第2回 コールス・グループを買収「ウェスファーマーズ」

 

豪州企業名鑑

第2回
コールス飲み込み小売業にシフト
業績は好調、次の一手に課題も

 

ウェスファーマーズ
Wesfarmers

オーストラリアで生活する人にとっては馴染み深いスーパーマーケットの「コールズ」。その親会社「ウェスファーマーズ」(本社パース)は、小売から石炭、ガス、保険、化学、肥料まで幅広く手がける国内屈指のコングロマリット(複合企業)だ。2007年に小売2番手のコールズ・グループを買収し、事業規模を大幅に拡大している。

 

■会社概要
本社——————————————–パース
創業——————————————–1914年
取締役社長———————————–リチャード・ゴイダー氏
従業員数————————————–約20万人
売上高*—————————————-580億8,000万ドル(5.8%)
税・利払い前利益(EBIT)*——————35億4,900万ドル(9.8%)
最終利益*————————————-21億2,600万ドル(10.6%)
*数字は2011/12年度、カッコ内は前年度比伸び率

 


■沿革


ウェスファーマーズのルーツは、1914年創立のWA州の農業協同組合「ウェストラリアン・ファーマーズ・コーポラティブ」にさかのぼる。

当初は、羊毛や穀物などの農産物の販売・輸出、燃料の販売・流通を手がけた。50年代に液化石油ガス(LPG)の販売・流通に参入し、事業の多角化を進めた。84年には豪証券取引所(ASX)に上場し、大手肥料メーカーを買収した。89年には石炭生産にも乗り出し、2000年代にかけて東部州の鉱山権益を取得した。94年にハードウエア大手「バニングス」を買収し、小売業にも本格参入した。00年以降は保険事業も拡大している。

0 7年、豪州の企業買収額としては史上最大の約200億ドルを投じ、小売大手コールス・グループを買収した。スーパーの「コールス」のほか、ディスカウント・ストア「バイ・ロー(BI-LO)」、コンビニエンス・ストア「コールス・エクスプレス」、酒類量販店「リカーランド」、デパートの「ターゲット」、ディスカウント・ストア「Kマート」、事務用品小売「オフィスワークス」など、同グループの主力小売ブランドを一挙に傘下に収めている。

なお、豪州で農業共同組合が企業化した例としては、コメの流通・貿易大手サンライス(本社NSW州リートン)などがある。

一方、コールスの創立も1914年。創業者のジョージ・コールス氏がメルボルンに1号点をオープンした。60年に初のスーパーマーケット業態を開業し、70年代に全豪の主要都市に店舗網を拡大した。ライバルの最大手ウールワースとともに国内小売業界の大半のシェアを寡占した。しかし、06〜07年にかけて、株価低迷を背景に海外の投資ファンドなどから買収攻勢を受けた。結局、ウェスファーマーズの買収提案を受け入れて再建を託した。売却完了を受けて、コールス・グループは07年11月に上場廃止となっている。


■現況


コールス・グループの買収に伴って、小売4、そのほかの卸売・サービス4の合計8事業グループ(表1)に再編した。

買収の結果、事業全体に占める小売業の比重がきわめて高くなり、複合企業というよりは「資源や保険も手がける小売企業」に変身した。現在では小売4部門の売上が全体の9割弱、税・利払い前利益(EBIT)が同8割弱を占める。

目下の業績は好調に推移している。

今年8月に発表した11/12年度決算によると、グループ全体の売上高は約580億8,000万ドルと前年度比で5.8%増加した。最終利益も21億2,600万ドルと10.6%拡大した。中でもコールス部門は、売上が約341億1,700万ドル(前年度比6.4%増)、EBITは13億5,600万ドル(同16.3%増)と市場の予想を上回る伸びを示した(主な小売部門の概況は表2参照)。

豪スーパー業界は長年、首位のウールワースと2位コールスの寡占状態が続いてきた。 民間の調査会社によると、2社の合計シェアが全体の7割以上を占めているという。主な競合相手としては、フランチャイズ小売チェーン「IGA」やドイツ系格安スーパー「アルディ」などがある。アルディは2001年の進出以来、東部州でシェアを伸ばしているが、2強の勢力図に大きな変化はない。

スーパーの寡占をめぐっては、以前から「自由な価格競争を阻害している」との指摘がある。生産者からは「仕入れ価格が不当に低く抑えられている」との批判も根強い。この問題について、連邦上院の特別委員会やオーストラリア消費者競争委員会(ACCC)がたびたび調査してきたが、これまでに2社の不正を認定したことはない。

こうした中で、コールスは10 年、生鮮食料品を中心とした大幅な値下げキャンペーンを開始。ウールワースも応戦し、スーパーの安売り競争が激化している。直近の決算を見ると、戦いは今のところコールスが1歩リードしている。


■展望


買収劇は、ウェスファーマーズが自分より図体の大きいコールス・グループを飲み込んだという構図だ。

買収前の06/07年度の連結売上高は、コールス・グループ(約347億ドル)がウェスファーマーズ(約97億ドル)の約3.5倍の規模があった。従業員数もコールスの方が多かった。

買収後、5期連続で増収増益を達成し、売上高は買収前の06/07年度比で約6倍に、税引き後純利益は2.7倍に伸ばした。これを見る限り、「小が大を食う」買収は成功したように見える。

また、低価格戦略に加えて、既存店舗の改装、セルフ・サービスのレジ導入、顧客サービスの向上などさまざまな再建策も実行した。消費者の目線で見ると、こうした取り組みがウールワースとのサービス競争を促し、寡占で硬直化した小売業界を活性化させたことも評価できる。

一方、マイナスの側面もある。買収で生じた巨額の負債を背景に、リーマン・ショック後の08年と09年の2度にわたり、バランス・シートを強化するため増資に踏み切った。このため、自己資本利益率(ROE=株主の投資額に対する利益を表す指標)は、06/07年度の25.1%から買収後に10%以下まで落ち込み、11/12年度も8.4%にとどまっている。従来の株主は投資価値が目減りした形となり、「裏切られた」との声も聞かれる。

依然として約49億ドル(11/12年度)の純有利子負債も抱えている。アナリストからは「投資の回収は道半ば」との指摘も出ていて、買収の成否に対する評価は意見が分かれている。

空前の大型買収から丸5年。足元の業績は磐石だが、さらなる企業買収など次の一手を繰り出すまでにはまだ時間がかかりそうだ。

表1 主な事業分野(太字は旧コールス・グループの事業)

業種 事業グループ 内容
小売り コールス* スーパー、酒販店、コンビニ、パブ
ハードウェア・事務用品 「バニングス」、「オフィスワークス」
Kマート ディスカウント・ストア
ターゲット デパート
卸売・サービス 保険 法人、個人、自動車など
資源 NSW州・QLD州での石炭生産・輸出
化学品・ガス・肥料 塩ビ、液化石油ガス(LPG)、農業用化学肥料
建設・土木用品 建設労働者用の小物、保安用品など

出典:Wesfarmers-2012-Full-Year-Results
表2 主な小売ブランド(11/12年度)

ブランド 業態 店舗数 売上
コールス コールス、BI-LO スーパーマーケット 749 -341億1,700万ドル(6.4%)
リカーランド、1stチョイスなど 酒販店・パブ 884
コールス・エクスプレス コンビニ 627
バニングス ハードウェア、情報機器 300 -71億6,200万ドル-(5.6%)
オフィスワークス 事務用品 141 -14億8,200万ドル-(0.7%)
ターゲット デパート 301 -37億3,800万ドル-(▲1.2%)
Kマート Kマート ディスカウント・ストア 185 -40億5,500万ドル-(0.5%)
Kマート・タイヤ&オート・サービス タイヤ・自動車整備 260

出典:-Wesfarmers-2012-Full-Year-Results(カッコ内は前年度比の伸び率。▲はマイナス)

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