進出日本企業インタビュー 第15回「三井住友銀行」

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第15回
三井住友銀行シドニー支店

田沼幹夫 豪州支配人支店長

日本の3大メガバンクの1つ三井住友銀行は、オーストラリア進出以来30年以上にわたり、日豪の経済関係の発展に貢献してきた。現在、シドニー支店を拠点に、企業への融資と資源・インフラ関連のプロジェクト・ファイナンスを中心に手がけている。アジアの成長を見据えたオーストラリア事業の戦略と展望について、田沼幹夫・豪州支配人支店長に聞いた。(インタビュー=ジャーナリスト・守屋太郎)

 

アジアを見据えた重要な拠点
日本と豪州の発展に寄与したい

 

——最初に三井住友銀行とグループ全体の事業について教えてください。

1876年創立の三井銀行と1895年創立の住友銀行が主な源流です。バブル崩壊と金融ビッグバンを経て、当行も前身のいくつかの都銀が合併して生まれました。1990年に三井銀行と太陽神戸銀行が合併して太陽神戸三井銀行となり、92年にはさくら銀行に商号を変更。2001年にさくら銀行と住友銀行が合併して三井住友銀行が誕生します。02年に株式移転により三井住友フィナンシャルグループを設立し、三井住友銀行を完全子会社化しています。

同グループは14年9月末時点で172兆円の総資産を持つ、日本有数の金融グループです。中核の銀行業は、総資産144兆円の三井住友銀行が手がけています。ほかの主な事業会社としては、証券業のSMBC日興証券、コンシューマー・ファイナンス業のSMBCコンシューマー・ファイナンスや三井住友カード、リース業の三井住友ファイナンス&リースなどがあります。

事業分野で特に力を入れているのが海外ビジネスの拡大です。11年から3年間の中期経営計画では海外利益比率30%以上という目標を掲げ、前倒しで達成しました。現在は「アジア・セントリック」(アジア重視)を全面に打ち出しています。日本企業の進出を支援し、アジアの成長を取り込むとともに、非日系企業のアジア進出の橋渡し役になるという狙いもあります。

 

——豪州ではどのような事業を展開していますか?


Team SMBCとして一体感を重視(写真はCSRの一環でチャリティ・ランに参加する職員)

84年から現地法人として活動していましたが、連邦政府が外銀に門戸を開いたことを受けて06年に銀行免許を取得して支店化しました。現地法人時代は融資額に限度がありましたが、支店化によって大型案件への融資が可能になりました。現在では総資産200億ドル、融資額120億ドルの規模に拡大しています。

当行の豪州事業は、①日系企業取引、②非日系大企業取引、③資源やインフラの「プロジェクト・ファイナンス」を中心に手がけています。スタッフは157人(14年9月末現在)程度ですので、資産規模の割には非常に効率的な運営を行っていると思います。資源国の豪州ではプロジェクト1件当たりの規模が大きいことも、特徴となっています。

①・②では、日系のほかに外資や地場の企業とも積極的にビジネスを行っています。③では、液化天然ガス(LNG)・鉄鉱石などの資源・エネルギー開発事業のほか、道路や鉄道、港湾、発電事業などのインフラも手がけています。資源投資は現在、一段落しているものの、インフラについては今後も商機が拡大していくでしょう。連邦政府は高速道路や空港の建設促進を重要政策に掲げ、州政府が保有する電力事業などの民営化にも補助金を提供するなど、積極的にインフラ整備を推進しています。

 

——アジア重視を進めるグループの海外戦略の下では、アジアへの経済的な関与を深める豪州の重要性も高まっているのでは?

当行のアジア・ビジネスの中で、豪州はその成長の最大の牽引役の1つとなっています。具体的な数字は公表できませんが、アジア全体の収益にかなり貢献してきました。

また、豪州では他国・地域と比較して日本の銀行のステータスが高いこともメリットです。オセアニアのシンジケート・ローン(顧客の資金調達のニーズに対して複数の金融機関が協調融資団=シンジケート団=を組織して1つの融資契約書に基づき同一条件で融資を行う手法)の金額ランキングでは、2013年度は当行は豪4大銀行に次ぐ5位。邦銀3行すべてがトップ10位に入っています。

06年の外銀規制緩和で邦銀が相次いで支店化し、豪州事業を強化した直後に、世界金融危機(08年)が発生しました。金融機関にとっては厳しい事業環境ではありましたが、相対的に余力があった邦銀はいち早く資源ブームなどの資金需要に対応することができました。このことが、邦銀が信頼性を高めることにつながったのではないでしょうか。

 

——将来の豪州事業について、どのようなビジョンをお持ちですか?


シドニー湾を臨むオフィス

豪州企業の関心はまだまだ国内に向いており、逆に言えば、彼らのグローバル化にチャンスがあると考えています。特に、著しく成長しているアジア・マーケットでのビジネスに大きな伸びしろがあるのではと感じています。最近発表された大手会計事務所プライスウォーターハウスクーパース(PWC)の報告書を読むと、「アジア事業の経験のある豪州企業の割合は全体の12%」に過ぎず、「豪州はアジアの成長の機会を逃している」という見方が出ておりますが、正にその通りだと思いました。

豪州は資源・エネルギーや農産物の一大輸出拠点です。しかし、ただモノを輸出するだけではなく、アジアに向けて投資やローカル拠点設立を進め、現地のエンド・ユーザーのニーズをつかみビジネスを展開していく「本格進出」を通じて、真のグローバル化を加速させる必要があります。そこで、戦前からアジアでの豊富なビジネスの知見を持つ日本の企業は、アジアや世界に出て行く豪州企業にとって良きパートナーとなり得るのではないでしょうか。

一方、日本にとっても豪州は大切なパートナーです。資源の重要な供給先として重要なだけではなく、人の往来や文化交流も盛んです。農業やヘルスケア、教育、情報技術(IT)などでの連携強化も期待できますし、インフラの民営化など豪州のノウハウを日本で生かせる分野もあるでしょう。豪州国内にある180兆円の巨額の年金マネーを日本を含む海外にもっと投資できる余地もあります。日本で眠っている莫大な個人金融資産を豪州など海外で運用すれば、もっと国富を増やせるのではないでしょうか。

銀行業には情報産業としての役割もあります。ただ融資するだけではなく、顧客にとって有益な情報を提供することが、サービスの付加価値を高めることにつながります。日本と豪州のノウハウを結びつけることで両国の発展に寄与していきたいと考えています。

●PROFILE
たぬま・みきお
<略歴>1964年埼玉県生まれ。東京外国語大学卒。87年株式会社三井(現三井住友)銀行入行、丸の内支店配属。2012年アジア投資銀行営業部(シンガポール)部長(シンジケーショングループ)。13年4月より現職。

<トップに聞く10の質問>
1. 座右の銘:Emotional Intelligence
2. 今読んでいる本:日本神話
3. 豪州の好きなところ:ラグビーのメッカであること、フレキシブルな文化
4. 外から見た日本の印象:オーストラリアよりグローバル
5. 好きな音楽:西野カナ、MIWA
6. 尊敬する人:ハンニバル
7. 有名人3人を食事に招待するとしたら誰?:天智天皇、天武天皇、藤原鎌足
8. 趣味:ラグビー観戦、ジョギング、スペイン
9. 将来の夢:スペイン移住
10. カラオケの十八番:会いたくて 会いたくて
<豪州支店の概要>
●英文会社名:Sumitomo Mitsui Banking Corporation Sydney Branch
●企業形態:三井住友銀行支店
●代表者:田沼幹夫 豪州支配人支店長
●拠点:シドニー、パース(出張所)
●従業員数:157人(2014年9月末現在)
●主な事業:一般銀行業務(ホールセール顧客対象)
<沿革>
1983年 シドニーに現地法人を設立
2006年 豪州の銀行免許と金融サービス免許を取得して支店化
2013年 パース支店開設

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