第1回 空とぶカンガルー「カンタス航空」

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カンタス航空の最新鋭超大型ジェット機エアバスA380(Photo:-Qantas-Airways)
新連載  豪州企業名鑑

 

第1回 アジアの空を翔るカンガルー

 

カンタス航空
Qantas Airways

 外資が支配する「ブランチ・エコノミー」(支店経済)と皮肉られるオーストラリア。資源・エネルギー輸出が好調な一方で、その弊害で豪ドル高が進んで製造業などが取り残され、いわゆる「2スピード・エコノミー」(二極経済)化も進んでいます。しかし、資源ブームやアジアの急成長をエネルギーにして、力強さを発揮している地場の会社も少なくありません。今月から始まるこのコラムでは、そんな企業に焦点を当て、オーストラリア経済の本質を探っていきます。第1回目は、カンガルーのロゴ・マークで国際的に有名なカンタス航空です。(本紙編集部)
■会社概要
本社——————————————–シドニー
創業——————————————–1920年
最高経営責任者(CEO)——————–アラン・ジョイス氏
従業員数従業員数—————————3万2,695人(平均年齢43.2歳)
旅客数—————————————–4万4,456人
ロード・ファクター(有償座席利用率)—-80.1%
運航中の機体数——————————278機*
機体の初就航後の平均経過年数———-8.6-年
出典:Qantas-Data-Book-2011-(10/11年度のグループ全体の数字) *リースを含む

「空飛ぶカンガルー」の愛称で親しまれ、国際的にオーストラリアを象徴する企業ブランドとして知られるカンタス航空。国内最大手のフラッグシップ・キャリア(基幹航空会社)だが、オーストラリアからアジアへと事業戦略の重点を急速にシフトしている。経営環境が厳しさを増す中で、アジアの空に活路を見出せるか。

 


■沿革


QLD州南西部の田舎町ウィントンで創業した。初号機は第1次世界大戦で活躍した2人乗り単発複葉機「アブロ504」。「クイーンズランド・アンド・ノーザン・テリトリー・エアリアル・サービス」の頭文字を取って「QANTAS」と呼んだ。創業当時の社名で現存する航空会社としては、世界で2番目に長い歴史がある。

 1928年、遠隔地医療に携わる「フライング・ドクター」(空飛ぶ医師)の事業に参画した。35年、初の国際旅客便をブリスベン−シンガポール間に就航させた。第2次世界大戦を経て、47年、連邦政府が全株式を取得して国営化。近代的な機体の購入を進め、同年12月には「カンガルー・ルート」と呼ばれるロンドン線を開設した。当時の所要時間は片道4日間もかかった。

71年、「ジャンボ・ジェット」の愛称で知られる米ボーイング社の747型機を投入した。本格的なジェット機時代を迎え、世界が急速に狭くなっていく中で、国内と海外で次々と路線を伸ばし規模を拡大した。

 95 年、完全民営化され豪証券取引所(ASX)に上場した。2004年、機内サービスを有料化するなど運航コストを抑えた格安航空会社(LCC)の新ブランド「ジェットスター」を国内線に導入した。同年にシンガポール拠点の「ジェットスター・アジア」を設立した。06年にはジェットスターが豪州発の国際線に参入した。

 


■現況


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カンタス航空のアラン・ジョイスCEO(Photo:-Qantas-Airways)

世界的には欧米中の大手と比較すると事業規模は中堅クラスだが、存在感は小さくない。英航空業界誌「エアライン・ビジネス」によると、輸送力の指標となる「有償旅客キロ」(R PK=有償旅客数×輸送距離)はグループ全体で1,067億5,900万キロ(10/11年度)と、世界10位にランクしている。

世界的な航空会社のアライアンス(連合)「ワンワールド」に98 年の創立時から加盟している。ワンワールドは日本航空(JAL)や英国航空など世界の航空大手とその系列会社20社が参加している。このほか、26社とコードシェア便(共同運航便)提携を結んでいる。

事業部門は、カンタスの国際線と国内線、小型機で遠隔地を結ぶカンタスリンク、ジェットスターの国際線と国内線、シンガポール拠点のジェットスター・アジアがある。航空貨物のカンタス・フリート、フリークェント・フライヤー・プログラムなども運営している。2010/11年度のデータによると、売上割合は、カンタス70%、ジェットスター16%、フリークェント・フライヤー7%、カンタス・フリート7%となっている。

市場シェアは縮小傾向にある。10/11年度は、国内線がカンタス45%、ジェットスター20%とグループ全体で合計65%を占めたが、10年前の01/02年度(カンタス単独で74%)比で9ポイント低下した。豪州発着の国際線もカンタス19%、ジェットスター8%の合計27%と01/02年度(同34%)から7ポイント下落した。ライバルとの激しい競争にさらされている。

 

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成田空港に姿を見せたジェットスター・ジャパンのエアバスA320型機(Photo:-Jetstar-Airways)

■展望


 最大の課題は、赤字とシェア低下にあえぐ国際線事業の建て直しだ。昨年8月、国内で人員削減を進める一方で、JALなどと共同出資するLCC「ジェットスター・ジャパン」のほかにアジアに拠点を持つ新航空会社の設立を目指すなど、成長の軸足をアジアに移す方針を明確にした。削減規模は約1,000人と伝えられた。

再編計画は、大きな波紋を投げかけた。組合側は11年後半にかけて断続的にストを決行した。対抗措置として会社側は同年10月29〜31日、異例の全便運航停止に踏み切り、混乱はひとまず収束した。

一方、アジア強化を軸とした再編は着々と進行している。今年3月、中国東方航空との合弁で「ジェットスター香港」の設立を表明した。13年に運航を開始する。5月、国内整備拠点の整理・縮小で新たに500人を削減すると発表した。7月からは、競争力を高める狙いで国際線と国内線の事業を分割した。

ジェットスター・ジャパンは今年7月3日、LCCの立ち上げが相次ぐ日本の国内線に参入した。成田を拠点に関空、札幌、福岡、沖縄を結んでいる。今後、日本発の国際線にも就航し、数年以内に機体数を24機まで増やす。

だが、一連の争議は、収益に打撃を与えた。8月23日に発表した11/12年度決算で、1995年の民営化以来初めて、純損益が赤字(2億4,500万ドル)に転落した。国際線部門の赤字、リストラ費などのほか、ストによる1億9,400万ドルの減益要因が響いた。このため、35機の最新鋭中型機ボーイング787の注文をキャンセルした。

株価は、1.16ドル(8月24日のA SX 終値)と95年の公開価格1.9ドルを大幅に下回る。2007年には6ドル近くまで上昇したが、リーマン・ショックで急落し、その後低迷している。必ずしも単純に言い切れないが、株価が企業の将来の期待値を示す指標だとするならば、市場は事業再編の成否を必ずしも楽観していない。

乱気流をかわして、アジアの成長市場に無事に着地できるか。民営化以来最大の勝負どころを迎えている。

■ブランド別の概要(10・11年度)

ブランド 従業員数 運航機体数 旅客数 就航都市数 有償座席利用率
カンタス*1 27,405 207 27,907,000 76 81.0%
ジェットスター*2 3,714 71 16,549,000 56 77.8%

出典:Qantas-Data-Book-2011
*1-国際線と国内線、地方線のカンタスリンクの合計
*2-国際線と国内線、シンガポール拠点のジェットスター・アジアの合計

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