海外新聞普及株式会社(OCS)オーストラリア

企業研究

国境のないグローバルな物流に軸足
豪州からアジア・中国需要取り込みへ

海外新聞普及株式会社(OCS)オーストラリア
Overseas Courier Service Australia

国際間物流サービスを扱う東京都港区拠点の海外新聞普及株式会社(OCS)。インターネットはもちろんファクスさえなかった高度経済成長期、日本の新聞を海外在住邦人に敏速に届けるために旗揚げしたが、日本企業の海外進出に合わせて書類や印刷物を届ける国際クーリエで成長し、現在では新聞から貨物まで包括的な国際間の物流サービスを提供している。在豪現地法人の田窪三紀夫社長に戦略を聞いた。

戦後の経済復興とともに日本企業が海外進出を再開し、海外に住む邦人が増え始めた1957年、日本経済新聞社や朝日新聞社などの大手新聞社が共同出資して創業、新聞の国際配送をスタートさせた。

当時の世界は、どこにいてもインターネットで瞬時にニュースが読める現代とは全く様相が異なっていた。日本から海外へ文書情報をリアルタイムで伝達する手段がテレックスしかなかった時代、母国の情報から断絶されていた海外在住邦人にとって、約2日後とはいえ日本の新聞が読めるOCSのサービスは、当時では非常に画期的だった。

57年9月に配達を開始した当時の新聞部数はわずか64部だったが、海外邦人のニーズを的確にとらえ、翌58年1月には755部と急拡大した。

NA0907_KIGY_L4.jpg
OCSの国際クーリエ便

また、書類を海外に送付する潜在需要が高いことに着目。素早く税関を通すことができる新聞の特性を生かして、58年12月には後に事業の柱となる印刷物空輸(クーリエ)事業を米サンフランシスコを皮切りに開始した。

当時は海外に書類・印刷物を送る手段が郵便しかなく、民間では日本初、世界でもおそらく初めてのクーリエ会社となった。手紙や契約書といった軽量のものだけではなく、例えばダンボール何十箱にもおよぶプラントの設計図など扱う書類も幅を広げていった。

日経新聞を豪4都市に同日配送

国際航空運賃が高額で、高速データ通信など存在しない時代に、日本と海外をつないで在外邦人のビジネスと生活を側面からサポートしてきたOCS。

86年には、在外邦人に新聞を読んでもらうという創業当初の基幹事業をさらに前進させた。朝日新聞が人工衛星で送信したデータをロンドンで印刷して「衛星版」を現地発行、OCSはその日のうちに英国・欧州大陸各地に配送するサービスを開始した。衛星版の発行は日経新聞も参入し、配送サービスもニューヨーク、ロサンゼルス、香港など世界各地に広がった。

オーストラリアでも2004年に「日経デジタル国際版」の現地印刷がスタート。OCSが空輸・配達し、シドニーとメルボルン、ブリスベン、ゴールドコーストの国内4都市ではその日のうちに日経新聞を読むことが可能となっている。

そのオーストラリアに進出したのは24年前の85年。資源大国として重要性が高まり、日本からの対豪投資が増加、在留邦人数も増えていたことから、100%出資の現地法人を設立して、直接市場を開拓することになった。

現法設立当時の事業目的は、駐在員や現地の邦人社会向けにより良いサービスを提供することだった。新聞をはじめ、日本からのクーリエ・サービスや、小荷物を送る「OCSパック」、日本からの雑誌・書籍の購読・取り寄せ、オーストラリアから日本に贈答品を送る宅配サービス「ファミリーリンク」、日本への帰国者を対象に小口の荷物を宅配する「ジャパンボックス便」、「日経デジタル国際版」の配達、豪産ワインの日本への宅配「ワインパック」など、メニューを広げている。

今後の成長基盤は豪州国内と中国

今年4月にシドニーに赴任した田窪三紀夫社長は、オーストラリア市場の特性についてこう語る。

「国土が広大で各都市が離れて位置しているため、国内輸送といっても、ほかの国なら国際輸送に匹敵する距離とボリュームがある。そうしたオーストラリアにとって、物流は非常に重要な産業分野であり、効率的な配送とコストをめぐる競争が激しい」

そんな中で、OCSとともに歩んできた日系顧客を引き続き重要な柱としつつも、豪州企業への新しいサービスに力を入れていく方針だ。田窪社長は「非常に細かいところまできちんと気配りするサービスは、豪州人にも受け入れられる」と自信を示す。

「(豪州進出の)当初は日本向けサービスがほとんどだったが、現在はビジネスの視野が格段に広がった。真の物流企業として現地の市場で力を付け、世界を相手にグローバルなサービスを提供しなければ生き残れない」。


OCSの広告

折りしも、今年、全日空(ANA)がOCS本社に資本参加。「ANAがアジア域内で展開する貨物便ネットワークと、OCSが保有する集配・通関・地上配送ネットワークを相互に組み合わせる」(報道発表)としており、OCSはシナジー効果を利用して、国際貨物輸送インフラとより密接に連携した総合物流サービスへと舵を切っている。

こうした事業戦略に呼応する形で、豪州法人もこれまでに蓄積したノウハウを武器に、豪現地企業の新規開拓を重要課題に掲げている。

「豪州国内から、さらに中国に切り込んでいく」と田窪社長。既にこの6月から、シドニーで午後5時までに集荷した荷物を、香港には翌日の午前中に届ける「ドラゴン・サービス」を開始した。また新たに、上海で翌日午後に配達するサービス、個人向けでは、日本以外のアジア地域への簡便なBOX便サービスを企画している。

豪州の会社として現地市場に根を張りながら、中国・アジア市場に照準を合わせる――。日豪間だけにとらわれず、グローバルな物流需要を糧とする成長戦略を描いている。

田窪三紀夫社長

NA0907_KIGY_L1.jpg

1963年生まれの46歳。東京都出身。86年中央大卒。同年OCS入社。91年から5年間ロンドン駐在。95年本社システム室。03年同室長。06年営業開発室長を経て、今年4月より現職。海外拠点での衛星版の管理システムの設計、書類や荷物の追跡システムの開発など、入社以来一貫して情報技術(IT)による経営改革に関わってきた。現地法人社長としては異色の経歴。

【社長に聞く10の質問】
①座右の銘:”Come rain or come shine.”
②今読んでいる本:「ワンダフル・ライフ~バージェス頁岩と生物進化の物語」(スティーブン・J・グールド)
③オーストラリアの好きなところ:オーストラリア人の温かさ、自然保護に対する熱意
④外から見た日本の印象:「不思議の国のアリス」に出てくる白ウサギ
⑤好きな音楽:ジャズ(特にモダン~コンテンポラリー)
⑥尊敬する人:マイルス・デイビス
⑦有名人3人を夕食に招待するなら:キース・ジャレット、ウィントン・マルサリス、スティーブ・ジョブス
⑧趣味:コンピュータ、音楽鑑賞、映画鑑賞、Xbox360
⑨将来の夢:有名ジャズ・ミュージシャンを集め、壮大なマイルス・トリビュート・コンサートを開催すること
⑩カラオケの十八番:ギターを持った渡り鳥(小林旭)

新着記事

新着記事をもっと見る

NICHIGO CHANNEL

新着イベント情報

新着イベントをもっと見る