オーストラリア日本ハム、澤田茂社長インタビュー

進出日本企業
PROFILE ● さわだ・しげる
オーストラリア日本ハム取締役社長
<略歴>神戸大学農学部卒業後、日本ハム株式会社入社。ハムソーセージ製造・食肉処理業務の研修を経て、輸入牛肉の仕入販売に従事し、米国・豪州・カナダ・NZなどからの買い付け業務に携わる。2010年からオーストラリア日本ハムで勤務。2012年にオーストラリア日本ハム社長に就任。現在に至る。

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第9回

オーストラリア日本ハム

澤田 茂 取締役社長

日本の食肉卸売・食肉加工食品製造最大手、日本ハム(本社大阪市)は、サプライ・チェーン全体をグループ内で運営する一貫体制が強みだ。オーストラリアでも肉牛の肥育から処理、卸売までを一手に手がけ、海外へ輸出しているほか国内の大手スーパーにも供給している。現地法人の澤田茂・取締役社長にオーストラリア事業の戦略について聞いた。

(インタビュー=ジャーナリスト・守屋太郎)

 

牛肉供給のグローバル拠点に
生産から輸出まで一貫体制

 

—まず日本ハムという企業の概要について教えてください。

1942年創業の「徳島食肉加工場」(51年に徳島ハム(株)に組織変更)が前身です。63年に鳥清ハムと合併し現在の日本ハムが発足しました。創業事業であるハム・ソーセージ事業に始まり、食肉と加工食品、水産、乳製品、コラーゲンなど、食の新たな可能性に挑戦し、食の事業領域を拡大してきました。日本の食肉業界で唯一、牛・豚・鶏の3畜種で生産から販売までを統合したシステムを保有しているのが特徴です。「たんぱく質ベースのグローバル多角化企業」を目指しています。

2013年3月期のグループ全体の売上高1兆228億円のうち約6割を占める食肉事業はコア・ビジネスの1つです。生産から販売まで一貫してグループ内で手がける体制が最大の強みです。ブランド食肉をはじめとして大手量販店などに卸売しています。

全体の約3割を占める加工事業においても、ハム・ソーセージや加工品などの商品開発から製造、販売までを手がけています。ウィンナー・ソーセージの「シャウエッセン」やチルド・ピザの「石窯工房」などのブランドで親しまれています。水産品や乳製品(チーズ、ヨーグルト)、フリーズ・ドライ食品、健康食品などの関連事業(全体の12%)も幅広く展開しています。

 

輸出先は日本から世界に軸足

—日本ハム・グループにとってオーストラリアは牛肉生産の重要拠点ですね。日本市場でオーストラリア産牛肉が一般的ではなかった1978年に現地法人をシドニーに設立した狙いは?

70年代の日本では牛肉はまだ自由化されていませんでした。しかし、将来の自由化に向けた対応と海外市場での内販も視野に入れて、海外進出を模索しました。米国(77年)に続いてオーストラリアにも78年に現地法人を設立しました。


QLD 州・NSW州に日本ハムが所有する肉牛飼育牧場

80年代の半ばになると牛肉自由化(91年実施)がいよいよクローズアップされてきましたので、これに備えてオーストラリアでの生産体制の構築を加速しました。87年に食肉を処理する「オーキー・アバトゥア」(QLD州南部オーキー)、88年にフィードロット(肥育場=出荷前に一定の期間、穀物を食べさせて品質を整える施設)の「ワイアラ牧場」(同州南部テキサス)を相次いで買収しました。川上の肥育から処理、川下の販売、輸出までサプライ・チェーンを通した一貫体制を整えました。

 

—オーストラリア事業の現況はいかがですか?


全国のコールズやウールワースでも日本ハムが出荷する牛肉が販売されている
 

QLD州OAKEY市にある衛生管理の行き届いたOAKEY ABATTOIR社の処理工場
 

日本ハムが所有するQLD州TEXASにある穀物肥育専用のWHYALLA牧場

現在では、海外市場への輸出を主に手がけるオーストラリア日本ハム(シドニー)を中心に、最大7万5,000頭の肉牛を収容できるフィードロットを運営するオーキー・ホールディングス、オーキー・アバトゥアなど合計6つの子会社をオーストラリア国内で運営しています。

主力事業は全体のおよそ70%を占める輸出です。看板商品はオーストラリア産の大麦飼料を食べさせた「大麦牛」。以前は対日輸出が大半を占めていましたが、近年はほかの国・地域向けの割合が拡大しています。主な輸出先別の割合は、日本約26%、米国約15%、韓国約11%、台湾約6%といったところですが、ここ数年は中国向けが急増しています。

売り上げの30%はオーストラリア国内市場での販売です。2大スーパーのコールズとウールワースをはじめ、卸売大手メットキャッシュ、米系小売チェーンのコストコなどに販売しています。国内の牛肉生産規模では3番手で、約9%のシェアを獲得しています。日本ハムのブランドとしてではなく各グループ工場のブランドで供給しています。そのためパッケージの表示を見ても分かりませんが、オーストラリア在住の皆さんにも知らないうちに当社の牛肉を食べていただいているかもしれません。

このほか、石けんなどに利用される牛脂、外食産業向けの調味料などに使われる牛骨のエキス、牛皮など、食肉の副産物として生産されるさまざまな副産物も手がけています。

 

豪州から海外見本市に出展

—オーストラリア事業の課題と今後のビジョンについて聞かせてください。

輸出事業にとっては不安定な為替相場が最大のリスク要因です。このところ豪ドルが対米ドルで下げに転じていますのでなんとか持ち直しましたが、1豪ドル=1.05米ドルに達した時は非常に苦しい思いをしました。他国と比較して賃金水準や労災リスクもマイナス要因です。干ばつや洪水といった気候要因にも収益は大きく左右されます。

国内市場では現在、自前ブランドはそれほど展開していませんが、今後は付加価値の高い自社牧場ブランドの投入を目指しています。現状では牛肉の販売に偏重しているので、牛脂や牛骨エキスなどの副産物の割合も増やしていきたいですね。

最大の目標は、世界により多くのお客さんを増やしていくことです。最近では「豪州WAGYU」(日本の和牛をルーツに持つ交雑種)の生産をスタートしました。これまでオーストラリアでは従来種を生産してきましたが、これからは単価の高い豪州WAGYUの生産から販売までを手がけることで売上高の一層の拡大を図っていきます。肉牛は繁殖から出荷まで何年もかかりますので明日結果が出るものではありませんが、息の長い事業に育てていきます。

日本ハムグループでは、海外売上高をこれまで以上に増やしていく方針を掲げています。オーストラリア事業はグループ連結決算ベースで約5億豪ドル(2014年3月期)の売り上げがあり、グループの海外戦略において重要な責務を担っています。オーストラリア日本ハムとして、世界各地の食品見本市に積極的に出展しており、今年11月には上海の見本市で売り込みをかけます。

新興国の経済発展に伴う食生活の向上を背景に、地球上の牛肉消費は今後も順調に伸びていくと予想されます。オーストラリアから輸出を伸ばして世界の成長を取り込むことで、グループ全体のグローバル化をけん引していきたいと考えています。

<会社概要>
●英文会社名:Nippon Meat Packers Australia
●企業形態:日本ハムの現地法人
●代表者:澤田茂・取締役社長
●拠点:シドニー
●従業員数:約1,650人
●主な事業:牛肉の生産・販売
<沿革>
1978年 シドニーに現地法人設立  
1987年 現地の食肉処理会社オーキーアバトゥア買収
1988年 QLD州のワイアラ牧場を買収、生産から販売まで一貫体制を構築
1990年 QLD州のT.B.S(トーマス・ボースウィック&サンズ)に出資
1994年 NSW州ウィンガムビーフエキスポートを設立
1997年 豪州国内の販社であるビーフ・プロデューサーズ・オーストラリアを設立
日本向けブランド牛肉「大麦牛」の本格的販売を始める

 


 
<トップに聞く10の質問>
1. 座右の銘:Nothing venture, nothing have(思い切ってやってみなければ何も得られない)
2. 今読んでいる本:現在は特に読んでいる本はない。仕事にまつわる情報誌に目を通しています。
3. 豪州の好きなところ:雄大な自然と美味いワイン
4. 外から見た日本の印象:四季折々の季節感が素晴らしい。物価も安い
5. 好きな音楽:ハーモニーが綺麗な曲であれば何でも
6. 尊敬する人:どんな職場でも努力を続けている人はすべて尊敬します
7. 有名人3人を食事に招待するとしたら誰?:楊貴妃、小野小町、クレオパトラ
8. 趣味またはスポーツ:料理、ゴルフ
9. 将来の夢:食育に関することに従事したい
10. カラオケの十八番:「千の風になって」

 

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