富士通テン(オーストラリア)

企業研究
「ECLIPSE」ブランドの最新型AVN(Audio Visial Navigation)。A・V・Nを一体化したのは同社が世界初(1997年)。 今ではこの形態が主流となっている

カーナビ需要の拡大に照準
現地生産車の輸出拡大に期待

企業研究 116

富士通テン(オーストラリア)
Fujitsu Ten (Australia)

カー・ナビゲーション・システムやカー・オーディオ、自動車用電子機器などを手がける富士通テン(本社:兵庫県神戸市)は、1970年代から豪自動車メーカーに相手先ブランド(OEM)供給を行うなど、豪州市場を重視してきた。90年には現地法人の富士通テン(オーストラリア)を設立し、主にトヨタ・オーストラリアの現地生産車向けにカー・オーディオやカーナビを直接販売している。今年、12年ぶりに豪州に着任した同社の篠田浩志・取締役社長に戦略を聞いた。

富士通テンの源流は、1920年に創業した川西機械製作所のラジオ生産に遡る。戦後、神戸工業として再建され、68年に富士通と合併、72年に富士通からラジオ部門が独立して現在の富士通テンが設立された。

前身の神戸工業時代の55年、トヨタの高級車クラウン向けにカー・ラジオの納入を開始した。現在の資本構成(富士通55%、トヨタ35%、デンソー10%)が示す通り、歴史的にトヨタ・グループとの関係が深い。

現在の商品は、主力のカーナビ、カー・オーディオ、家庭用オーディオなどの「インフォテイメント機器」(インフォメーションとエンターテイメントを合体させた造語)と、エンジン制御、エアバッグ、クルーズ・コントロールなどの電子制御ユニット(ECU)や、前を走るクルマを感知するミリ波レーダー・センサー、盗難防止装置(VSS)といった自動車用電子機器の2本柱だ。

クルマのIT化が進む中で、情報伝達のディスプレーや安全走行の制御に欠かせない電子部品のコア技術が最大の強みと言える。

国内市場は頭打ちも海外に活路

富士通テン(オーストラリア)の設立以前は、トヨタ、ホールデン、フォードに、オランダの家電大手フィリップスのブランドでカー・オーディオをOEM供給したのが豪州進出の始まりだった。その後、篠田氏(現社長)が90年、以前にOEM供給していた欧州系企業に出向する形で、1人で赴任した直後、現地法人の立ち上げに関わり、トヨタ・オーストラリアへの直接販売に切り替えた。

当時VIC州でトヨタが現地生産していた小型セダンのカローラ向けの供給から開始し、後に中型セダンのカムリにも供給を拡大した。豪州市場ではトヨタだけでなく、日産と三菱の輸入車にも供給している。トヨタとの関係が緊密な同社としては珍しいケースだという。

来年で現法設立から20年。現在では、カーナビ、カー・オーディオ、自動車用電子機器を輸入・販売して豪州の自動車メーカー向けに供給するほか、一般向けにも主要都市の専門店を中心に「イクリプス(ECLIPSE)」ブランドのカーナビやカー・オーディオなどを市販している。

2008年度(08年4月~09年3月)は、豪州とニュージーランドで1億2,000万豪ドルを売り上げた。ただ、一般向けの販売は競合他社の存在感が大きく、同社の売上に占める割合はわずか。逆に、強みを発揮しているのは、売上の大半を占める自動車メーカー向けのOEM供給だ。同社は、豪州市場でのOEM供給メーカーとしてはトップシェアを誇っている。

メルボルンの同社社屋
メルボルンの同社社屋

しかし、業績はこれまで豪州の新車市場の拡大とともに順調に推移してきたものの、豪州でも金融危機を背景とした景気低迷で新車需要が鈍化しているため、今年度は前年割れとなる公算が高いという。篠田社長は「08年の豪新車販売は100万台を突破したが、09年は88万台程度と予想されている。新車が売れないことにはOEMの車載機器も売れない以上、今年は非常に厳しい状態だ」と打ち明ける。

景気回復が予想される10年以降、再び上昇気流に乗せる考えだ。ただ、国内の新車市場は、長期的には人口の増加によって成長する余地はあるものの、短期的には年間100万台が1つの上限になると見ている。

そのため、成長の余地がより大きい現地生産車の輸出拡大に期待をかける。トヨタは富士通テンのオーディオなどを搭載した豪州製カムリを主に中東に輸出しており、需要の拡大が見込めるためだ。

メーカー向けOEM供給をさらに強化へ

一方、ディーラー・オプションの需要をいかに取り込んでいくかも課題となる。新車を購入した販売店で、カーナビやオーディオ、アクセサリーなどを追加購入するディーラー・オプションは、日本では一般的で販売店の重要な収入源にもなっている。だが、豪州では工場ですべて装着してから販売するのが主流。現状では、現地生産車にはほぼ100%、工場でアクセサリーが装着されているという。

また、カーナビについては、豪州ではまだまだ高額商品であるため、高級車や最上級グレードにしか装備されていない。それだけに、カーナビを標準装備しない低・中価格帯の新車を購入した消費者が、ディーラー・オプションでの装着を希望するニーズが高まっているそうだ。今後はこうした需要をうまく取り込んでいく必要があるとしている。

日本製カーナビは、高性能、多機能が特徴だ。日本市場向けのハイスペックな商品を豪州でアピールするには価格面のハンデがネックとなる。そのため、カーナビ以外の用途として、大画面を利用したバック時の後方モニターや同乗者向けDVDプレーヤーなどとしての利用を訴求できると見ている。

篠田社長は「以前は、安くて便利な地図が普及している豪州で、カーナビがはたして普及するのかという懸念があった。ところが、カーナビは1度使い始めると手放せなくなり、次に買い換えた時もカーナビを装着するようになる。便利さを知った消費者にも次第に浸透していく。まだまだ拡大の余地はある」と語る。

今後の戦略としては、カーナビの装着率拡大を働きかけながら、新分野の商品提案を強化することで、基幹事業である自動車メーカー向けOEMビジネスの地盤を強化していく。「トヨタをしっかり守りながら、他社へも攻めていく」と抱負を述べる篠田社長だが、いたずらに販路拡大に突き進むのではなく、供給面や消費者への対応などでさらにサービスの精度を向上させ、企業としての総合力を高めながら、顧客との信頼関係をより強固なものにしていく方針だ。

富士通テン(オーストラリア)

篠田浩志 取締役社長

1984年、同志社大学卒。同年、富士通テン入社、海外営業部配属。90~97年、オーストラリア駐在、ディレクターとして富士通テン・オーストラリア設立。98年、営業本部海外営業部北米課長。2003~06年、北京駐在。06年営業本部第二OEM営業部長。09年1月より現職

【篠田社長に聞く10の質問】
①座右の銘:克己復礼(孔子の『論語』の中の言葉。己に克ちて礼に復るを仁と為す。自分の私情を抑えて、礼儀にかなった行動をとるということ)
②今読んでいる本:宮本武蔵(吉川栄治)3回目
③オーストラリアの好きなところ:自然が豊かで、人々が大らかで明るく寛容なところ。特にメルボルンはさまざまなコミュニティーがあり、いろいろな分野の方々と深く広くお付き合いができること。
④外から見た日本の印象:1つにとらわれない宗教観に基づく平和思想を持って、世界に貢献できる国。
⑤好きな音楽:マイケル・ジャクソン、山下達郎、竹内まりや、80年代の昭和歌謡・ポップス
⑥尊敬する人:宮本武蔵、吉山満(剣道の先生)
⑦有名人3人を夕食に招待するなら:イチロー、清原和博、桑田真澄
⑧趣味:中学から続けている剣道(五段)、サーフィン、ゴルフ、ブログを書くこと
⑨将来の夢:60歳で剣道七段合格、70歳で剣道八段を受けること。女房と世界一周すること。
⑩カラオケの十八番:沢田研二「勝手にしやがれ」

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