第3回 大手穀物商社「サンライス」

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NSW州南部のコメの収穫作業。豪州の稲作は日本と比較してスケールが格段に大きい(Photo:-Sunrice)
豪州企業名鑑

 

第3回
干ばつのどん底からV字回復
負債処理に課題、外資も触手伸ばす

 
サンライス

Sunrice

 オーストラリア産米のサプライ・チェーン(流通網)をほぼ独占するライスグローワーズ・リミテッド(商標名サンライス)は、コメ生産者が優先的に株式を保有する会社形態の農業協同組合である。コメを中心とした食品事業をグローバルに展開していて、その実態は大手穀物商社と呼ぶにふさわしい。
■会社概要
登記名—————————————–ライスグローワーズ・リミテッド
本社——————————————–NSW州リートン
設立——————————————–1950年
代表取締役———————————–ロブ・ゴードン氏
従業員数————————————–約2,100人
売上高*—————————————-10億0,037万ドル(23.6%)–
税引き前利益*——————————–5,464万ドル(212.2%)
税引き後利益*——————————–3,391万ドル(158.9%)
*Sunrice2012年4月期年次報告書(数字は2011/12年度、カッコ内は前年度比伸び率)

■沿革


オーストラリアに本格的なコメの商業生産の礎を築いたのは、20世紀初頭に移住した愛媛県出身で元帝国議会議員の高須賀穣氏。VIC州政府から州北部マレー川流域の200エーカーの土地の割り当てを受け、日本米を作付した。洪水や干ばつに見舞われるという失敗を繰り返した末、1914年に商業生産に成功した。

コメ生産はその後、水資源が豊富な同州北部とNSW州南部一帯に広まった。50年にコメ生産者が出資してサンライスの源流であるライスグローワーズ・コーポラティブ・ミルズ・リミテッド(コメ生産者精米協同組合)を設立し、精米所をNSW州南部リートンに建設した。70年には州南部デニリクィンで南半球最大の精米工場の操業を開始した。

70〜80年代、海外でコメの供給が過剰となり生産者の経営を圧迫した。80年代後半以降は世界的な需給バランスが改善して追い風を受けた。アジア移民の増加や食文化の多様化を背景に、コメの国内消費も大幅に伸びた。協同組合はイタリア料理のリゾット用や日本料理向けの「コシヒカリ」など付加価値の高い新商品を投入した。海外への展開や投資を加速させるなど事業の多様化も進めた。

 


■現況


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インド、タイなどの長粒米から、日本料理用の中粒米、寿司用の短粒米、イタリアのリゾット用に至るまであらゆるコメをそろえるサンライス。豪州だけではなくさまざまな海外の産地から調達して世界各地で販売している(Photo:-Sunrice)

2000年に商標名をサンライスとした。05年には生産者が議決権付きの株式を優先的に保有する会社形態に移行し、登記名も現在のライスグローワーズ・リミテッドに改めた。現在では豪州のほか米国、南太平洋諸国、中東、パプアニューギニアなどに拠点を持ち、コメのほか加工食品、ペット・フード、家畜飼料など29のブランドを世界60カ国で展開している。

コメの年間生産量はおおむね100万トンの水準に達し、01年には過去最高の174万トンを記録した。コメは飼料用ソルガムや綿花と並ぶ「夏穀物」の主力商品に成長した。オーストラリアのコメ生産地はNSW州南部のマラムビジー川とマレー川の流域にほぼ限定される。サンライスはこの地域で精米から卸売、輸出まで国産米の流通の大半を支配している。

ところが、オーストラリア南東部は06/07〜07/08年度、2年連続で史上最悪と言われた干ばつに見舞われ、かんがい用水の供給が寸断されたコメは壊滅的な打撃を受けた。07/08年度の生産量はわずか1万8,000トンと01年のおよそ100分の1の水準まで激減した。

干ばつの影響でサンライスはデニリクィンなど主要な精米工場の操業停止と人員削減を余儀なくされ、負債が拡大した。経営の健全性を示すギアリング比率(自己資本に占める有利子負債などの他人資本の割合)は、09/10年度に118%まで上昇した。

そこを「買い時」と見たスペインの食品大手エブロ・フーズは10年、サンライスに買収を提案した。サンライスの取締役会も同意したが、生産者の株主が11年5月に開かれた総会で買収提案を否決した。注目を集めた身売り話は結局、破談となっている。

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代表取締役(CEO)のロブ・ゴードン氏(Photo:-Sunrice)

 


■展望


潤沢な水を必要とするコメ生産にとっては、洪水よりも渇水の方がはるかに恐ろしい。ここ数年続いた夏期の大雨を背景に、コメ生産は急回復してきている。豪農業資源経済科学局(ABARES)によると、11/12年度のコメ生産量は前年度比33.9%増の96万8,000トン、12/13年度も11.8%増の108万2,000トン(予想値)と干ばつ前の平常時の水準をほぼ取り戻している。サンライス契約生産者の11/12年度の生産量は約80万トンと全体の8割以上を占め、このうち約40万トンを輸出した。

サンライスの直近の業績も好調だ。12年4月期の売上高は前年度比23.6%増の10億0,037万ドル、最終利益は158.9%増の3,391万ドルと大幅な増収増益を達成した。自己資本が増えたため、ギアリング比率は10/11年度の102%から11/12年度は66%まで低下した。ただ、比率が縮小したとはいえ、依然として約1億9,300ドルの純負債を抱えている。

マラムビジー川流域のNSW州ムーラミでコメ生産を営むピーター・ランドールさんは本紙に「2億ドル近い負債の処理が課題。エブロの買収提案が否決されたことで当面、買収は難しいかもしれない。一般株主から資金を調達するための(豪証券取引所=ASXへの)上場も視野に入る」と指摘した。

サンライスはNSW州ニューキャッスルのオーストラリア全国証券取引所(NSX)に上場しているが、株式を一般に公開しているわけではない。所有できるのはコメ生産者(議決権付きのAクラス)、コメ生産者またはかつて生産者だった人、コメ産業の被雇用者(議決権のないBクラス)に限られる。サンライスは今年6月の声明で、買収提案を暗示するものではないとした上で「株主利益の向上と将来のために資本構成の見直しを図る」と表明した。

また、10月18日付の農業専門紙「ウィークリー・タイムズ」は、資金力のある外資による買収かASXへの上場しか道はない、との見方を示した。その上で同紙は「上場すれば生産者の発言力は希薄化する。最終的には外資に買収される可能性が高い」と指摘した。

穀物業界では大手の国際資本を軸とした再編が進んでいる。既に、豪小麦輸出大手AWBは米穀物メジャーのカーギルに、豪大麦大手のABBグレインはカナダの穀物流通大手バイテラに、上場後にそれぞれ買収された。オーストラリアを代表する食品ブランドであるサンライスが外資の手に落ちるのも、時間の問題かもしれない。

 

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