進出日本企業インタビュー 第14回「双日豪州会社」

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第14回

双日豪州会社

曾我 英俊 社長

日本の総合商社は戦後、豪州から資源を輸出して高度経済成長を支えると同時に、黎明期の豪州の資源産業に投資することで現在の繁栄につながる基礎を築いた。双日(東京都千代田区)もそうした日豪関係の発展に貢献してきた大手商社の1つだ。合併10周年を迎えた現況と展望について、双日豪州会社(シドニー)の曾我英俊社長に聞いた。(インタビュー=ジャーナリスト・守屋太郎)

●PROFILE
そが・ひでとし
<略歴>
1959年広島県生まれ。横浜国立大卒。2007年双日(株)入社、経営企画部。
10年(株)JALUX執行役員。11年双日(株)食料事業部長。
13年より現職

 

長期的視野で資源に堅実投資
食糧供給基地としても重要

 

——双日とはどんな企業なのでしょうか?

源流は3つあります。1つは1862年に岩井文助が大阪市で起業した舶来雑貨業で、後に岩井商店となります。もう1つは、鈴木岩治郎が1874年に創業した洋糖業を起源とする鈴木商店(神戸市)、後の日商です。これらが合併して1968年に日商岩井が発足します。一方、1892年に大阪市で設立された日本綿花は後に日綿實業、そしてニチメンとなります。2004年に日商岩井とニチメンが合併して現在の双日が誕生し、今年は10周年の節目の年となりました。

事業部門は大きく分けて4つあります。航空機などの「機械部門」、石炭や鉄鉱石、石油・ガスといった「エネルギー・金属部門」、レア・アース(稀少金属)を含む「化学部門」、食糧や肥料、繊維などの「生活産業部門」です。近年は資源価格のボラタリティー(変動幅が大きいこと)が激しいため、非資源分野の割合を拡大しています。経営の安定性を高めるため、ボラタリティーの高い資源分野への依存を改めているのです。資源部門の純利益比率は2006年3月期には約66%に達していましたが、2014年3月期では約26%まで低下しています。

当社が強い分野としては、米ボーイングやブラジルのボンバルディアの輸入を手がけ日本市場シェア1位を誇る民間航空機、輸入量トップ・クラスのモリブデン、年間1,200万トンの輸入量がありロシア産ではトップの石炭などがあります。100万トンを扱うメタノール、シェア20%の工業塩、タイやベトナム、フィリピンでトップ・シェアを占める肥料なども得意分野です。穀物事業にも力を入れています。ブラジルでは穀物生産の川上から川下までのバリュー・チェーンを取得しました。ベトナムの穀物輸入ターミナル(取扱能力300万トン)では小麦、大豆かすなどの飼料穀物を扱っています。

 

——豪州事業の沿革と現況について教えてください。

戦後間もない57年、日商とニチメンがともに豪州に進出しました。当初は豪州産羊毛の貿易が主力でしたが、次第に石炭など鉱物資源・エネルギーの貿易や投資を拡大していきました。本社の合併に伴い、04年に双日豪州会社(ソージツ・オーストラリア・リミテッド)を設立しています。

豪州事業のおおまかな売上比率は、エネルギー・金属が50〜5%、食糧やウッドチップ(製紙原料の木材製品)などの生活産業関連が40〜5%といったところです。


WA州のアルミナ出荷・船積み施設


自社で運営しているQLD州ミネルバ炭鉱

エネルギー・金属では、QLD州とNSW州の石炭権益に投資しているほか、QLD州のミネルバ炭鉱では出資比率を96%まで拡大し、日本の商社では唯一、自社で運営も行っているのが特色です。また、豪英系資源大手BHPビリトンと組んでWA州のアルミ精錬事業に9%出資しているほか、同リオ・ティントと合弁でWA州の工業塩事業にも10%出資しています。自動車や携帯電話などの製造に欠かせないレア・アースの事業では、豪州企業のライナスに出融資しています。

一方、生活産業部門では、豪州産小麦を東南アジアを中心に年間200万トン、同牛肉を日本や東南アジアの一部に年間1万トン輸出しています。国内の植林プランテーションで生産された木材を加工したウッドチップ、パプアニューギニア産の原木なども輸出しています。豪州国内の食品事業では、うどんやそうめんなどの日本麺の製造と販売を手がけるはくばくオーストラリアに一部出資しています。商品は国内の大手スーパーで販売しているほか米国などにも輸出しています。

豪ドル、資源価格は適正化していく

——グループ全体にとって、資源輸出国である豪州は重要な拠点ですね。

有力な資源供給国である豪州のグループ全体の収益に対する貢献度は高い水準にあります。資源事業の対連結純利益比率約26%のうち、何割かを豪州事業が占めています。

鉱物資源だけではなく、食糧資源の供給基地としても豪州は重要です。アジア諸国では豪州産の安心・安全な穀物や牛肉、乳製品などの食糧の需要が伸びています。

 

——豪州経済は、豪ドル高、事業コストの高騰、資源ブームの終息など足元では不安な要素も顕在化してきています。豪州事業の課題は?

以前は豪ドルと商品価格が連動していましたが、近年はこれが乖離していて豪州経済に悪影響を与えているのは確かです。しかし、豪ドルが高止まりしているのは、米国の量的緩和(QE)によるところが大きいと見ています。米QEの出口戦略と終了に伴い、豪ドル高は徐々に是正され、適正な水準に修正されていくでしょう。コスト高への対応については、物流の改革や経営の合理化、運営の機械化などコストダウンの努力を一層進めていきます。

商品市況は短期的に多少波風は立つでしょう。しかし、10〜0年の長期的視点で見れば世界的な資源需要は伸びていくと予想されますので、適正なタイミングで是正されていくのではないでしょうか。

 

——最後に将来に向けた豪州事業のビジョンについてお聞かせください。

エネルギー・金属については、長期的な視点に立脚して投資案件を探し、権益を堅実に増やしていく戦略です。食糧に関しては、人口が増加し中間層の幅が広がっているアジア市場に向けて豪州からの供給をさらに増やします。生産から貿易、物流、消費市場に至るバリュー・チェーンの全行程を見据えて、どの分野にビジネス・チャンスがあり社会貢献が可能かを考え、最適な部分に関与していきます。

先日ダーウィンで開催された日豪経済合同会議では、豪州の食糧供給力と日本の物流の知見や技術をミックスすれば、アジアの食糧需要の拡大に対応できるのではないかという議論がありました。こうした日豪の「協働」がシナジー効果を発揮できれば、食糧問題の解決にも寄与できるかもしれません。

双日グループには「誠実な心で世界を結び、新たな価値と豊かな未来を創造します」という企業理念があります。お客様、パートナー(提携先)、サプライヤー(取引先)などすべてのステークホルダー(関係者)に対して価値を提供することで、社会に貢献していきたいと思います。

<会社概要>
●英文会社名:Sojitz Australia Limited
●企業形態:双日の現地法人
●代表者:曾我英俊社長
●拠点:シドニー、パース、メルボルン、ポートモレスビー
●社員数:27人
●主な事業:石炭、鉄鉱石、アルミナ、化学品、食料、ウッドチップなど

 

<沿革>

1957年 The Nissho Co.(Australia) Pty Ltd.設立
同年Nichimen Australia Ltd.設立
1968年 日商と岩井産業の合併により、Nissho Iwai Co.(Australia) Pty Ltdに改称
1972年 ポートモレスビー出張所設立
2004年 日商岩井とニチメンの合併によりSojitz Australia Ltd.に改称

<トップに聞く10の質問>
1. 座右の銘:仁義礼智信
2. 今読んでいる本:「物語 オーストラリアの歴史」
3. 豪州の好きなところ:大自然、スポーツが盛んなこと
4. 外から見た日本の印象:最近少し活力が出てきた
5. 好きな音楽:ポピュラー音楽
6. 尊敬する人:坂本竜馬
7. 有名人3人を食事に招待するとしたら誰?:香川真司、錦織圭、イチロー
8. 趣味:ジョギング、スポーツ観戦、ゴルフ
9. 将来の夢:世界旅行
10. カラオケの十八番:ありません

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