信機器の生産も手がけるようになりました。ところが、経営環境が厳しさを増したため、2009年に大がかりな構造改革を断行してビジネス・モデルを変革しました。中核事業を電力や交通等のインフラ整備などとし、現在では業績はV字回復を果たしています。

 

インフラ事業は以前から日立が得意とする分野であり、創業当時の原点に立ち返った形とも言えるでしょう。

 

エレクトロニクスから鉱山トラックまで

——オーストラリアでも長年にわたり資源産業や交通などの分野でインフラ事業に取り組んできました。現地法人の主力事業にはどのようなものがありますか?

日立のオーストラリア事業は約50年の歴史があります。1964年にWA州の鉄鉱石積み出し港の整備に携わったのを皮切りに、VIC州の鉄道、QLD州の石炭火力発電所をはじめ全国でさまざまな社会基盤整備に参画してきました。 

最近の身近な例では、NSW州立鉄道シティレールの新型車両「ワラタ」のモーターとインバーター(直流電力を交流電力に変換する装置)を手がけています。 

現在の主な事業分野としては、鉱山・建設機械、電力、IT、鉄道、産業用機械、物流、業務用エレクトロニクスなどがあります。火力発電用のタービンやボイラー、鉄道、法人向けの電気機械などを扱う日立オーストラリア(シドニー)を中心に、オセアニア地域で合計8つのグループ会社(オーストラリア7社、ニュージーランド1社)を運営しています。 

ほかの主なグループ会社としては、鉱山用の輸送機械や建設機械を扱う日立建機オーストラリア(シドニー)、データ・ストレージ事業を行う日立データシステムズ・オーストラリア(シドニー)、電動工具などを扱う日立工機オーストラリア(シドニー)、カー・オーディオのクラリオン・オーストラリア(メルボルン)、物流の日立トランスポート・システム・オーストラリア(メルボルン)などがあります。 

オセアニア事業全体で約17億豪ドルの連結売上高(2012年3月期)があり、1,900人の従業員を雇用しています。

 

イノベーションで社会の課題に応える




オーストラリアの建築現場や家庭で活躍している日立の電動工具

——グループ全体のグローバル戦略では、オーストラリア事業をどのように位置付けているのですか ? また、オーストラリア市場における日立の強みは何ですか ?

日立が5月16日に発表した「2015中期経営計画」では、15年度の海外売上高比率を現在の41%から50超に引き上げるとの目標を掲げています。売上高比率の目標を各地域で見ると、オーストラリアを含むアジア・オセアニア(中国を除く)を16%から20%に引き上げることを目指しています。国・地域別で最大の増加率(25%)を見込んでいて、この地域を最も成長が期待できる市場ととらえているわけです。

 

日立は「B to S」(ビジネス・トゥ・ソサエティー=企業対社会)という新しいビジョンを打ち出しています。お客様は消費者(コンシューマー=C)でも企業(ビジネス=B)でもなく社会(ソサエティー=S)であるという発想です。社会が抱える課題に技術革新で応える「社会イノベーション事業」をグローバルに提供することを成長戦略の中核に位置付けています。 

オーストラリアも社会イノベーション事業を展開する重要拠点の1つととらえています。小さな電気製品から巨大な鉱山用トラックまで幅広い事業を展開していることから、各部門の間で技術を共有できるためシナジー効果を発揮することができます。それが、他社にはない日立の最大の強みとなっています。

 
——オーストラリア事業の将来に向けた成長戦略についてお聞かせください。

この国は今後も規模の拡大が見込める有望な市場です。しかし、生産性の向上を図るには、経済成長をけん引してきた資源・エネルギー部門のインフラだけではなく、人口増加に伴う都市基盤の整備も課題です。慢性化する混雑を解消するには、鉄道など交通インフラの拡充が重要になってくるでしょう。 

例えば4月に最終報告書が発表された東海岸の高速鉄道構想。もしこれが実現すれば、日立も日本の高度な新幹線技術を提供できる可能性があります。インフラというのは完成まで数十年を要することもある息の長いビジネスです。明日結果が出るというものではありませんが、社会=お客様の課題にソリューション(解決策)を提供することで、オーストラリアの持続的な発展に永く貢献していきたいと考えています。

<会社概要>
●英文会社名:Hitachi Australia Pty Ltd
●企業形態:日立製作所が100%出資する子会社
●代表者:石原均・取締役社長
●拠点:シドニー北部ノース・ライド
●従業員数:約1,900人(オセアニア地域のグループ会社を含む)
●主な事業:鉱山・建設機械、電力、IT、鉄道、産業用機械、エレクトロニクスなど(オセアニア地域のグループ会社を含む)
<沿革>
1966年 シドニーに駐在事務所新設
1968年 オーストラリア事務所設立
1983年 日立オーストラリア設立
 


 
<トップに聞く10の質問>
1. 座右の銘:温故知新
2. 今読んでいる本:『海賊と呼ばれた男』(百田尚樹)
3. 豪州の好きなところ:治安が良く、衛生面で清潔であること
4. 外から見た日本の印象:まわりのことに気を配り、控えめなところが美しい。一方、世界の中で生き抜くには弱い
5. 好きな音楽:モータウン・サウンド
6. 尊敬する人:出光佐三
7. 有名人3人を食事に招待するとしたら誰?:オードリー・ヘップバーン、ジュリー・アンドリュース、吉永小百合
8. 趣味:ゴルフ
9. 将来の夢:好々爺
10. カラオケの十八番:郷ひろみ「言えないよ」

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